これまでずっと謎に包まれていた転校生・祖父江広樹の全貌が遂に明らかになった『この初恋はフィクションです』(TBS系)第8週目。祖父江役の鈴鹿央士だが、どこかファンタジーさもあり掴みどころがない今回の役どころにもよくハマる。主人公・泉(飯沼愛)との図書館での初対面シーンは、2人の"絶対に会いたい"という想いが運命を手繰り寄せ互いを惹き合わせるとても印象的で何とも愛おしいシーンに仕上がっていた。
祖父江と学校、クラスメイトの橋渡しになりたいと思う泉は、文化祭のクラスの出し物に"演劇"を提案する。そして祖父江には学校に来られなくても作品作りに参加できる"台本作り"を持ちかける。こうしてスローガン通り、祖父江と泉2人の"冒険"が始まった。図書館や祖父江宅で何度も台本を練り直し、より良いものにブラッシュアップしていく共同作業。
その中で祖父江が初めて泉の仲良しメンバーのグループLINEに自分からメッセージを送り、皆に意見を求めていた。祖父江がどんどん自分の殻を破り、泉を通してさらにその裏にいるクラスメイトたちと繋がり始めた。そして、何より素敵なのは、この状況を泉が「祖父江くんを通してクラスが1つになっている気がした」と感じている点だろう。泉は全く"自分のおかげで"なんて微塵も思っていないのだ。
振り返れば、泉はこれまで一度も祖父江に対して"やってあげたい"という類の言葉を使ったことがない。"やってあげる""してもらう"のような"施す側"と"施しを受ける側"という立場・関係性ではないところで彼らが結びつきを深めているのがよく伝わってくる。
台本の完成時、思わずハンドタッチし合う2人の姿は青春そのものだ。
「一緒に学校行こ」
「ずっとそんな風に言って欲しかったのかも。"来いよ"とか"待ってる"じゃなくて、"一緒に行こ"って誰かに言って欲しかった」
泉はノジこと野島(坂東龍汰)の時とは違い、ごくごく自然に自分の中にある祖父江への好意をはっきりと自覚したようで、ここでもまた新たな"冒険"の幕開けが見られた。
鈴鹿央士演じる祖父江が自分の部屋に掛かった高校の制服を、何かしらの決意を持って眼差す姿に既にグッとくるものが込み上げてくる。改めて本作での祖父江役で、鈴鹿の台詞ではなく視線や飲み込んだ言葉、後ずさる姿などで人物の内面や本音をありありと描写する技量に唸らされる。ずっと引きこもっていた祖父江が徐々に徐々に泉を通して仲間や学校、ひいては"世界"と距離を縮め繋がろうとしている様が伝わってくる。何でも器用にこなすかに見える祖父江に、不器用さや少し抜けている部分を上手く織り交ぜ、さらに繊細さや危うさを時折覗かせる生きたキャラクターにして見せてくれる。
せっかく機は熟したかに思えたが、そんな泉と祖父江の2人に突然邪魔が入る。何かにつけ泉に嫌がらせをしていた謎の1年生は早乙女(山時聡真)というようだが、祖父江が元・子役の"増田こうき"であることを知っており、もの凄い剣幕で「そいつが幸せになっちゃいけない人間だからだよ!」と言い放つ。早乙女と祖父江の間にはかつて何があったのか。無事、祖父江は泉とともに学校に行けるようになるだろうか。始まったばかりの2人の冒険の続きが早く見たい。
(文:佳香(かこ)/イラスト:まつもとりえこ)
【第9週(12月6日[月]~12月9日[木])あらすじ】
祖父江(鈴鹿央士)を恨む早乙女(山時聡真)に、思い切って何があったのかを聞く泉(飯沼愛)。
2人の過去の因縁を聞かされるが、そこに誤解があるように思う泉は、祖父江と早乙女を引き合わせることに。
一方、学校では文化祭の準備が着々と進んでいた。すると、祖父江から待ち合わせをして一緒に学校に行こうと言われ嬉しくなる泉。
その矢先、祖父江の元に届いたある一通のメール。
それが原因で、祖父江にはある悩みの種ができてしまい、再び学校から足が遠のいてしまうのだった。
そんな中、ノジ(坂東龍汰)はカフェでバッタリと祖父江に遭遇!
劇のセリフの言い回しに悩んでいたノジは祖父江の的確なアドバイスをもらい、喜ぶ。
そんなノジの姿を見た祖父江は、ひとり放課後の学校へと向かう。
そして、祖父江は泉にそのメールの話をする決意をするのだが・・・!?
◆番組情報
よるおびドラマ『この初恋はフィクションです』
毎週月~木曜 深夜0:40~0:55
TBS公式YouTubeでも全話配信。地上波放送後に、動画配信サービス「Paravi」でも配信。
TBSスター育成プロジェクト『私が女優になる日_』は動画配信サービス「Paravi」で全話配信
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