これはもう大輝(松下洸平)が辛すぎるんやないやろうか・・・。

『最愛』(TBS系/毎週金曜22:00~)第6話。それは、ただ「最愛」の人を守りたいがために力を尽くす男と、孤独になる男の物語だった。

加瀬は、騎士と執事の両面を持った最強キャラだった

ここに来て、一気に"騎士(ナイト)感"が上がったのが、加瀬(井浦新)。梨央(吉高由里子)のために必ず優(高橋文哉)を取り返す。いよいよ本領発揮となった加瀬は、もう完璧な騎士だった。

法律という知識を武器に、警察相手に大立ち回り。いち早く動画の解析に乗り出し、優が昭(酒向芳)の息の根を止めたわけではないという証拠を掴んだかと思いきや、素行のよろしくない刑事(宮崎秋人)にはそれをネタに脅しをかけ捜査情報を入手。ただ誠実で理知的なだけじゃない、ブラックなタフネスさで、なんとか起訴に持ち込みたい警察の守りを崩していく。

そして梨央に何かあると、すかさずフォロー。優の身を案じるあまり何も喉が通らない梨央のために持ってきた食べ物がスープ系というのも気が利きすぎて最高に執事(バトラー)。そう、加瀬は騎士と執事の両面を持った最強キャラだった。大輝と立ち話をしている梨央を連れ戻す場面では、手慣れた様子で自分のコートを掛ける。至れり尽くせりにも程があるわ。

その上で、実は甘いもの好きで可愛いカフェにも詳しいというギャップ萌えまで乗っけてきたから、ここに来て加瀬が本気を出してきた。おそろしい男だよ、井浦新は...。

そのすさまじき執念が実り、優は不起訴に。3人で鉄板焼きを頬張る光景は、まるで家族みたいだった。梨央にとって加瀬は最も心を許せる相手なのだろう。

加瀬が心許せる相手なら、大輝は心揺さぶられる相手

一方、報われないのが大輝だ。優を取り戻したいという気持ちは加瀬と同じ。だけど、刑事という職務を考えれば、それは公正とは言えなかった。大輝の立場が危うくなることを懸念した梨央は「もう会わんようにする」と別れを告げる。

ここからの『君に夢中』タイムは、極上の時間だった。15年前、あの駅伝の日も、同じように梨央は一方的に大輝の前からいなくなった。勝手に決めんな。あの叫びは、15年来の大輝の気持ちだろう。いつも梨央は勝手にいなくなる。大輝の心を置き去りにして。

だから、大輝は走った。15年前には間に合わなかった。あの歩道橋の上にいた梨央に追いつくことはできなかった。でも今度は、違う。2人を阻む、片側二車線の大通り。それは、2人の世界は決して交わらないという暗喩。だけど、大輝はそれを飛び越える。点滅する青信号をこえて。

袋小路で大輝を見つめる梨央の瞳には、抗えない運命が乗っていって。力強く梨央を抱きしめた大輝の腕は、あのとき抱き返せなかったときとは違う覚悟があって。だけど、梨央は一度大輝の背中を抱いたあと、自分から離れる。このぬくもりを知っている。このぬくもりがずっとほしかった。でも、このぬくもりを手に入れたら、いろんなものが壊れてしまう。だから、自分から手を離す。

そのあと、優を連れて馴染みの店を訪ねた梨央はもう普段の梨央に戻っていた。だけど、深読みだろうか。大輝を手放すことを決めたからこそ、あえて明るく振る舞っているようにも見えた。

梨央が守りたい「最愛」は弟だった。だから、大輝と生きる人生を選ばなかった。そういうふうに読み取ることもできるだろう。でも、そうじゃない気もする。本当に幸せになってほしい人だから、自分から手を離す。そんな「最愛」もあるんじゃないか。梨央と大輝を見ていると、そう思う。

加瀬が心許せる相手なら、大輝は心揺さぶられる相手。梨央の人生に寄り添い続ける「最愛」の人とははたして誰なのだろうか。

康介にとどめを刺したのは、しおりなのだろうか?

一方、事件の謎もまたひとつ真相解明に向かって進んだ。優が池に突き落としたあと、昭は自力で這い上がってきた。やはり、その後、何者かが昭を殺害したらしい。

長嶋(金井成大)の近況を知った藤井(岡山天音)は「そんな変わらんもんですよ、人間」と意味深に呟いた。余白を大胆にとった構図は、この台詞そのものに二重の意味があることを示唆している。つまり、この台詞は長嶋だけでなく、別の人間のことも指していると考えていいだろう。

となると、やはり康介(朝井大智)のことも含んでいると考えるのが自然だ。陸上部の名誉を汚した薬物事件の張本人である康介に対して恨みを抱いているのか。それとも、康介が女性たちをレイプしていたことを以前から知っていたのか。藤井の、この人間に対する諦念の真意がこれからの焦点となりそうだ。

また、しおり(田中みな実)が康介から性的暴行を受けた被害者のひとりであることも発覚した。理不尽によって、自らの心と体を傷つけられたしおり。その憤りが強大な権力に対する反骨心となり、真田家の不正を暴こうとする原動力となっているのだろうか。まさかだとは思うけれど、あの嵐の夜にしおりが寮にいた可能性もある。だとすると、この事件の全貌に大きく関わってくるかもしれない。

2006年9月は、すでにしおりは休学中の身。岐阜にいてもおかしくはない。康介に復讐するため、しおりがあえてまた康介に近づいていたとしたら。優に刺され、瀕死の重傷を負っている康介を見て、しおりがとどめを刺したという説も成立する。ますます真相が気になるばかりだ。

ストーリーは面白くて、全キャラクターが魅力的。豊作揃いの秋ドラマでも、ほぼ鉄板状態の『最愛』。でもとりあえず今回最大のツボは山尾(津田健次郎)の「何? もっかい言って」でした。あんなん、可愛すぎるやろ。

(文:横川良明/イラスト:まつもとりえこ)

【第7話(11月26日[金]放送)あらすじ】

梨央(吉高由里子)の前に現れたしおり(田中みな実)は、真田グループの不正について追及する。話が見えない梨央はその場を去るが、しおりが自分や優(高橋文哉)のことを昔から知っていたような口ぶりに違和感を抱いていた。

加瀬(井浦新)の尽力によって昭(酒向芳)の死には関与していないことが証明された優は、梨央と一緒に暮らすことに。さらに、加瀬の言葉で前向きに生きることを考えるようになり、新薬の治験を受ける決意をする。

一方、大輝(松下洸平)と桑田(佐久間由衣)は、15年前の事件の捜査から関係者として浮上したしおりと接触。15年前のある恨みが昭殺害事件につながった可能性があることを掴むが、しおりには事件当夜のアリバイがあった。

さらに、しおりは真田ウェルネスが経営する老人ホームに出入りし、真田グループの不正を執拗に追う。そんな彼女に対し、後藤(及川光博)は再び取材をやめさせようとするが・・・。

◆番組情報
『最愛』
毎週金曜日22:00からTBS系で放送中。
地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。