益田ミリの同名人気漫画を原作とし、原田知世が主演を務める連続ドラマ『スナック キズツキ』(テレビ東京)の第6話が11月12日に放送された。今回のゲストは、第3話で登場した広告代理店営業部の佐藤悟志(塚地武雅)の妹で、専業主婦の香保(西田尚美)。ちなみに、独身で子どももなく、実家暮らしの悟志との対比で、高層タワマンに住み、息子が京大に入学したという"持てる側の人"として描かれていた。

それでいて、第2話のゲストで安達よしみ(平岩紙)が勤めるお惣菜コーナーでは、サバの竜田揚げの身が欠けていない部分と入れ替えるよう要求した女性でもある。ここまでの情報で判断すると、なんだか鼻もちならない印象を抱く人もいるだろう。

しかし、人生安泰で傍から見たら"持てる人"だって、キズツいている。

京大に受かった息子の不要になった赤本を紐で縛り、夜食作りをしていた日々を思い出す香保。父子で同じ大学に合格したことから、義父母にも喜ばれるが、張り切った義父母は部屋探しも仕切り始め、なんだかモヤモヤしてしまう。

また、朝食をとりながら、PCで株価を見ている夫と、調べ物をしている息子の姿にモヤモヤ。義母の誕生日プレゼントを夫に相談しても「任せるよ」と言われてモヤモヤ。高校時代の友人たちからは息子の京大について祝われるが、「まるで私の人生がゴールしたみたいに聞こえてしまうのはなぜだろう」とモヤモヤ。大きな荷物を抱えて歩く中、「あんた、重そうだね、荷物」「ちょっと荷物おろしてさ、冷たいものでも飲んでいけば?」と声をかけたのが、スナック キズツキのママ・トウコ(原田知世)だった。

懐かしい雰囲気の店内で甘酸っぱいりんごジュースを飲みながら、ふと思い出すのは、サバの身を店員に入れ替えさせる今の自分と、「図々しくて押しが強くて、そんな大人にはなりたくないと思っていた」若い頃の自分。

毎日友達とたくさん喋って、たくさん笑っていた「無敵時代」の自分は、今は息子に「お母さんより知らないこと、とりあえずないわ」なんて言われているのだ。

そこでトウコが言う。「今夜再び無敵になってみる?」

音楽を流し、ミラーボールを回して歌い、踊る2人。この「無敵時代」に自身の若い頃を重ね合わせて観て、共感した視聴者は多かったろう。と同時に考えさせられるのは、恵まれて何でも持っているように見える人もまた、何かにキズツいているということを、多くの人が忘れがちだということ。

キズツキ→キズツケのリレーは、視点を変えることにより、自身と異なる環境・立場の人の思いへの気づきを与え、想像力を持つ重要性を考えさせるものとなっている。

1話完結のスタイルでありつつ、続けて観ることが何より大きな意味を持つ作品でもあるだろう。

(文:田幸和歌子/イラスト:たけだあや)

【第7話(11月19日[金]放送)あらすじ】

今回スナック キズツキを訪れる客はサトちゃん(塚地武雅)の母、佐藤ヨシ子(丘みつ子)。独身の息子を心配する一方で、夫に先立たれ、友人とも疎遠になり、どこか孤独な日を過ごしている。今回の店主トウコ(原田知世)のおもてなしは、トウコのアコーディオン演奏に合わせて歌うシャンソン!? 「人生何が起きるかわからない」。初めてのスナックで、初めてオニオンスープを食べる。

◆放送情報
『スナック キズツキ』
毎週深夜0:12からテレビ東京で放送。
地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信されている。