益田ミリの同名人気漫画を原作とし、原田知世が主演を務める連続ドラマ『スナック キズツキ』(テレビ東京)の第5話が11月5日に放送された。今回は第1話、第3話でキズツケる側、第4話でメインのキズツキ側として登場した瀧井潤(小関裕太)がよく行くコンビニの店員。彼にひそかに恋心を抱く富田希美 (徳永えり)の物語だ。
前回キズツキ→キズツケのリレーが一周し、次はどこに発展するのかと思えば、コンビニ店員と客とは。ずいぶん薄いつながりに行ったなあ・・・と思うのは、早計だ。なぜなら、現状で、そうした薄いつながりに意味があるという事実にこそ、富田の日々の生活や人生が見えてくるからだ。
富田は30歳のときに商社をやめ、転職したが、体調を崩して退社。現在は就職活動中の35歳・実家暮らしのコンビニバイトだ。リクルートスーツ姿を見た幼い姪には、無邪気に「なんでそんな格好してるの?」と聞かれるが、それは彼女自身が一番感じていることでもあった。
バイトあがりに、つい美味しそうに見えたモノを買ってしまうこともあるが、それだけでほぼ時給1時間分がとぶ。そんな毎日で、よく店に訪れる潤の存在がささやかな潤いになっているのだ。しかし、帰り道で会い、会釈しても気づいてももらえない(下を向いて歩く潤も、傷ついているときに見える)。
そこでたどり着いたのが、スナック キズツキだ。訪れる人は必ず、近所だったり、何度も通っていたりするのにこれまで気づかなかったと言う。逆に言うと心に積もったアレコレが溢れる寸前で出会える場所なのだろうか。
注文したホットココアを待つ間、停電が起こり、富田は思わず「もしも今何かあったらどうします?」とママ・トウコ(原田知世)に尋ねる。
実はこれは、富田が妹との会話の中でつぶやいたことだ。世界レベルの何か大変なことが起こったら、就活どころじゃなくなるかも、と。不謹慎ながら「誰にも等しく大変なこと」が突然起これば、不可抗力により、むしろ現状の個人的苦しみから解放されるのではないかと考えてしまったことがある人も、実は結構いるのではないか。
しかし、幸せに見える妹もまた、子連れ離婚をして実家に戻って来ると言う。安心や確かな幸せは、どこまで行ったら得られるのだろう。
ココアを弱火で煎りつつ、トウコはしりとりを提案する。
「ホットココア 飲みたくなるって、まあまあ疲れてる日」と言われ、富田が「百均の絆創膏、靴擦れに貼って就活」と続ける。そこからしりとりにのせて、トウコの合いの手をはさみつつ「運命の人なんかじゃなく、ただ生き延びたい、それだけなのかも」「笑っちゃうくらい頼りない私の人生。差し出せるものも残せるものもたぶん何もないんだ」などと心情を吐露する富田。
しかし、それは決して諦めではない。徳永えりの寂しい笑顔には、不確かで小さなものながら灯火が再び宿っているように見える。心に積もった塵をいったん吐き出した富田は、翌日、1人しりとりをしながら就活に向かい、水溜りを軽く飛び越え、空を見上げるのだった。
(文:田幸和歌子/イラスト:たけだあや)
【第6話(11月12日[金]放送)あらすじ】
今回スナック キズツキを訪れる客は主婦の中島香保(西田尚美)。タワマン高層階での暮らしに、息子は京大合格と、恵まれた日々・・・かと思ったら、彼女もまた傷ついていた。周囲にあえば息子の話ばかりで、自分の人生って・・・と、未来ある若者がうらやましく見える日々。今回、店主トウコ(原田知世)のおもてなしは、ミラーボールに照らされながらの歌とダンス!? 甘酸っぱいリンゴジュースと共に、無敵だったあの頃を思い出す。
◆放送情報
『スナック キズツキ』
毎週深夜0:12からテレビ東京で放送。
地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信されている。
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