喜多見(鈴木亮平)の"空白の1年間"の秘密が明かされた日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)第8話。

救命医療のプロフェッショナル集団MER(Mobile Emergency Room)が駆けつけたのは停電によって全ての医療機器の電源が停止した病院だ。さらには豪雨による土砂崩れも相まって、レスキュー隊の到着も遅れに遅れる。多くの患者が"死"に直面し、救える命も救えない可能性がある、正に今ニュースでこの言葉を聞かない日はない"医療逼迫"の現実が描かれた。

そんな一刻を争う現場に到着する前に、公安の監視下にある喜多見に対してテロ組織との関わりがあるのか医系技官の音羽(賀来賢人)が追求する。
「私たちは危険な現場で互いの命を預けるような場面を何度も経験してきました。なのに喜多見チーフが我々に隠し事をしていたのならば看過できません。そんな人に我々の命を預ける訳にはいきません」

ただ、赤塚知事(石田ゆり子)からMERの正式承認が降りるまでは秘密を守り通すと約束した喜多見は沈黙を貫く。これには音羽が「今まで散々綺麗事を並べて、メンバーに危険な医療行為をさせてきてそれですか?」「今後私はあなたの命令には従わず自分の判断で行動しますません。皆さんも喜多見チーフに命を預けていいかもう一度考え直した方が良い」と納得のいかない様子。

綺麗事だらけの政治家の姿を見て本当にこれで良いのかと自問自答を続けていた中、ただただ目の前の命を救うために一生懸命な喜多見の姿に、きっと音羽自身が救われていたのだ。それなのに、そんな喜多見までもがもし自己保身に走り何かを隠しているとなれば、喜多見のこれまでの姿さえも「綺麗事」なのだとしたらそれはもはや音羽自身の危機なのだろう。信じたいから、確信が欲しいから追求したのではないだろうか。

むしろ、ありのままの喜多見の姿をそのまま信じられる他のMERメンバーのことが音羽はどこかで羨ましくすら感じたかもしれない。彼がこれまでどれだけ政界で"あってはならぬこと""あるはずのないこと"がまかり通るのを目にしてきたのか、思わず想いを馳せずにはいられなかった。

しかしそうは言ってはみたものの、救助活動中、結局息がぴったりの喜多見と音羽。ここまで築いてきた信頼関係、チームワークはもう体に染みついておりそう簡単には断ち切れるものではない。

ERカーの予備バッテリーの電源も底をつきかけた時、土砂崩れが起きかねない崖に面した場所にある非常用電源を復旧するため一人豪雨の中作業に当たる喜多見。「待っていたら助けられません」と。喜多見がテロリストのエリオット・椿(城田優)の命を救ったのも、これと同じ理屈なのだ。喜多見は今も昔も変わらず、ただただ患者の命を救っただけだったが、それがためテロリストをかくまった罪で投獄されてしまったのだった。自身の命も顧みず病院に恵の命の光を灯した喜多見らしい。

連絡が途絶えた喜多見の元に命令を振り切って駆けつける際に音羽が言い放つ「待ってるだけじゃ救えない命があります」は、改めてMERの存在意義を決定づけるものになっただろう。

「ふざけんな、勝手に引っ張り込んで、散々無茶して、これで終わりかよ。ふざけんなよ、戻って来いよ」とずっと蘇生を止めない音羽の懸命な姿と悲痛な声が胸を突く。喜多見の火が消えかけた中でMERに希望の光を灯すのはやはり音羽なのだ。喜多見と同じくらい音羽もしぶとく、目の前の命に真っ直ぐだ。いつの間にか彼らは"最強のチーム"になっていた。

だからこそ、喜多見も音羽に想いを託しているのだ。「現場しか知らない自分とは違って音羽先生は大きな視点で世の中を見ている。MERが必要だって誰よりわかってるし、音羽先生が厚労省の中にいればいつか日本中にMERを広めてくれるはず」と。

喜多見の過去について虚偽報告を上げた音羽に対して、白金厚労大臣(渡辺真起子)が取り出した"最終兵器"も、赤塚知事が「MERを作った本当の理由」というのも気になるところだ。

(文:佳香(かこ)/イラスト:たけだあや)

【第9話(8月29日[日]放送)あらすじ】

外国大使館で二酸化炭素中毒事故が発生! 出動したMERに「大使館内は各国の領土であり、許可なく立ち入れない」という法律の壁が立ち塞がる。

一方、都知事・赤塚梓(石田ゆり子)は持病で倒れてしまう・・・指揮官不在の中、救助に向かった喜多見幸太(鈴木亮平)とレスキューの千住幹生(要潤)が患者とともに地下駐車場に閉じ込められた! 時間が経つにつれ酸素は薄れ、患者の容体は悪化・・・絶体絶命のピンチに、命を救うため危険な賭けに挑む!

◆放送情報
日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』
毎週日曜21:00からTBS系で放送。
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」で配信。
また、Paraviオリジナルストーリー「TOKYO MER~走らない緊急救命室~」が独占配信中!