「気付いてる? 俺はもうずっとちーちゃんに本当のことしか言ってないんだよ。それなのに今度はちーちゃんが嘘ばかりついてる。じゃあ、俺にあの映画に出て欲しいって言ったのも嘘だったの?」
「どこまでが嘘でどこからが本当か分からなくて振り回される気持ち、少し分かったような気がするよ」
ブレイク寸前の注目俳優・藤代瀬那(櫻井海音)とマネージャー・冴島千歳(大原櫻子)の立場がすっかり逆転した『つまり好きって言いたいんだけど、』(テレビ東京ほか)第10話。
確かに瀬那の指摘通り、ここのところ彼自身は全く嘘をついておらず、代わりに千歳が本心を隠し不自然にごまかすことばかり増えてきている。
そんなこともあって何となく釈然とせず不穏な空気を抱えたまま迎えた世界的巨匠フォニーニ監督の映画の顔合わせ。そこに現れた憑依型女優・白川雪乃(森田望智) は全くの別人で、その場に居合わせた者はまた面食らわされる。これまでになく地味な装いに挙動不審で、瀬那と目も合わせられない。しかしどうやらこれが何の役も入っていない雪乃本人のようだ。
瀬那と雪乃のW主演映画は、2人の男女が惹かれ合う台本のない愛のドキュメンタリーでクライマックスにはベッドシーンが待ち受ける。2人にはそれぞれ自分の役柄の設定のみ明かされるため、その設定だけを守った上であとは自分たちで物語を進める他ない。瀬那演じる大学生と雪乃演じる銀行員の2人が廃墟に閉じ込められた状況から脱出を図るという極限状態が描かれるようだ。
そんな中、初めて雪乃の笑顔を見た瀬那は「何日も笑ってくれない彼女の笑顔を見た時、心からドキっとしたんです」と目を輝かせながら感想をこぼす。
"役として生きる"という新たな感覚を掴みかけており、俳優として新境地を開いていく瀬那の姿を近くで目の当たりにする千歳には、喜びと不安が入り混じった複雑な感情が渦巻いているのだろう。
クライマックスシーンを迎える前の楽屋での瀬那には、これまでの現場とは違い千歳からの声かけなど全く届いていないかのようだ。千歳にはさぞかし瀬那の背中が遠く感じられただろう。そして肩透かしを食らったかのようなショックも大きかったのではないだろうか。自分が現場でできる唯一の務め、サポートも一切不要と言われているような気持ちになっただろうし、「俺はちーちゃんの笑顔を見るために頑張ってるんだよ」と言っていた瀬那の言葉が既に懐かしく頼りなげに思い出されたことだろう。
千歳はラストのラブシーンをモニター越しに見ることも出来なかったが、そんな自分がさぞかしマネージャーとして不甲斐なかったに違いない。
しかし、瀬那側の事情は違っていたようだ。「撮影中、俺がずっと思い浮かべてたのはちーちゃんだったよ」と明かし、どうやら雪乃の顔が彼には千歳に見えていたらしい。改めて「俺が好きなのはちーちゃんだ」と伝えた。今度こそ、千歳は自身の本音をはっきりと嫌と言う程に自覚し、瀬那のことを好きだという自分の気持ちをこれ以上はごまかし切れないだろう。
次週、瀬那に入った着信により2人は地元である甲府に駆けつけるようだ。瀬那の切羽詰まった様子と予告編を観る限りは、彼の大切な家族にタイムリミットが近づいているのだろうか。どうやら、そこに瀬那が元々自分の本心を隠し嘘ばかりつくようになった真相も隠されていそうだ。瀬那の初恋の相手は"自分の言ったことを何でも信じてくれるちーちゃん"だったに違いないが、2人のルーツを辿る中で、さらに彼らの関係性に変化はあるのか。
また、千歳が朝比奈(宮尾俊太郎)のマネジメントを名乗り出ていたが、こちらもどんな展開を迎えるのか併せて楽しみだ。
(文:佳香(かこ)/イラスト:月野くみ)
【第11話(12月15日[水]放送)あらすじ】
瀬那(櫻井海音)の父・宗親(大鷹明良)が危篤状態だと聞き、千歳(大原櫻子)と瀬那は二人の故郷へと向かった。一命を取りとめたものの、瀬那に対し冷たく当たる宗親だったが・・・瀬那は実家であるものを見つけ、宗親の本心を知る。また千歳もあるものを発見して驚くのだった。
里帰りで二人の仲は急加速したように見えたが、映画の撮影に戻った瀬那を見て、千歳は心を新たにする・・・。
◆番組情報
ドラマParavi『つまり好きって言いたいんだけど、』
毎週水曜深夜0:30からテレビ東京ほかで放送。
動画配信サービス「Paravi」で前週水曜日の夜9時より毎話独占先行配信中。
- 1