益田ミリの同名人気漫画を原作とし、原田知世が主演を務める連続ドラマ『スナック キズツキ』(テレビ東京)の第4話が10月29日に放送された。今回は第1話でコールセンターの中田(成海璃子)に自分の話ばかりしていた彼氏で、第3話で広告代理店営業部の佐藤(塚地武雅)に顔も上げずに返事をしていた瀧井潤(小関裕太)がゲスト。初めて仕事とプライベートの両面から複数の人間をキズツケている人物だ。かなり手強そうだが・・・。

潤は高校の同級生にバーベキューに誘われ、運転手としてセレブの集いに参加する。セレブ様のバーベキューと聞くだけで、恐怖や胸糞悪さを感じる人は実は全日本人の9割以上なのではないか(偏見です)。

名刺交換した相手には広告代理店勤務ということで「CMとかイベントとか?」と聞かれ、「地方の小さな物産展とか」と律儀に答えただけで、まるで悪いことを聞いたような顔をされる。

シャトーマルゴーの差し入れがあったと盛り上がる集団を遠目に、瀧井が「おお」などと声を漏らすと、近くにいた女性・アオイには「高いお酒なんですか」「私、全然詳しくなくて」と聞かれる。アオイの親は池袋にいくつもビルを持つ会社経営者で、親の会社は兄が継いで、アオイ自身は語学に興味があるからドイツに留学するのだと言う。

そして、猛烈な場違い感で疲れきった潤がたどり着いたのが、スナック キズツキだ。しかし、蹴った小石が看板に当たり、ヒビが入ってしまったために弁償を、と言いに行ったのである。

ところが、「そんなことより」電球を替えてくれと言うトウコ(原田知世)は、お礼にコーヒーを出してくれる、コーヒーがノルウェーのものであることから、村上春樹の『ノルウェーの森』の話をする。

「お金持ちであることの利点って何だと思う?」

これは主人公の青年に緑という女の子が問いかけたセリフだ。わからないと言う青年に緑は「お金がないって言えることよ」と続ける。緑はお金持ちの女学校に通っていたが、親が無理をして入れただけ。だから、友人たちは何か誘いを断る際に「お金がないからダメ」と言うが、自分は言えない。

「私がもし『今お金ない』って言ったら、それは本当にお金がないっていうことだもの。 惨めなだけよ」

その言葉に、潤は自身が私立の美大を目指していたが、母子家庭でお金がないために志望校を変えたこと、その本当の理由を友人には言えず、「うちから近いんだよ。俺、朝弱いし」と誤魔化していた高校時代を思い出す。

しかし、潤にはだし巻き玉子が絶品の愛情深い母もいたし、赤いウインナーが入る「うちの焼肉」も美味しかったし、仲良しの兄とその家族もいる。しかし・・・母は亡くなり、美大を諦めた自分は今も奨学金を返しながら、物産展の仕事をしている。

そんな潤にトウコが勧めたのは「朗読」だった。

そこで、海底に暮らし、他の世界を知らない「ウミウシ」の物語が紡がれる。

パリピが無料で振る舞うA5ランクのブランド牛より、母のだし巻きや赤いウインナーのほうが美味しいことを潤はちゃんと知っている。だが、彼らはA5ランクも選べるし、「あえて」赤いウインナーを選ぶことだってできるのだ。そう思うと、なんだか苦しくなる。

キズツケるというと、他者に悪意や攻撃性を持って不快な言動をすることをイメージしがちだが、彼らは何も悪いことをしているわけではない。にもかかわらず、何なのだろう、この救われない気持ちは。

メニューにないだし巻きを作ってもらい、涙を落とした潤が店を出るとき、トウコは呟いた。

「ホタテは言った」
「逃げることもできたのに、あんたは店に入ってきた」

同級生の女の子の誘惑にのらず、仕事の話で見栄もはらず、自分のミスから逃げもしない真面目な潤が、ほんのひととき救われた瞬間だった。

(文:田幸和歌子/イラスト:たけだあや)

【第5話(11月5日[金]放送)あらすじ】

今回"スナック キズツキ"を訪れる客はコンビニ店員の富田希美(徳永えり)。アルバイトの傍ら続ける転職活動は全く思うようにいかず、ひそかに思いを寄せていたお客さん(小関裕太)には、気づいてさえもらえず・・・。今回の店主トウコ(原田知世)のおもてなしは、なんと"しりとり"! 「ありふれたものでいいから 確実な明日が欲しい」という気持ちを、世界一おいしいココアとともに、解きほぐす。

◆放送情報
『スナック キズツキ』
毎週深夜0:12からテレビ東京で放送。
地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信されている。