「何かあるんじゃない? 他にも」と第1話から無気力な花枝(清原果耶)に投げかけていた直美さん(稲森いずみ)、突拍子もない芦田(間宮祥太朗)からの"取り組み"の申し出を受け入れた花枝に「何かあるのは分かるから」と口にしていた凛(藤原さくら)。そして前話で「何か一人で抱えてることあんじゃねぇのか? 花枝。いつでも聞くぞ」とバックハグをした慎吾(菊池風磨・Sexy Zone)。

彼らが感じていた"何か"の正体が遂に花枝の口から語られた『ファイトソング』(TBS系)第7話。施設に入って以来一度たりと泣かなかった花枝が涙を流しながら。

「良いことだったの。耳のことがあってから私に起きた良いこと」「奇跡ってやつかな。私に一度だけ来た」と、花枝は芦田との取り組みについて冒頭に話したが、それをラストに芦田が語るラジオ番組での発言が見事回収する。

「一発屋でもすごいことなんだなって今は思ってます。一発屋になれて良かったとも思ってます。今、新曲作ってて自信あります。で、とりあえず二発屋になろうと思います」

花枝と芦田はそれぞれの長い出口の見えないトンネル、暗闇の中で出会えた唯一の良いこと、唯一の奇跡が互いと出会えたことであり、お互いの存在なのだ。だからこそ、花枝に"何か"あることに気がついている芦田には、耳のことや手術のことを隠し通すという花枝の決心が切なく胸に迫る。会っていなくても、お互いにLINEの文面一つ、電話での何気ないやり取り一つとっても「何となく元気のないこと」がわかってしまう程に距離が近くなっている2人なのに。

花枝の芦田との"思い出の恋"を全力で応援することを決めた慎吾と凛は、芦田を交え鍋パーティで盛り上がる。慎吾と花枝の何でも言い合える家族のような関係性を羨ましがり素直に言葉にする芦田。慎吾との腕相撲に負け、頭を抱えて本気で落ち込む芦田。そんな彼の姿を意外そうに、愛おしそうに、輪郭をなぞるように見つめながら「へぇ〜」とニヤける花枝。

芦田の中にある意外な一面や"取り組み"には留まらない溢れんばかりの確かな愛情を発見したと同時に、それと呼応するように花枝自身の胸にじんわり広がるあったかい想いや初めての新鮮な感覚を堪能しているかのようだった。"心が動いた"瞬間を実感しながら花枝はその後「キスしていいですか? します」と言って真っ直ぐ芦田に向かって行く。2人のキスはあまりに美しく混ざり気がなかった。

笑い合いながら帰り道に"今日あった出来事"を2人して「楽しかった」と噛み締めるように言い合う彼らの姿はどこからどう見ても紛れもない恋人同士だ。送ってくれた花枝に「一人で帰すのは違うと思う」と言って、結局また来た道を一緒に引き返し送り返す芦田を思うと、この2人の関係に本人たちの気持ち以外の部分で"終わり"が来るなんて...何だか直視できなくなってしまう。

しかし、"その時"は刻一刻と近づいている。ラジオ番組での芦田の『スタートライン』歌唱時に耳鳴りがして倒れてしまう花枝。それを受け止めるのは、もちろん少し離れたところで見守っていた慎吾だ。彼女にとって「たった一曲、世界にこの曲さえあれば他は要らない」という一曲がこんなに近くで生歌で届けられているのに受け取れない花枝。それはまるで、遊園地の1人ジェットコースターを通して「隣にいてほしいのは誰でもいい訳じゃないんだ。(中略)花枝じゃなきゃ意味はないし、世界で一番素敵な女の子は花枝なんだなって思った」と再確認した存在をもう間もなく容赦なく失おうとしている芦田の姿にも重なる。

今話も、大切な者を見つめる一方通行な視線が交錯し、花枝と芦田が奏でる主旋律に鮮やかな伴奏が添えられた。花枝は芦田が良い曲を書けて再生したりしたらそれは「きつい現実に勝ったことになる気がした」とこぼしていたが、花枝が抱える秘密の全容は明かされずともきっと芦田にもその断片は伝わっているだろう。彼らの沢山の悲喜こもごもを乗せて、芦田はそれをどんな新曲に昇華させてくれるのだろうか。その曲が、手術を終えた花枝に届き、『スタートライン』同様に彼女に寄り添い、自身の素直な気持ちを認め、正直に本音に向き合い、再起できるきっかけになってくれることを願ってやまない。

(文:佳香(かこ)/イラスト:まつもとりえこ)

【第8話(3月1日[火]放送)あらすじ】

芦田(間宮祥太朗)が出演するラジオの公開収録中に、倒れてしまった花枝(清原果耶)。
それを機に花枝は手術の日、つまり芦田とのお別れの日が迫っていることを実感してしまう。

一方、日に日に花枝への思いが募る芦田は、なぜ花枝は取り組みの「期限」にこだわるのか、その理由が気になっていた。しかし、芦田がいくら尋ねても、花枝はその理由をはぐらかすばかり・・・芦田の思いとは裏腹に、花枝は笑顔で「取り組みの最終日にお別れ会をしよう」と芦田に提案するのだった。

そして、そんな花枝を見守る慎吾(菊池風磨)は、花枝が本気で芦田を思っていることを誰よりもわかっていた。思い合う二人なのに、花枝は芦田に病のことを伝えないままで良いのかと思い悩む慎吾。そしていてもたってもいられず、芦田の家に向かってしまい・・・!?

それぞれの思いが交錯する中、ついにお別れの日がやってくる──

◆番組情報

『ファイトソング』
毎週火曜日22:00からTBS系で放送中。
地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。