弟が姿を消したのは、やはり記憶を取り戻したためだった――。

15年の時を超えて、つながる2つの事件。その謎を追うドラマ『最愛』(TBS系/毎週金曜22:00~)。第3話は、これまでのサスペンス要素から一転、ぐっとラブストーリーの濃度が高まった回だった。

昭を殺したのは、弟の優ではなく、別の誰かか?

弟・優が15歳のときに姿を消したのは、自身が康介(朝井大智)を殺したという記憶を思い出したからだった。これ以上、そばにいたら姉に迷惑がかかる。そう思い、弟は梨央(吉高由里子)の前からいなくなった。消息の手がかりは、毎月届く「僕は元気です 優」と書かれた絵葉書だけ。梨央にとって今も"最愛"の相手は、他ならぬ弟だった。

そして、もうひとつ大きな前進となったのが、康介の父・昭(酒向芳)に500万の大金を渡したのは、情報屋(高橋文哉)だったということ。優=情報屋という推理が的中しているなら、この行動も理解できる。この500万円は、これ以上姉に近づくなという警告のようなものか。

ただし、情報屋と思われる人物が昭に500万円を渡したのは、8月2日の15時42分頃。つまり、時系列でいうと、昭は500万円を受け取ったその日の夜に梨央のもとを訪れていることになる。もし500万円を渡したのが情報屋だとしたら、情報屋はなぜ昭が梨央に接触しようとしていたことを事前に知り得たのか。そのあたりもよくわからない。情報屋は梨央だけでなく、昭のこともずっと監視していたのだろうか。

また、よくわからないのが、そもそもなぜ昭が殺されたのかということだ。梨央に接触したときの口ぶりから見て、少なくとも康介殺しに梨央が関連しているという決定的な証拠を、昭が掴んでいた様子はない。つまり、わざわざリスクを冒して殺さなければいけないほど(しかも遺体がすぐ見つかるようなやり方で)、梨央に危害を及ぼす存在ではないということだ。事件当夜、情報屋が芝池公園付近にいる姿が防犯カメラに残されていたが、梨央を守るためという動機だとしたら、この時点ではやや軽率すぎる。

ならば殺された理由は2つ。ひとつは、梨央のもとを訪ねた8月2日の23時頃から、死亡推定時刻である8月3日の深夜までの間に、梨央が康介殺しに関わっているという確証を何か掴んだか。もしくは、昭が殺害されたのは、梨央とは一切関係のない別の理由ということだ。

もし梨央とはまったく別の線だと考えると、怪しいのはやはり藤井(岡山天音)だろう。今回出番はなかったが、藤井が康介殺しのあった日の夜、何をしていたのか。そして、泥だらけになった達雄(光石研)はあの夜、何をしていたのか。このあたりの真相が明らかになったとき、この事件の全貌も見えてくるはずだ。

お互いを見つめ合うか? それとも同じ方向を見つめるか?

一方、梨央をめぐる大輝(松下洸平)と加瀬の対比が、今回は明確に描かれていた。特に印象的なのは、座る位置だ。もんじゃ焼き屋で梨央と大輝はテーブルを挟む形で向かい合って座った。

「刑事みたいに、人の顔じーっと見て話すのやめなよ」

そう言いながら、見つめ合う2人の視線は、刑事と参考人、そして男と女が入り混じった複雑な機微を浮かべていた。

「何があった?」

前のめりになって梨央の話を聞こうとする大輝。そこから2人は一切目をそらさずに話し続ける。その視線と視線のぶつかり合いに、サスペンスフルな緊張感と男女の哀切が絡み合う。

一方、その後、もんじゃ焼き屋を訪ねた加瀬とは、並んで座る。しかも、大輝といた席から、わざわざ場所を移して。つまり、梨央にとって加瀬は肩を並べ合えるパートナーのような存在だということを、この構図が暗示している。

「愛はお互いを見つめ合うことではなく、共に同じ方向を見つめることである」とは、サン=テグジュペリの名言。梨央にとって大輝はお互いを見つめ合う相手であり、加瀬は共に同じ方向を見つめる相手。この言葉をそっくり引用するなら、梨央の"最愛"の相手は加瀬なのだろうか。

だが、そんな対比を盛り込みながら、演出の山本剛義はもうひとつ変化をつける。加瀬が運ばれた病院のベンチで、梨央と大輝は思い出話にふける。

最初は、いつものように向かい合う形。それが、途中で大輝が梨央の隣に座る。この瞬間、大輝は刑事ではなく、昔馴染みの想い人に戻った。

「ずっとどうしとるんか気になっとった」

そう言って、真横にいる梨央を大輝は見る。その眼差しに、梨央も応える。隣に並ぶと、向かい合っているよりも、ずっとお互いを近くに感じる。あのとき、最後に一瞬だけ小さく微笑むように頬を綻ばせた梨央は、やり手の女社長でも、疑惑の女王でもなく、ただの恋する女性に見えた。

白シャツ姿が良すぎるので、今すぐ松下洸平の腕時計になりたい

大輝と加瀬。2人は、意図的に対極の人物として配置されている。加瀬が真田ファミリーの「番犬」なら、さしずめ大輝は「猟犬」だろうか。今回も、刃物を持った森下(谷田部俊)から「番犬」は身を呈して梨央を庇い、「猟犬」は背筋の伸びたフォームで走り、噛みつくように飛びかかった。

男の野性味と、どこかくたびれた哀愁が色気を誘う「猟犬」松下洸平と、温和な物腰と、ウィットに富んだ切り返しが信頼感を醸し出す「番犬」井浦新。どちらも大人の男の魅力十分。梨央をめぐる愛の相関図もますます深まってきた。

個人的には、「猟犬」松下洸平が一歩リード。もんじゃ焼き屋でのジャケットスタイルもカッコよかったけど、夜の警察署で白シャツ1枚でコーヒーを飲みながらパソコンを睨む姿が最の高。あのとき、松下洸平の腕時計になりたいと願った視聴者が大量に発生したと思われる。

『着飾る恋には理由があって』(TBS系)の向井理の白パーカーのときも思ったけど、大人の男に白を着せたときの破壊力をプロデューサーの新井順子はめちゃくちゃよく理解している。確実に狙いだと思うので、新井順子にはこれからも一生ついていきます!

(文:横川良明/イラスト:まつもとりえこ)

【第4話(11月5日[金]放送)あらすじ】

事業説明会での騒動に加え、真田ウェルネスの疑惑を追及する記事のゲラが出回り、後藤(及川光博)の梨央(吉高由里子)への風当たりはますます強くなった。さらに、後藤は会社の裏事情を嗅ぎ回るしおり(田中みな実)に不信感を抱きはじめ、彼女について調べるよう情報屋(高橋文哉)に指示を出す。

その頃、警察は殺人事件の被害者である昭(酒向芳)に500万円を渡した男の足取りを追っていた。大輝(松下洸平)は桑田(佐久間由衣)と共に真田ウェルネスを訪ね、梨央と加瀬(井浦新)に男の心当たりがないか、さらに事件当夜の加瀬の行動について聞く。

翌朝、1本のネットニュースが梨央をさらなる窮地へと追い込む。「疑惑だらけの治験薬」という新薬の中傷記事で、不安を感じた被験者が治験の中断を申し出る事態に。社内にも動揺が広がり、真田グループの株価にまで影響が出始めていた・・・。

◆番組情報
『最愛』
毎週金曜日22:00からTBS系で放送中。
地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。