松本潤主演『99.9-刑事専門弁護士-』法廷ものの新境地を切り開いた痛快作

エンタテインメント

2021.12.28

TBS日曜劇場で2016年にSEASON I、2018年にSEASON IIが放送され人気を博した『99.9-刑事専門弁護士-』が、スペシャルドラマとして、さらに映画版として帰ってくる。

そもそもこのタイトルにある"99.9"とは日本における刑事事件での有罪率のことであり、これは一旦起訴されたらほぼ有罪が確定してしまうということを意味する。本作は残りの0.1%に隠された事実に挑み、逆転を勝ち取っていく個性豊かな刑事専門弁護士たちの奮闘を描いた痛快リーガル・エンターテインメントだ。

まず、主人公の松本潤演じる弁護士・深山大翔の型破りなキャラクターが病みつきになる。日常的にオヤジギャグをよく口にし、終始ニンマリとした不敵な笑みを浮かべている。本作は至るところに様々な小ネタが仕込まれており、俳優陣のコミカルな演技が"刑事事件"というシリアスな題材をより身近に感じさせるのに一役買っている。

とにかく仕事の上では「依頼人の利益よりも事実の追求」が深山のモットーであり、パラリーガルの明石達也（片桐仁）をこき使い、ヒロイン・立花彩乃（榮倉奈々、SEASON I）や尾崎舞子（木村文乃、SEASON II）を巻き込んでド派手で型破りな検証を徹底的にやり込み、事実に近づいていく。その"事実"への執着は凄まじく、「ねじ曲げられた正義よりもたった一つの事実にしか興味がない」と言い切る深山のある意味潔すぎる私情を全く挟まぬ徹底した考えは、彼の父親が冤罪をかけられ控訴中に獄中死を遂げた過去と彼自身の"加害者の息子"として生きてきた無念の日々に根差しており、揺るがぬ信念になっているのだ。

SNSなどで"正義中毒"が蔓延る現代社会を生きる我々にとって、深山の"事実"との向き合い方、罪との距離の取り方は示唆に富んでいる。深山は決して誰かを断罪したり、暑苦しい正義を掲げたり振りかざしたりしないのだ。

この飄々としながら一癖も二癖もある強烈な人物を、突拍子のなさや奇をてらった演技ではなく、絶妙なバランス感でリアリティーを持って見せてくれる松本のお芝居はお見事で、これまで彼が演じてきた役柄と明らかに一線を画している。

さらに、深山の上司でチームを組むことになる敏腕弁護士の佐田篤弘（香川照之）との凸凹コンビぶりも見ものだ。「依頼人の利益」を第一信条に掲げ、自身の目的を達成するためには手段を選ばない佐田は、深山とポリシーも何もかも正反対だ。しかし互いに嫌味を織り交ぜながら軽妙な掛け合いを見せ、最終的にはなんだかんだ良いコンビネーションを発揮して、相互補完し合う"鬼に金棒"な存在になっていく。

ただ、佐田も検察官時代に自身が再調査まで持ち込み切れず、冤罪をかけられた状態で獄中死してしまう容疑者を救えなかった過去を持ち、遺族の前で謝罪するシーンが描かれる。対極にいるかに見えて、実は深山と佐田には根底に共通する想いや無念が横たわっていることも徐々に明かされていく。

本作はキャラの渋滞を起こしかねない程、脇を固めるキャストも、毎話変わるゲストもキャラが濃く際立っているが、全くストーリーの邪魔をせず、過剰すぎない演出度合いも見どころの一つだろう。

連続ドラマで初めて刑事専門弁護士を扱い、法廷ものの新境地を切り開いたとも言える本作の続編、初の劇場版が今から楽しみで仕方ない。

12月29日（水）放送のスペシャルドラマ「完全新作SP新たな出会い篇」では杉咲花演じる司法修習を終えたばかりの新米弁護士・河野穂乃果を新ヒロインとして迎え、その新ヒロインとの出会い、そして今度の敵は弁護士となる、３年ぶりの新作となる。スペシャルドラマを見てから劇場版を見ると、より楽しめる作りになっているといい、さらなるパワーアップが期待できそうだ。

SEASONⅠでは検察官、SEASONⅡでは裁判官と対峙してきた深山らの前に立ちはだかるのは、西島秀俊演じる弁護士・南雲恭平で、新たな戦いが見られるようだ。劇場版では道枝駿佑（なにわ男子／関西ジャニーズJr.）、蒔田彩珠など新キャストが加わりながら、過去シーズンのオールスターも大集結となるようで、今から期待に胸を踊らせてしまう。

（文：佳香（かこ））