個人的な趣味や飯テロなど、ニッチな世界を掘り下げることにおいて他の追随を許さないテレビ東京深夜ドラマ。言わば痒いところに手が届くような、視聴者ファーストのテレ東ドラマが、また面白いプロジェクトを手掛けている。「水ドラ25」の『僕を主人公にした漫画を描いてください!それをさらにドラマ化もしちゃいます!!』、通称「僕ドラ」だ。

これは、1年前から進んでいたというテレビ東京と電子コミック配信サービス『めちゃコミック』による合同プロジェクトで、僕ドラ委員会・委員長&漫画の主人公&ドラマの主演を務めるのは、町田啓太。1年前というと、赤楚衛二主演×町田出演の大ヒットドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(通称『チェリまほ』/2020年10月期)放送終了時直後くらいからスタートしたわけで、その点でも胸アツになるファンも多いかもしれない。

1月5日からは4回にわたって、ドラマ化する漫画の選考過程やドラマの制作過程のドキュメンタリーが放送され、それらを経てドラマがスタートするという構成。作品の裏側が観られるドキュメンタリーという意味では、『プロフェッショナル仕事の流儀』(NHK)や、エンタメの世界に生きる人物を長期密着取材する『RIDE ON TIME』(フジテレビ)のようでもあり、はたまたドラマや映画のDVD特典のようでもあり。町田ファン、チェリまほファンのみならず、プロジェクトとしての斬新さはドラマ好き以外も惹きつけるユニークなものとなっている。

実際のドキュメンタリー部分では、プロアマ不問で、「希望」をテーマに寄せられた応募総数80組の中から、書類審査でまず6組が選ばれた。そこから町田との面談・作品のプレゼンを経て3組に絞られ、最終的に1作品が決まるという流れだ。しかし、書類選考を通過した6組の顔触れは・・・。

「インスタでバズり、デビューした主婦漫画家」「大学在学中に漫画賞を取り、アシスタント経験ナシで連載スタートとなった経験豊富な少年漫画家」「全員台湾出身の女性3人漫画家ユニット」「引退から2年、アナログで一人で描く作風にこだわりを持ち、再起をかける孤高の漫画家」「同人誌出身、現Webデザイナーで、少年漫画愛溢れる女性漫画家」「高校の世界史の先生の原作担当×イラストなどで生計を立てる作画担当で、単行本も4巻まで出版された経験を持つ、40代男性の崖っぷち漫画家コンビ」。

漫画の設定やキャラクターなどはもちろん、この6組の顔触れだけですでに十分にドラマチックで、それぞれの「漫画道」を観てみたくなる。しかし、これはまだドキュメンタリーの入り口に過ぎない。

ここからインスタバズリ主婦漫画家と、再起をかける孤高の漫画家、40代男性漫画家コンビの3組が残り、2か月後の最終選考で、主婦漫画家・大盛のぞみの『ダメな男じゃダメですか?』が大賞に選ばれた。これは、東京で偽りの人生を送る見栄っ張り大学生と、田舎暮らしのパワフルなおばあちゃんの"入れ替わり"モノで、最大の決め手は「僕(町田)を主人公に最大限使ってもらっている感覚がある」ことという。

そして、漫画の工程などから一転、次はドラマの「脚本打ち・キャスティング」がスタート。おばあちゃん役は宮崎美子となり、その後、「オープニング・エンディングの音楽打ち」「ロケハン」「衣装合わせ」などの工程が描かれる。こうした仕事現場の話は、『13歳のハローワーク』的に漫画家やテレビ業界、映像制作などに興味がある子供が観ても面白そうな内容だ。

さらに全体を通して際立っていたのは、町田啓太の真面目さや仕事に対するひたむきさ。全ての工程に主体性を持って積極的に参加し、作品と真剣に向き合い、共感し、自分なりのアイディアを出しつつも、独りよがりの主張はせず、共演者やスタッフと丁寧にコミュニケーションをとる。爽やかなビジュアルや芝居の力だけでなく、「こういう性質が好かれて、また仕事に呼ばれるんだろうな」と勉強させてもらった気分になる。

そんな全ての作業を経て完成したドラマが放送されるのは、2月2日(水)から。ドキュメンタリーで取り上げられていた役作りのポイントなどもこまめにチェックしてみたい。

(文・田幸和歌子)

◆番組情報
『ダメな男じゃダメですか?』
2022年2月2日(水)スタート 毎週水曜深夜1:00からテレビ東京ほかで放送
※初回2月2日、9日、16日は、深夜1:10スタート。
動画配信サービス「Paravi」でも 配信される。