「私はまだまだ東京に憧れてたいから」

動画配信サービス「Paravi」の完全オリジナル作品『東京、愛だの、恋だの』が最終話を迎え、主人公・かえ(松本まりか)を中心に据えた "東京"が描かれた。

18歳で上京して東京在住18年目、生まれ育った地元で過ごした年月より東京生活が長くなっていく。「私は一生、東京にいるのかな?」―かえが、札幌行きを決めた芦屋(毎熊克哉)の見送り時にふとこぼした言葉は、上京組であれば誰しも思い当たったことが一度や二度はあるだろう。

そして今話では多くの人の"男ともだち"にまつわる共感を引き出したのではないだろうか。"30歳になって互いに独身だったら結婚しよう"なんていう無責任で何の保証もない危険な口約束を交わしたり、残業帰りやハズレ合コンの帰りに自宅に直帰はしたくない、誰かと飲み直しながら愚痴を言い合いたい、そんな時に気軽に互いに呼び出し合える、双方に都合の良い関係性は生温くなんだかんだ心地よく、時に容赦ない顔を見せる東京をたくましく楽しく生き抜くためには割と重要な存在にもなり得る。

そしてこういう存在は社会人になってからではなかなか得難いものだったりもする。学生時代に部活やサークルに熱中し汗を流す姿を見ていたり、授業でノートの貸し借りをしたり、バイト先に遊びに行ってみたり、互いの恋愛遍歴も知っている、そんなお互い"何者でもなかった"時に出会った相手だからこそ、職業や仕事、所属などを超えて気兼ねなく気楽な関係が続きやすい。

芦屋の言う通り「お前のこと慰められんの俺しかいないだろ」「恋人になったら終わっちゃうじゃん。お前とは一生繋がってたいじゃん」というかえとの関係性は、さらにこの関係性が続いていくことは、ある意味恋人や配偶者を見つけるよりも難しいことかもしれない。

東京生まれ・東京育ちの芦屋が、上京組のかえたちと触れ合うにつれ、自分には"自分だけの原風景がない"ということに危機感を持ち始め、故郷がある人のことを羨ましく思うようになったと明かしていたが、これも実際に聞き覚えがある人も少なくないだろう。狭いコミュニティ内で"ずっと同じ関係が続いているのが息苦しくなって"と札幌行きを決めた理由を語っていたが、これもまたある人から見た"東京"の一側面なのだろう。そして、こんな風にして東京の新陳代謝は行われていくのだ。過去6話では、東京に生きる人の悲喜こもごもが描かれたが、最終話にして初めてこの地を離れる人が見られた。

「東京生まれってだけでアドバンテージ」と言う大学時代のかえの発言も真実だと思うが、同時に「何でもあるように見えて実はただの幻想でしかない街」というのも言わんとしていることはわからなくもない。そんな風にうそぶかないとやり過ごせない程に時に手厳しい東京だが、そもそも"何でもあるように見える"そんな夢を見させてくれるのが東京だ。

「東京ほどいいとこないよ。ないものないし」と話していたかえだったが、芦屋を見送った帰りの電車の窓から見える東京は彼女の目にどんな風に映っただろうか。それでも「ないものはない」と言い切れただろうか。それともやっぱり空虚だっただろうか。

かえの東京生活の中になんだかんだずっと根付いていた芦屋という存在がいなくなったことで、また彼女は新たな"東京"とその付き合い方、楽しみ方を発見し直していくことになるだろう。

東京で生きるいろんな人の、交差することもなく続いていく人生のほんの一片を7話に渡って覗かせてもらえて、そのどれもが紛れもない"東京"であり、いつだって人を惹き付け離さない"東京"が持つ引力の正体なんだと思う。

(文:佳香(かこ)/イラスト:たけだあや)

◆番組概要
Paravi オリジナルドラマ『東京、愛だの、恋だの』
動画配信サービス「Paravi」で全話配信中。