「喜びも悲しみも皆でシェアする」平穏で幸せな「家族」となりつつあった「にじや」の面々に降りかかった一大事。TBSにて放送中の金曜ドラマ『#家族募集します』第8話は、一家の大黒柱・銀治(石橋蓮司)が心筋梗塞で倒れるところから始まった。俊平(重岡大毅)が、みどり(山本美月)の事故の報告を受けた日のことを思い起こすように、悲劇はある日突然降ってくる。

「いつだって心の準備なんかできっこない」し、黒崎(橋本じゅん)が改めて銀治がかつて言った言葉を反芻したように「いいこと悪いこと、トントンなら御の字」なのだ。それぞれの夏休みの思い出を作ろうとしていた楽しい「特別な一日」は、一転悲しい「特別な一日」に変貌し、めいく(岸井ゆきの)が買った「いつもより100円高いアイス」という「特別」は、気づいたら溶けてしまっている。いつ何が起こるかわからない。彼らの「当たり前の日常」は移ろいやすい。ある日突然当たり前でなくなってしまう。

だから俊平は、まるで「砂の城」のように掴みづらい、突然失われてしまった妻・みどりの夢を、「飛び出す絵本」として立体化して、永遠に残そうとする。その思いに寄り添うように、見えない彼の空から降ってくる「アイデア」を礼(木村文乃)は、可視化するかのように、自分の手で掴み、形にして、俊平に渡す。そんな儚さと、儚さに向き合う人々への思いやりが、このドラマにはある。

本当は、何もなくとも、「にじや」で過ごす毎日こそが「特別な一日」だった。礼は、銀治へのお見舞いをイベントとして自主的に行う子供たちの姿を見て、「絵日記に書けること」だけが特別な思い出ではないのだと認識する。

今回の主人公は蒼介(仲野太賀)だ。これまで語られることがなかった、幼少期、学童保育で一緒だった俊平の前から突然いなくなって以降、そして再び俊平と出会うまでの彼の人生の物語が明かされる。「自分にはないから、他人の幸せな瞬間がキラキラして見えて、それを撮りたかった」から、彼はカメラマンになった。第5話「にじやフェス」における家族たちの団欒の姿を、カメラ越しに一際優しい笑顔で見つめていた理由はそこにあった。とはいえカメラマンを諦めざるを得なかった「心が熱くならないと自分が納得できる写真を撮れない。プロじゃなかった」という理由もまた、なんともリアルで、切実である。

そして、次回、最終回への大きな布石として描かれている、「疑似家族」と「本当の家族」の攻防。いつき(板垣樹)の母親(平原綾香)の帰国により、黒崎親子の、期間限定父子同居生活が終わろうとしている。また、これまで明かされてこなかった、「にじや」という「家」にかつて住んでいた家族、つまりは銀治の本当の家族たちの歴史が、銀治の息子の妻・久実子(ヒコロヒー)によって明かされることで、「他人にイチから説明すると長くなるけど、こっちは何の説明もいらない家族」と言えるほどに結託した、でも、まだ数ページ分の歴史も築けていない、肩書もない、彼ら「家族」の歴史が、今にも吹き飛ばされそうに揺れている。

礼が、俊平の心の中に棲み続けているみどりに叶わないように、互いを思い合い、支え合う、出来立てほやほやの疑似家族の絆は、本当の家族の絆にはどうやっても叶わないのか。彼らが作り上げた理想的な「共助」システムはどうなってしまうのか。最終回、彼らはどんな結論を出すのだろう。必見である。

(文・藤原奈緒/イラスト・まつもとりえこ)

【最終話(9月24日[金]放送)あらすじ】

突然涙をこぼした蒼介(仲野太賀)。蒼介がひとりで何かを抱えていることを察した俊平(重岡大毅)は「今度は自分が話を聞く番だ」と屋上で蒼介に語りかける。すると蒼介は、銀治(石橋蓮司)の見舞いに一緒に来てほしいと言う。2人が病院へ向かうと、そこには銀治の息子の妻・久実子(ヒコロヒー)の姿が。銀治と家族が疎遠になった事情を知り、蒼介がそのために思い悩んでいたことを理解した俊平。銀治の家族の問題を解決したい思いはあれど、それは同時に銀治の家族がにじやに戻ってくることを意味していた。そうなれば、礼(木村文乃)やめいく(岸井ゆきの)、黒崎(橋本じゅん)とのにじやでの暮らしは終わってしまうのだ・・・

にじやに戻り、"家族"たちに全てを打ち明ける俊平と蒼介。礼とめいくは戸惑いを隠せない。それぞれの思いが交錯する中、ついに銀治の息子の達也(宇野祥平)と久実子がにじやにやって来る。さらに、黒崎の元妻・黛倫子(平原綾香)もいつきを引き取りに現れて・・・!?

突然の来訪者たちに困惑しながらも、それを機に、それぞれが自分たちの問題と向き合うにじやの"家族"たち。そして彼らは、未来のためにある選択をすることに──
SNSの「#家族募集」から始まった"家族"が、最後に選ぶ答えとは・・・?

◆番組情報
『#家族募集します』
毎週金曜22:00からTBS系で放送中。
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」でも配信。