動画配信サービス「Paravi」にて、今の時代を牽引する若きスターたちに密着取材したドキュメンタリー番組『Real Folder』が独占配信されている。本番組の記念すべき第4回目は俳優・モデルの三吉彩花への密着取材だ。
端正な顔立ち、171センチの長身、クールビューティーでカッコいい、落ち着いた雰囲気を纏う"強い女"。それが三吉彩花のイメージだったが、本作を見て彼女の至るところで発揮されるプロフェッショナルさに唸らされた。そして、飾らない人柄にも一気に魅了された。
モデルとしての彼女を、関係者は口を揃えて「反応の速さと勘の良さは抜群で唯一無二」だと絶賛する。「"ここを見せたいな"ってチラッて言ったことも絶対聞き逃さないでパッてポージングに変換してくれる」と、求められていることを瞬時に察知し、すぐにそれを表現に落とし込める反射力に厚い信頼感が寄せられているようだが、これはモデルとしてだけでなく俳優業やトークでも生かされているところだろう。
彼女のキャリアの始まりは小学校1年生、自ら志望してファッションモデルになった。そして、16歳にして恵まれた初の主演映画『旅立ちの島唄〜十五の春〜』で、第35回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞に輝く。2019年、中華圏内で人気のアーティストのミュージックビデオへの出演をきっかけに、活躍の場をアジアにまで広げ、今やインスタグラムのフォロワー数は136万を超え、中国版SNS「Weibo(微博)」でも45万フォロワーを有し、強力な影響力を持つ。中国企業とも多数CM契約を結んでいるようだ。
三吉本人は今までの自身の歩みを振り返って「世間からすると、とんとん拍子ですごい運が良くて上手くいっていて、チヤホヤされている印象がもしかしたら強いのかなって思って。そんなことないんだけどなって思いながら...」と"周囲が抱くイメージと自分自身の落差"を口にし、あくまで客観的に自分を観察しながらどこか危機感を募らせているようにも見えた。「小さい時の『カワイイね、キレイだね』だけでは成立しない領域に入り始めた。これと言って(頭一つ)抜けている才能があるとも思わないから何が得意なんだろ、苦手なんだろとか自分自身と向き合って考えたりする。自信がある部分がなかったらどういう部分を努力したらいいのかとか、どういうことを明日から始めようかとか」と、どこまでも地に足のついた現状に甘んじないストイックさを見せ、変化への渇望を覗かせた。
そんな中、彼女が意を決して名乗りを上げ認められたのが、俳優・山田孝之らが発起人となったショートフィルムプロジェクトだ。彼女は初の映画監督として挑戦できるチャンスを自らの力で手にする。彼女は「クリエイティブなこと、いろんな人と決まった枠の中だけじゃなくて意見を出し合いながら何かを作るということにフォーカスを当てたい」と、次に自分が登るべき山をもう決めていたのだ。
限られた予算と撮影期間の中で三吉が描いた『inside you』は、今の自分に満足できない主人公が迷路を抜け新たな一歩を踏み出すまでの物語で、どこか三吉自身の現在地とも重なるところがある。妥協をせず、初めての映画監督として奮闘しながら自分らしい表現を模索していく彼女は、"一つ妥協してしまえば歯止めが効かなくなってしまう"と、自分自身に"限界"を決して設けない。
そして自身がイメージする色合いや明るさなど微妙なニュアンスを伝え、現場で共有し合う難しさをこぼしながらも「今のところ引いてないです。私は一歩も」ときっぱり答える。本当に凛としていて逃げ出さず動じず、それと同時に迷いを振り切りながら孤独やプレッシャーをそうとは思わず一人引き受けて立つ彼女の、だからこそ唯一無二たる所以や強い発光力を見せつけられたかのようだった。
完成披露試写会後、山田孝之はそんな彼女の葛藤や飽くなき探究心を見透かすかのように作品を観た感想を語った。「俺には出てこない感覚という、見せ方もだし。美しいしすごい寂しかったし。なんとなく凛としていて陰の部分があるんだろうなと思ってたけど、それが映像にズドンと出ていて、すごく繊細なピュアなところが中心にあるんだなと映像を観て感じました」と。
軽やかに自身のイメージをアップデートし脱皮しているかに見える彼女の地道さ、徹底的なこだわり、何より"自分自身に嘘をつきたくない"というあまりに正直なスタンスを目の当たりにした。
そんな彼女が行き着いた初心だからこそ、また説得力が増し、多くの彼女に憧れる同性を鼓舞することだろう。「一つずつ丁寧にやっていくことが大事かな。それが形になるのがいつになるかわからないけど、今目の前にあることとそこに携わっていく人との一個の作品が出来上がるまでの過程とか、どういう風に作り上げていくのかっていうのをとことん丁寧にきっちりやっていこうと決めて、それをやってる最中です」
彼女はこれからもきっと止まることはないのだろう。それは"運"や"とんとん拍子"なんていう言葉では表せぬほど、単に彼女の"意志の力"だ。彼女が彼女自身に期待し課したハードルを常に超え続けている証に他ならず、三吉彩花はそれを自身の当然の役割だとして受け入れているからだろう。
【文:佳香(かこ)】
◆番組概要
『Real Folder』
【配信ページ】https://www.paravi.jp/title/74960
(C)MBS
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