転校初日から一度もクラスメイトの前に姿を現さず、それなのに存在感を異様に放つ正体不明の転校生・祖父江広樹は第3週目でも顔は明かされずだった『この初恋はフィクションです』(TBS系)。彼のスマホを持つ手元と首から下のカットは写され、作中実在の人物であることを再確認できた。

印象的だったのは、生徒会長で優等生の泉(飯沼愛)と校則違反常習犯の紗羽(武山瑠香)が中学時代いかにして親友になったかのエピソードだ。メイクやスカート丈の長さ、さらには靴下の色にとどまらず下着の色まで学校側に厳密に縛りを設けられる「校則」というルールを無視し、その必要性や妥当性を問いかける紗羽は、担任の教師にも目の敵にされているような節があった。そこに待ったをかけたのは意外なことに、彼女と正反対のタイプに見える泉だ。

「見た目と生活態度は関係ない」と言い放ち、校則は「判断力が未熟な君たちが道を外れないようにするため」にあるという担任に対して「そんなことで判断力がつくとは思いません」と、むしろ表面的な見た目で相手のことを判断することにも繋がりかねないと警鐘を鳴らす。紗羽が言う「私たちを管理しやすくしてるだけじゃん」も一理ある。そして2人がとった窮屈でバカバカしい世界への反逆がまたかっこいい。校則のない桜彩館高校という進学校の受験を2人で決めたのだ。"自由"と"責任"はセットだからこそ、学生の本業である学業に勤しみ責任を果たし、引き換えに自由を得るという最もスマートな逆襲だ。

お互いに持っていない部分に惹かれ合い、それぞれが「ヒーロー」だと言い合える素敵な関係性は本当にかけがえない。皆がいわれのない噂を信じ自分から離れていった中、唯一自分に味方してくれた泉は紗羽にとって間違いなくヒーローで、そして翻って泉にとっても紗羽は"明るく眩しい世界を見せてくれるヒーロー"であり、自分でも知らない自分自身を引き出してくれるのだろう。2人の絆は 「桜彩館高校合格」という共通目標に向けて取り組む戦友になってからさらに深まったようだ。

第3週で描かれた泉に片思い中の野島(坂東龍汰)の恋模様もかなり歯痒く、彼女に嫌われまいと自分の気持ちの行き場を見失いがちな野島を応援したい気持ちにさせられる。さらにそこに彼に好意を寄せる凛(赤穂華)からの視線も絡まり、青春の煌めきだけでなく青春ならではのヒリつきも思い起こさせる。

坂東龍汰は現在放送中で、同じく秋元康企画・原案の『真犯人フラグ』(日本テレビ系)にも出演中で、主人公が働く配送会社の配送スタッフ・望月鼓太朗役を熱演している。本作で見せるいわゆる"陽キャラ"感満載な姿とは全く違い、どこか陰りもあるとても気になる大人びた青年役でこのギャップに驚かされる。

高校生は恋に進路に悩みは尽きない。「提出期限までに進路を決めろって言われてるみたいですっごく焦る」とは泉の言葉だが、「決まったルートを進むのは確認でしかない。僕は冒険がしたい」「コンパスを持たずに航海に出るのは、ゾクゾクする」という祖父江からのLINEに何かを決意した様子の泉。家族も周囲も当然彼女が医学部に進学するものだと思っている中迎える三者面談はどんな展開になるのか。また、三者面談のスケジュールに祖父江の名前もあったが、そろそろ折り返しに差し掛かるだろう次週は、そろそろ祖父江のお顔を拝みたい。

(文:佳香(かこ)/イラスト:まつもとりえこ)

【第4週(11月1日[月]~11月4日[木])あらすじ】

いつも忙しそうにしている祥子(坂井真紀)に、進路で悩んでいることを打ち明けられない泉(飯沼愛)。
結果、泉は三者面談の席で医大に行かないと告げることに。
すると、それが原因で親子喧嘩に発展し、泉はついに家を飛び出してしまう。
家に帰らないつもりで祥子に送ったはずのLINEを、祖父江に誤送信してしまっており・・・。
さらに、学校では自分の気持ちに気づいた凛(赤穂華)から話があると呼ばれるが、
予想外のことを言われ、驚きを隠せない。果たしてその内容とは・・・!
◆番組情報
よるおびドラマ『この初恋はフィクションです』
毎週月~木曜 深夜0:40~0:55
TBS公式YouTubeでも全話配信。地上波放送後に、動画配信サービス「Paravi」でも配信。
TBSスター育成プロジェクト『私が女優になる日_』は動画配信サービス「Paravi」で全話配信中。