「相談があるんだ。同棲を解消したい」

お試し同棲に突然の提案がなされた『部長と社畜の恋はもどかしい』(テレビ東京ほか)第9話。残業三昧の社畜OL "まるちゃん"こと丸山真由美(中村ゆりか)の29歳の誕生日をひとしきり2人でお祝いした後に、定時上がりの総務部長・堤司治(竹財輝之助)からのあまりに唐突な切り出しに面食らってしまった。

2人で一緒に選んだコーヒーカップで堤司が淹れてくれた珈琲を飲みながら「このカップで飲むと、家に帰って来たなぁ〜ってホッとするんです」と心の底からの安堵を漏らしていたまるちゃんからすれば、急展開すぎる。いや、さすがに話の流れってもんがあるだろ、堤司部長・・・。

しかし、確かに"お試し同棲"が始まってからというもの確実に堤司部長は自身のペースを見失ってしまっている。遂には、拝島(佐野岳)とまるちゃんが宿泊することになった箱根の取引先旅館に突撃。おやおや、最初は「付き合う」「待ち合わせ」という言葉さえ恥ずかしくて明言を避けていたのに、どうしたことか。拝島の出現によって嫉妬心を剥き出しにし、自分の気持ちに突き動かされるも、あと一歩のところで素直になり切れない。そこはやはり堤司部長だ。正に拝島からまるちゃんへの告白タイムにカットインして言い放つ。

「明日は資源ゴミの日だ。真由美がまとめるって約束しただろ。それだけ言いに来た。じゃあ帰る」

そして、本心ではないくせにまるちゃんには温泉に入ってゆっくり休むように言い残してその場から立ち去ろうとする不自然さ、挙動不審ぶり。さすがに不器用が過ぎる。

ここでも一歩大人で冷静な拝島が、まるちゃんを堤司部長と一緒に帰らせる訳だが、堤司自身も良くも悪くもここまでしてしまう自分に何より驚いているようだった。そして、スマートには立ち振る舞えない自分に苛立ってもいるようだ。

堤司部長はまるちゃんには「俺が嫌だったから迎えに来た」とようやく本音を打ち明けられたが、元々この"お試し同棲"は堤司の中で「社畜の真由美を応援する」という"良い企画"の一環として発足したはずだ。もしかするとこのままでは他でもない自分が、仕事を頑張りたいまるちゃんの邪魔をしてしまいかねないと危惧したのかもしれない。これまでは毎日定時に帰り、料理を作って読書を楽しむという完璧に出来上がった生活リズム、ルーティンがあった堤司部長だが、不測の事態続きで自身のペースが乱され、お疲れモードにも見える。それとも、営業部時代のかつての部下・根津(上川周作)との7年ぶりの再会で、彼とまるちゃんの姿を重ね合わせて思うところがあったのだろうか。人事部長の諌山(丸山智己)に人事制度について提案していたのも気になるところだ。

3年前のバレンタインで、まるちゃんからの本命チョコをはぐらかした拝島の本心は、"堂波(ドーハ)の悲劇"を気にしてのことで、ずっと彼女のことが好きだったことも明かされた。「仕事でも恋愛でも一度断られてからが本当の勝負だと思ってるんで」とは拝島らしい一言だが、同棲解消となれば彼にも今よりは少しチャンスが舞い込み、風向きが変わる可能性もあるのだろうか。そもそも本当に堤司部長とまるちゃんは同棲を解消してしまうのか。互いに相手の気持ちを先読みしてはすれ違ってばかりだった"あの頃"に彼らが逆戻りしてしまわないことを祈るばかりだ。

(文:佳香(かこ)/イラスト:月野くみ)

【第10話(3月9日[水]放送)あらすじ】

堤司(竹財輝之助)から突然「同棲を解消したい」と告げられ、ショックを受ける真由美(中村ゆりか)。そんな中、真由美にマネージャーとして昇進の話が舞い込む。ますます皆に頼られて、忙しくなることを嬉しく思う真由美だったが、今までの仕事は他人に回され、やることがない日々に落ち込んでいた・・・。
しかし、拝島(佐野岳)の一言で、あるプロジェクトを思いつく!そして、堤司が定時上がりになった理由が明らかに・・・!?

◆番組情報
ドラマParavi『部長と社畜の恋はもどかしい』
毎週水曜深夜0:30からテレビ東京ほかで放送。
動画配信サービス「Paravi」で前週水曜日の夜9時より毎話独占先行配信中