野村宗弘の漫画『うきわ』を原作に据え、門脇麦×共演・森山直太朗がお隣同士の危うい関係"サレ妻×サレ夫"を演じる『うきわ--友達以上、不倫未満--』(テレビ東京)の最終話となる第8話が、9月27日に放送された。
夫・たっくん(大東駿介)の浮気を知りつつも、隣人の二葉(森山)と離れたくないために、離婚を思いとどまる麻衣子(門脇)だが、そんな中、二葉が福岡に転勤することに。
二葉からメッセージが届き、二人が待ち合わせたのは、カラオケ屋だ。二人だけのお出かけは、食事に次いで2度目。「待ち合わせ」というのが新鮮で良いし、受付で予約名「二葉」を名乗る麻衣子の照れくささが後ろ姿から漂う。オタクが「推し」の名でファミレスやカラオケに受付するときの照れくささにも似ているだろうか(いや、違う)。
向き合う照れくささをごまかすように、「二葉です」と名乗ってみせる二葉。「あ、中山です」と麻衣子ものっかり、「そういえば、二葉さん、下の名前、何ですか」。
おそらく当事者以外全ての人が「今、そこ!?」とツッコむところだが、「一です」「長男なんですか」「姉二人で、末っ子なんですけど長男です」「なんとなくお姉さんがいるのかなーと」「麻衣子さんは」「知ってたんですか、私の名前」......と二人の間では違和感なく、初々しい会話が続く。
名前の漢字を聞き、「あったかい名前ですね、麻衣子、麻衣子......」と本人を目の前にして連呼する二葉の無防備さと、名前を呼ばれる嬉しさを口にし、「麻衣子に生まれて良かったです」と言う麻衣子の素直さと。自分の気持ちを言葉にするのが苦手だった麻衣子が、二葉に対しては堰き止めるものがないように溢れ出す。
「こういう話、もっとしとけばよかった」と麻衣子は言うが、と同時にそれはたっくんに抱いたことのない感情でもあるだろう。そんな麻衣子に二葉は、うきわは自分でふくらませないと浮いていられなくて息ができなくなるけど、自分でふくらませられなくとも自分で泳げるようになれば良いと伝える。そして、二人は自身の甘えを詫びつつ、「うきわ、今までありがとう」と言うのだ。
最後まで手をつなぐことすらなかった二人。そこからの選択も、それぞれだ。
妻・聖(西田尚美)に、愛しいと思っている人がいることを告げ、謝り、妻の浮気の告白も受け入れて、再び一緒に笑える日を目指す二葉の決断は、実に二葉らしい。
一方、麻衣子はたっくんの方を向き、浮気していたことをずっと知っていたと話す。麻衣子が夫を正面から見たのはいつ以来だろう。何を伝えても反応が薄い麻衣子に物足りなさを感じていたたっくんと、「家事をする=生活」が愛だと思っていた麻衣子。どちらも見ていたのは「自分自身」で、一方通行だった。
結果だけ見れば、元通りの生活に戻ろうとし、何も失わなかった二葉、家庭を失った麻衣子。しかし、麻衣子の指輪のなくなった手は以前よりずっと自由だし、「その人の幸せを考えるだけで嬉しい」という、一番豊かな気持ちを手に入れることができたのだろう。
人生には誰しも、何らかのかたちで「うきわ」が必要なときというのがある。浮気された側だけでなく、した側も含め、そうした人間の弱さやズルさを否定することなく優しく丁寧に描いた良作だった。
(文=田幸和歌子/イラスト=月野くみ)
◆番組情報
『うきわ ―友達以上、不倫未満―』
毎週月曜23:06よりテレビ東京系にて放送
地上波放送終了後に動画配信サービス『Paravi』にて配信中。
見逃し配信のほか、Paraviオリジナルストーリー「うきわー他人以上、友達未満ー」を独占配信中。
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