ブレイク寸前の注目俳優・藤代瀬那(櫻井海音)のことがいよいよ本格的に気になり始めたマネージャー・冴島千歳(大原櫻子)の前に強力なライバルが出現した『つまり好きって言いたいんだけど、』(テレビ東京ほか)第8話。
瀬那の初主演映画『アムネジアフラワー』でヒロインを務めた憑依型女優の白川雪乃(森田望智)の存在感がどんどん増していく。瀬那との共演作では真っ白なワンピースがよく似合う清楚で可憐な記憶喪失の元恋人役を好演したかと思いきや、その打ち上げに現れた雪乃は同一人物とは思えぬほどの変貌ぶり。既に撮影が始まっている別作品で演じているのが次々と男を虜にしてしまう魔性の女役らしく、真っ黒でシックなドレスに身を包み、外見だけでなく所作や内面もその人物が乗り移ってしまったかのようだ。
挑発的な視線を周囲に振りまき、性格も一気に大胆になり妖艶な雰囲気を終始漂わせる。同じ"黒髪の女性"でも、与える印象は180度正反対の"聖女"と"魔性の女"だ。香水から何から何までその役柄になりきり、本人の境界線が限りなくゼロに近づいていく。
初主演映画で初座長を務め、着実に俳優として成長を遂げている瀬那からすれば、それはもう雪乃のような存在は良い刺激を与えてくれる起爆剤に違いない。
千歳としても、どんどん俳優として鍛錬を積み、課題をクリアし、現場でも監督らに褒められ認められる瀬那の姿を見るのはマネージャー冥利に尽きる一方で、それと同じだけ瀬那との心の距離を感じてしまうようだ。「藤代さんの近くにいるのに、すごく遠くにいる気がして。彼のどこまでが本当でどこからが嘘なのか分からなくなる」と本音をポツリと打ち明けていた。
瀬那と雪乃の共演シーンやその合間に親しそうに談笑している2人の姿を見ると、千歳の心にはザラリとした感触が残り、瀬那が興奮気味に彼女の女優としての凄みを語れば語るほどに何とも説明のつかない感情が沸き起こる。恋ってやつは厄介だ。
「いちど台本を読んだだけでその役柄が体に入ってくる感覚らしい。雪乃さんの目には作品の世界がそのまま広がっているんだ。俺も一度でいいからそんな感覚味わってみたいよ」という瀬那の言葉は、純粋にただ"俳優"という職業人としての雪乃へのリスペクトと興味に違いないが、瀬那への好意が自分の中で大きくなっているのを隠し切れない千歳からすれば、どうしたってそれ以上に深い意味がないのか不安になってしまい、詮索したくなってしまうのだろう。
雪乃とのことをとやかく問い詰める千歳に対して、思わず瀬那が言い放つ「だったら何だよ。俺の彼女でもないくせに」は冷たく聞こえてしまうかもしれないが、彼だって八方塞がりだ。自分の想いを全力で伝えたって信じ切ってはもらえず、千歳の方がバリアを張っている。にもかかわらず、演技の幅を広げてくれそうな共演者と演技論で盛り上がったというあくまで仕事の話をしただけなのに疑わしい目を向けられてしまう。
まだまだ成長途中で貪欲に周囲からお芝居について吸収したい瀬那にとっては、行き過ぎた過干渉でどうしたって煩わしく窮屈に感じてしまう部分もあるだろう。こちらがどんなに本気を伝えてもはぐらかすのに、疑いばかりかけられては気が休まらず疲れてしまうのではないだろうか。
「私の世界、瀬那にも見せてあげる」と言った雪乃は彼をどこに連れ出し、どんな世界を見せ、どんな風に影響を及ぼしていくのか。乞うご期待だ。
(文:佳香(かこ)/イラスト:月野くみ)
【第9話(12月1日[水]放送)あらすじ】
雪乃(森田望智)の車に乗り、夜の街へと消え去ってしまった瀬那(櫻井海音)。ただ帰りを待つしかない千歳(大原櫻子)は帰宅した瀬那から衝撃の事実を聞かされ!?
瀬那と雪乃の仲を心配する千歳だが、海外の有名監督が主催するワークショップへの参加で、二人の仲は深まるばかり。さらに、加賀見(東啓介)から突然の告白を受け、千歳の気持ちは揺れ動いていく。
そんな中、真知子(佐藤江梨子)がマンションに突然やって来て大慌て! 一方で瀬那はビッグチャンスを掴む! 千歳は究極の選択を迫られることに。
◆番組情報
ドラマParavi『つまり好きって言いたいんだけど、』
毎週水曜深夜0:30からテレビ東京ほかで放送。
動画配信サービス「Paravi」で前週水曜日の夜9時より毎話独占先行配信中。
- 1