「にじや」の家族それぞれの「夏の思い出作り」が行われた『#家族募集します』(TBS系)第7話だったが、なんとも衝撃的なラストを迎えてしまった。めいく(岸井ゆきの)の息子・大地(三浦綺羅)と、まるで本当の祖父と孫のように、散歩と銭湯、将棋と怪獣ごっこ、屋上でのキャッチボールを楽しんでいた銀治(石橋蓮司)が突然倒れた。この先どうなるのだ!?と、次回が気になってしょうがない。

それはそうと、『#家族募集します』において欠かせないものは「写真」である。第6話で、銀治と黒崎(橋本じゅん)、ナオト(井口理)の前で明かされ、第7話で黒崎によって皆に知れ渡った蒼介(仲野太賀)の「元カメラマン」という過去、そしてそれを象徴する「にじや」のかつての賑わいを示した写真だけではない。俊平(重岡大毅)の亡き妻みどり(山本美月)の生きた痕跡、過去となってしまった幸せな時間を切り取ったものとして、俊平・陽(佐藤遙灯)が以前住んでいた家には数多くの家族写真が存在していた。

特に、第5話、夏のビックイベントの一つ「夏祭り」を髣髴とさせる、つまりは「夏の思い出第1弾」とも言える「にじやフェス」における「写真」の活躍は大きい。蒼介が、それぞれの家族の幸せな光景をカメラに納めていき、中でも黒崎親子の「ベストショット」を撮ることで、不器用な二人の家族愛を証明した第5話は、まさに「写真」メイン回だったと言える。そして、今回の「夏の思い出第2弾」でもある第7話は、「写真」を軸に、その第5話と対になっている。なぜなら、第7話は、逆に「写真を撮れない」回なのだ。冒頭の「みどりの本の完成を記念した写真」を撮っていた頃の回想を例外として。

第7話の「にじや」の面々は、「絵日記に書けるような夏休みの思い出」を作ろうとそれぞれに行動する。俊平と陽、礼(木村文乃)と雫(宮崎莉里沙)は4人で海に向かい、黒崎といつき(板垣樹)は、途中合流はするものの、いつきの希望で2人きりの父娘旅行に。母・めいくがアルバイトで忙しく、お留守番組の大地は、大好きな「銀じいちゃん」を独り占めできると喜び、まるで本物の「おじいちゃんと孫」のようなひと夏の光景を繰り広げる。そんな彼らにはそれぞれに撮るべき「ベストショット」があった。でも、そのベストショットは様々な理由で、撮られなかった。

夏の日差しの下、大地と銀治が手を繋ぎ散歩する後ろ姿という胸キュンショットを撮ろうと急いでスマホを構えた蒼介は、「写真を撮ること」への屈託が湧き上がり、当惑した顔をする。そのため、ちゃんと写真を撮れたのかは定かではない。一方、海にいる俊平は、建築のプロである黒崎の指揮の元出来上がった見事な「砂の城」を「壊す前に写真とか撮ればよかった」と残念がる。さらに、海で遊び終わり、あとは2人で過ごしたいと願ういつきの言葉に喜びを抑えきれない父・黒崎の背中と、並んで歩くいつきの後ろ姿に、指で作ったカメラフレームを合わせ「蒼ちゃんなら、いい写真とるのかな」と呟く俊平。

ここに「撮られなかった写真」がいくつもある。でもそれは、礼の言う通り、「写真に撮らなくても、それぞれの心に深く刻まれた、この先ずっと忘れない思い出」となるのだろう。皆でメロンを食べた時にめいくが「こんなメロン、滅多に食べられないからいいのであって、贅沢が当たり前になると、当たり前じゃなくなった時に寂しい」のだと言った。「だから今ちゃんと味わっておこう。そしたらあと5年は、"思い出し甘み"で過ごせる」と。「撮られなかった写真」もまた、めいくの言う「メロン」と同じだ。それぞれの心の中にしか存在しないからこそ、その「思い出し甘み」を私たちは、永遠に反芻し続けることができる。

それと同時に、第7話は、それぞれの心の中にしか存在しないベストショット、美しいと同時に脆さも感じさせる「砂の城」、天から「降りてくる」からすかさずキャッチしなければならない創作のアイデア、そして最後に音を立てて消える、「にじや」屋上の看板の電飾と、どこか刹那的で移ろいやすく、危うい印象がつき纏う回でもあった。「当たり前の幸せ」は、それが「当たり前じゃなくなった時」に姿を現す。次回、銀治はどうなるのか。銀治の家族の話が明かされそうな第8話は、「にじや」という一つの「家」が持つ、もう一つの歴史を解き明かしてくれそうだ。

(文・藤原奈緒/イラスト・まつもとりえこ)

【第8話(9月17日[金]放送)あらすじ】

旅行中の俊平(重岡大毅)と礼(木村文乃)の元に、大地(三浦綺羅)からの電話が。それは、銀治(石橋蓮司)が倒れたという知らせだった──
ちょうど出かけていた蒼介(仲野太賀)とめいく(岸井ゆきの)に代わり、電話で大地に指示を出す俊平と礼。そしてふたりは、急いで東京に戻ることに。

帰宅した蒼介たちと、知らせを受けた黒崎親子も駆けつけ、病院に集まったにじやの"家族"。俊平たちは、銀治の"本当の家族"に連絡を入れるべきではないかと思案する。しかし、銀治は今まで家族について頑なに口を閉ざしていたため、全く情報がなく連絡先もわからない・・・そこで俊平たちは、SNSを使って銀治の家族を探すことを思いつく・・・!

すると、「銀治の家族だ」と名乗る女性(ヒコロヒー)が突然にじやにやって来て──

◆番組情報
『#家族募集します』
毎週金曜22:00からTBS系で放送中。
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」でも配信。