柿野家に招かれざる客―ラスボス・仁科(杉本哲太)がやって来た『ただ離婚してないだけ』(テレビ東京ほか)も、最終話まで残すところあと1話となった。

第11話では、柿野夫婦とそして監禁生活からようやく脱出できた佐野(深水元基)を襲う「天国と地獄」が描かれた。必死の思いで逃げ出したのも束の間、最も見つかりたくなかった仁科にそのまま連行されてしまうのだから、佐野の"持ってなさ"が辛い。拷問を受け、正隆(北山宏光・Kis-My-Ft2)と妻・雪映(中村ゆり)が萌(萩原みのり)の遺体を掘り起こしている現場をおさえた画像が記録されているSDカードを仁科に渡した途端、お役御免となった。

一方、逃避行中の柿野夫婦の姿はどこからどう見ても新しい命を授かり幸せの渦中にいる二人で爽やかで神々しくさえある。雪映の口からこぼれる「今がいっちばん幸せ」という言葉も、彼女の妹が心の底から言う「なんか本当に夫婦みたい」もどちらも本心から出た言葉に違いないからこそ、より一層切なさが募る。確かに、何の罪も犯していなかった頃の柿野夫婦の食卓には会話の一つもなく、正隆はずっと雪映を、というより目に入るもの全てに敵意を剥き出しで睨みつけ、何より自分自身への憎しみをあらわにしていた。その時を思えば、第9話で雪映が発した「これからは何をするにも2人一緒が良い」という要望は叶えられているどころか、もうお互いに"互いしか(全てを知っており共有できる相手が)いない"かなり閉じた粘着度の高い密な関係性ではある。歪すぎる"共依存"関係だ。

佐野が殺害されたニュースを耳にすれば、これで自分たちの罪を知っている者はもういない、もう一度やり直せると安堵し、すぐさま帰宅。挙句、雪映は「運が開けてきたね」なんて言う始末。そして萌を自宅に招き入れてしまった時と同様に、夜になぜ知らない人を安易に家に入れてしまうのか...。その柿野夫婦の詰めの甘さを持ってして、佐野どころではない本気のヤバイ人たちを相手に「殺そう」と言い出す雪映は、本気でその作戦がうまくいくと思っているのだろうか。

萌の弟・創甫(北川拓実)に襲われた正隆が、刑事の池崎(甲本雅裕)から彼の処遇について「今回は重い刑罰になるでしょうね」と聞かされた時に、正隆は内心どう思ったのだろうか。"彼が言う通り、本来捕まるべきは自分なのに..."と創甫に対して贖罪の気持ちを抱き彼の減罰を願っただろうか。それとも"これで当面創甫から襲われることはない..."と保身に走り安堵したのだろうか。

池崎が放った「社会は一度堕ちた人間を許さない」という言葉の鋭さを正隆は真正面からきちんと受け取れただろうか。創甫に切りつけられたダウンの裂け目から次から次へと出てくるフェザーは正隆と雪映が犯してきた罪が罪を呼ぶ止まらない連鎖を暗示しているかのようだった。

結局、仁科が突きつけた条件をクリアするには否応なしにも正隆がずっと避け続けてきた実家に頭を下げるしかないだろうが、正隆はどのようにしてこの罪の連鎖を断ち切り、家族を守ろうとするのか。どう転がっても無傷ではいられない柿野夫婦だが、次週彼らの悪夢が何らかの形で終わりを迎えると思うと、もはやどんな形であっても正直安堵の気持ちの方が大きい。それくらい本作が見せ続ける"生き地獄"はあまりに強烈だ。

(文:佳香(かこ)/イラスト:まつもとりえこ)

【最終話(9月29日[水]放送)あらすじ】

佐野(深水元基)が死んだことによって自分達の罪を知る人物がいなくなり、平穏な暮らしができると思って安堵していた正隆(北山宏光)と雪映(中村ゆり)。その矢先、ヤクザの仁科(杉本哲太)が2人の元にやってくる。仁科は2人が萌(萩原みのり)の遺体を掘り起こす写真を見せ、1億で買い取るよう要求し...!?夫婦は再び、絶望の淵に追い込まれる。
いよいよクライマックス!殺人を犯した夫婦が辿る運命とは!?

◆番組情報
『ただ離婚してないだけ』
毎週水曜深夜0:00からテレビ東京ほかで放送中。
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信中。