いよいよ核心に近づきつつある日曜劇場『DCU』。第6話は、新たなキャラクターの登場に、さらなる謎が深まった回だった。
根岸那由は敵か?味方か?
この第6話で最も注目すべきは、新キャラクターの根岸那由(明日海りお)。1話きりのゲストキャラクターかと思いきや次回も登場するだけでなく、成合淳(吉川晃司)ともつながっているようなそぶりを見せた。はたして彼女は何者なのだろうか。
職業は、水族館プロデューサー。溺死体として発見された身元不明の女性について捜査を進める中で、新名正義(阿部寛)らが出会った人物だ。亡くなったのは、水槽デザイナーの高田和美(原田佳奈)。婚約者である木見一郎(加藤雅也)にトラブルの末、殺害された。
当初は木見と那由が深い仲にあり、邪魔になったために和美が殺されたかのように見せかけていたが、それはフェイク。木見がダイヤの密輸入に加担しており、それを咎められたがために、勢い余って和美を水槽に突き落とした、というのが事件のあらましだった。
だが、はたして本当に那由がこの事件に何の関わりもなかったのか疑問は残る。新名たちがやってきたとき、水流を止めるのをあんなに拒んだのも不可解だし、ダイヤのピアスの出所も不明だ。
木見と意味ありげに手をつなぐなど、特別な関係であることを匂わせつつ、木見が逮捕されたとき、那由は冷たい目でそれを見ていた。彼女は、本当に事件と無関係なのか。それとも何か知っていたのか。そもそも木見の味方だったのか。
何より電話口で誰かと話していた「川の流れは必ず海に出る」という言葉。それは、成合の口癖でもあった。那由は成合と通じていたのだ。
西野斗真(高橋光臣)の言う通り、那由がダイヤの密売に対して裏で手を引いていたとすると、国際テロ組織・ブラックバタフライにも何かしら関わっている可能性が高い。警察の捜査が入ることに抵抗を示していたのも、それなら納得だが、基本的に『DCU』は引っ掛けと裏切りの多いドラマ。そんなにわかりやすい話でもないだろう。
なので、ここは思い切って逆説をぶちあげたい。那由は、ブラックバタフライを追っている捜査側の人間なのではないだろうか。木見がダイヤ密輸に関わっていると知り、そのルートを探るために木見に近づいた。
つまり、成合自身もブラックバタフライの一員ではなく、秘密裏に組織の内情を追っているというのが真相だ。那由と電話をしていたのも、あと少しでダイヤ密輸の元締めに接触できるという報告の電話だった。そう考えると「焦らないわ」という言葉の意味も頷ける。
那由を演じた明日海りおは、言わずと知れた元宝塚花組トップスター。退団からまだ2年余りのため、まだ映像の出演作品は限られているが、それゆえに神秘的な存在感があった。キャリアウーマンらしい品の良さと凛々しさを備えつつ、その目元はクールでミステリアス。視聴者の深読みを誘う謎めいた色気に大いに魅了された。
次回は、母としての顔も見せるようで、那由というキャラクターの奥行きも一層深まりそう。はたして那由は信じるべき人なのか否か。真相を注視したい。
裏切り者は新名でも成合でもない・・・?
一方、成合にも大きな動きがあった。瀬能陽生(横浜流星)のマンションに投函された新聞の切り抜き記事。そこに掲載された新名の顔写真に走り書きされた「SPY」の文字。その横に添えられた絵は、ネズミだろうか。さらに別日には「成合淳は生きている」というメッセージまで投函された。手紙の指示に従い、待ち合わせの場所に出向くと、そこにいたのは成合本人。なぜ成合はこんな手の込んだ方法で瀬能に接触したのか。
どうやら成合自身は、新名をスパイだと睨んでいるらしい。だが、ここに来てやっぱり新名が裏切り者であったという展開は考えにくい。かと言って、成合が瀬能に話したことが、すべて瀬能の心を惑わすための奸計だとも思えない。
となると、どちらもスパイではないというのが事の真相ではないだろうか。新名は成合を、成合は新名をブラックバタフライの内通者だと思い込み、この15年、真実を追い続けていた。けれど、どちらも決して悪ではなく、海上保安庁か警察組織にもうひとり別の黒幕がいる。そう考えると、筋は通ってくるように思える。
ただ、いかんせん新名の持っている鍵がなんの鍵なのかまだまったく情報が出ていないし、瀬能の父・陽一(西尾浩行)がどんな機密情報をリークし、誰に殺害されたのかも謎のまま。このあたりがわかってくると15年前の事件の全貌が見えてくるのだけど、それには失われた瀬能の記憶が甦るのを待つしかなそうだ。誰か瀬能と脳トレしてあげてください。
そんな6話だが、おそらく視聴者の間でいちばん話題を呼んだのは、あのダイヤ捜索シーンだと思う。途中まで真剣に捜査モノをやっていたのに、いきなりコントみたいになって、めちゃくちゃ笑ってしまった。渋い顔して狼狽している阿部ちゃんが最高に面白かったので、毎回こんなシーンがあっても、それはそれで大歓迎です!
(文:横川良明/イラスト:たけだあや)
【第7話(3月6日[日]放送)あらすじ】
心臓病の娘のために那由(明日海りお)がプロデュースした、リモートダイビングVRのお披露目イベントが病院で開かれていた。東都重工と共同開発した技術に大興奮の子どもたち。元カノ・玉井千英(鷲見玲奈)の入院中の息子を見舞った大友(有輝)もこのイベントに参加し、穏やかな時間を過ごしていた。
だが事態は一変、海中のリモートカメラが何かに乗っ取られてしまう。同時刻、DCU本部には沖合で一艘の水上バイクが爆発したとの報告が入った。船着場の映像には水上バイクに乗り込む成合(吉川晃司)の後ろ姿が映っており、新名(阿部寛)はなんとか動揺を隠す。
爆発物の破片を回収した結果、那由のリモートダイビングVRで使用されているカメラとの関連が発覚。水族館で起こった殺人事件がキッカケで、那由と成合がつながっていることを掴んでいた新名は、再び那由に接触を図る。
リモートダイビングVRの開発を指揮し、瀬能(横浜流星)の父を知る笠原英伍(岡田浩暉)にも協力を仰ぎ捜査に乗り出すDCUメンバーたち。だが、事件は病気の子どもたちを巻き込んだ想像もつかないものへと発展してしまう。
◆番組情報
日曜劇場『DCU』 毎週日曜日21:00からTBS系で放送中。 地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。
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