あの芦田(間宮祥太朗)が駆け出した。ただただ、花枝(清原果耶)と「会いたくて、とにかく会いたくて」「話したくて」。この衝動こそ、恋が為せる業なのかもしれない。理由もなく、説明もつかず、自分の頭で考えるより先にただ会いたくて、話したいことが沢山あって・・・花枝も同じことを口にしていたが、もう完全に2人は恋している。

思えば、花枝と出会ってから、芦田はよく走り出すようになった。花枝が空手をする姿を見て、自身の中で溢れ出る感情を一つもとりこぼしてしまわぬようにと自宅にダッシュした時も。新曲コンペに落選し、花枝と会うのもこれが最後になるかもしれないという屋上ライブの後、立ち去る彼女をしばらくしてから追いかける。その時には間に合わなかった芦田が、事務所からの契約解除までの執行猶予が延長されたとわかるなり、もう考えるより早く走り出していた『ファイトソング』(TBS系)第5話。

芦田が所属事務所の社長に直談判するなんてこともこれまでなかったのではないだろうか。花枝との取り組みのおかげで心が動き始め、確実に彼の中で変化が生まれている。何より自分から湧き出るものや直感を彼自身が信じられ、期待でき、肯定できている。それがなかった彼の10年間はどんなに長く暗い出口の見えないトンネルだったのだろう。

「作った曲ダメだったけど俺好きなんだ、手応えあって」

「・・・おかげなんだ。出会って短かったかもしれないけどいろんな気持ち知ることができて、いろいろ何か感じて、心が動いたんだと思う」

幼馴染の慎吾(菊池風磨・Sexy Zone)がキャンプ場で正に一世一代の告白をしようと思っていたところに、芦田がカットインして続ける。

「もう一度付き合って下さい」

花枝がそれは"取り組み"としてなのかどうか確認すると、芦田は「わかんない、わかんないけど(中略)。恋してるのかもしれない」と答えた。その後、「会いたくて、とにかく会いたくて」と吐露した芦田の感情は"恋"でしかないが、それでも慎吾は許せなかったのだろう。だって自分はずっとずっと遥か昔から花枝のことが確かに揺るぎなく好きなのだから。芦田の第一声の「わかんない」が、人の事情をすぐに汲んでしまいとにかく心優しい慎吾の心にも火を着けたように見えた。

自分は花枝から片時も離れず側にいて見守り続けてきたのに、芦田は"曲作り"のためと言って近づき、その"曲作り"がダメだったら手を離してしまうなんて慎吾からすればたまったものじゃないのだろう。そして何より許せず悔しいのがそんな芦田に振り回され心かき乱される花枝を見守ることしかできない自分と、その穴は結局自分ではなく芦田にしか埋められないという事実なのだろう。

「だったら俺が・・・」と何度も何度も言いかけては止め、言いかけては止めた慎吾は「花枝を笑顔にしてみせる、幸せにしてみせる」と言いたかったのではないだろうか。「だったら俺じゃダメかな?」という、ともすれば今の花枝の心の隙をついて便乗するような伝え方を決してしないところが慎吾らしいし、彼らに横たわる強すぎる信頼関係、絆を表しているように思える。

直美(稲森いずみ)が予想していた花枝の"恋の取り組み"のラストによると、芦田の武道館ライブの客席にはいない花枝は慎吾と一緒にいるが、結局芦田の元に走り出す。"屋上ライブ"に湧く2人をエントランス前でただただ待つ慎吾の元に確かに花枝は帰ってきた。そして、キャンプ場に駆けつけた芦田から花枝への告白を慎吾は「お断りします」とはねのけたが、直美の言う"実は大切な人はずっと側にいたっていうパターン"はあり得るのだろうか。

「なくはないかな、少ないけど」という直美の補足を何とも言えぬ顔で聞いていたのは慎吾だけではない、彼をずっと想い続ける凛(藤原さくら)もだ。芦田の家で"恋とは?"の先に「力をくれるもの」と書き足されていたのを見つけたマネージャー・弓子(栗山千明)の表情ともどこか重なる。芦田の執行猶予が延長されたのも、実は彼本人が社長に訴えるより先に弓子が直談判していた内容がそっくりそのまま同じで、そのシンクロぶりに社長が驚き、認めてくれたからということを芦田は知る由もない。

次週予告では、芦田の乱入によって告白を中断された慎吾のバックハグが見られた。花枝は芦田からの"恋の取り組み"継続のオファーを受け入れるのだろうか。そして花枝が自分の"秘密"を共有する一人目になるのは誰なのだろうか。

(文:佳香(かこ)/イラスト:まつもとりえこ)

【第6話(2月15日[火]放送)あらすじ】

芦田(間宮祥太朗)の突然の乱入で、慎吾(菊池風磨)の告白が中断された前回。
波乱に満ちた運命のキャンプはどうなってしまうのか――!?

キャンプ告白事件から数日後、秘めてきた思いに気付いてしまった花枝(清原果耶)、芦田、そして慎吾は、それぞれの本当の気持ちに向き合い動き出していた。
花枝への気持ちが「恋」だと自覚し、音楽の制作にも力が入る芦田。
今までもこれからもずっと花枝を守り続けると改めて心に誓う慎吾。
一方花枝は、近づいてくる手術という現実に向き合おうとする――。

3人の想いが交錯する中、訳あって花枝と芦田は遊園地に来ていた。芦田は花枝とのデートを満喫するが、花枝が「思い出づくり」の理由を決して明かしてくれないことが気になり始めていた。
しかしその裏で、慎吾はなんとキャバクラ通いをしていることが発覚!?そんな慎吾に凛(藤原さくら)は呆れ返るが、花枝はどこか慎吾の様子がおかしいことがひっかかっていた。
そんな最中、慎吾が突然倒れてしまい・・・?

芦田も慎吾も、花枝への想いが大爆発する第6話!受け止める花枝はどうなってしまうのか!?

◆番組情報

『ファイトソング』
毎週火曜日22:00からTBS系で放送中。
地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。