読書が昔から好きなこどもだった。算数も科学も理科も、テストの回答は1つしかなくて。

いつもまちがいだらけだった。でも、国語には自由があった。考え方の数だけ正解があり、そこには無限の自由があるように感じていたから。想像することで飛び立てる自分だけの世界が昔から好きだった。本は、知識を広げるだけじゃなく、孤独に寄り添い、人を抱きしめてくれる。誰かと感動を分かち合うきっかけだって作ってくれる。

本は、自分と世界を、他人と自分を、つないでくれる架け橋だ。だから図書館が大好きだ。

小説『図書館戦争』は「阪急電車」、「植物図鑑」、「県庁おもてなし課」などのヒット作を多数有する作者の有川浩(有川ひろ)氏が「図書館の自由に関する宣言」を目にしたことが執筆のきっかけとなった作品だ。

その宣言が"最もありえない状況"で使われたらどうなるかを考えて、この唯一無二の物語が誕生した。岡田准一と榮倉奈々の夢の共演により、国家によるメディアの検閲が正当化されている時代に、"本を読む自由"を守るため立ち上がった「図書隊」隊員の奮闘を描かれている。2人のほか、田中圭、福士蒼汰、栗山千明、西田尚美、橋本じゅん、土屋太鳳、児玉清、石坂浩二らが出演。豪華キャストと壮大なスケールのこの物語が夏休みをもりあげてくれるはず!

ざっくりいうとこんなお話だ。

メディア良化法(名のメディアを規制する法律が施行されていて、「公序良俗を乱し、人権を侵害する表現」が取り締まりの対象)が定められたから30年後の日本が舞台。この法律により言論弾圧や言論統制が日常化したことであらゆる情報が制限されている。しかも、メディア良化隊は強権的な力を持っており、執行を妨害するものに対して武力による制圧もいとわない。この物語はそんな閉塞的な世界から"本と表現の自由"を守る図書館の防衛を目的とした武装組織図書隊との、戦いが描かれいく。

タイトルのイメージから"ミリタリーもの"のイメージが強い本作ですが、実は胸キュン要素の強い王道エンターテインメントです。本記事ではこの夏イチオシの図書館戦争「ここすご!」ポイントを紹介します。

【ここがすごい!】図書館での超絶アクションというギャップ

ギャップの数だけ、瞼の裏に残る映像体験となるのは言うまでもないですよね。
図書館という、静寂の代名詞のような場所で武装や爆発や銃撃戦が起きるさま。

このアンビバレントな構図は、映像としての面白さで惹きつけます。

子供が守られるべき学校で学生たちが担任教師に死に至るまで狙われる『悪の教典』、主人公がモーテルという安らぎの場所に到着し一安心した瞬間に襲われるあのヒッチコックの名作『サイコ』、スピルバーグ監督×トム・ハンクス主演の傑作"ビザを失い空港を家にして暮らす男"の実話をもとにした物語『ターミナル』なども記憶に残る場所ギャップと出会えますが、この『図書館戦争』はその名の通り、厳粛な図書館で銃撃戦が勃発しますが残酷すぎないところもスマート。お子様とも鑑賞できるはず。

【ここがすごい!】ミリタリー要素×ベタあまな胸キュン要素の緩急

『図書館戦争』というタイトルですが、メインテーマは恋愛です。アクション、ムネキュン、アクション、ムネキュン。そんなジェットコースターとメリーゴーランドが併設した、すなわち遊園地のような体感。なので、鑑賞サイドは心の緩急を最大限の振り幅で味わうことができます。

「あたぽん」(女性の頭を男性がポンっと愛情を持ってなでること)の魅力が溢れた映画との呼声も高いですが、特にここはみどころです!

あたぽんのシーンにおいて佐藤信介監督もインタビューで話していましたが、指の動きにより注目してほしいです。あたぽん1つにおいてもなでかたに表情があり、指の仕草が細やかなんです(みたらきっとわかります)。何気ない仕草も男女が心を通わせていく描写1つとっても丁寧で好感。

2021080808_tosyokan_03.jpg

【ここがすごい!】コロナ時代における未来予測的視点

昨年、多くの劇場や映画館が緊急事態宣言により一時休業を余儀なくされる時期があった。

未知のウイルスの侵略によりやむを得なかった状況はあれど、国家による芸術の制限がなされたことも事実だ。今、この作品を鑑賞することでより"自分ごと"できる可能性が高い。そして、なんといっても、この世界をありえないと思える世界線でいられたことに平和というものの有り難さを感じずにはいられない。

また、2020年7月時点、政府や国の機関に検閲されることなくインターネットを使用できる国は全体の3分の1ほどだそう。しかもミシガン大学の研究チームによるとこの検閲の数字は増加傾向との話も。日本は現在、この環境とは無縁かもしれないけれど、戦時中は書物の検閲だって執り行われていたのも事実だ。現実との問題を照らし合わせてみるのも気付きを得られるであろう。

【ここがすごい!】豊かなメッセージ性に触れて心を養える

「本を焼く国は いずれ人を焼く」といった衝撃的なワードも登場する物語ですが、この作品はとにかく人間の本質に迫る部分が多い。たとえば人にレッテルをはろうとしている人間は、いつだって誰かの"優位にたとうとしている人間"かもしれないとこの作品で學び、人間の本質が色濃く表現されている。でもそんな人間の醜悪な面だけじゃなく本の自由のために戦う図書隊たちの絆は「人に頼ってもいいこと、助け合いの精神を持つこと」といった素晴らしさや、人間としてのたしなみにも触れることができる。

【ここがすごい!】クリエイター視点で気付くおもしろさ

監督は『GANTZ』2部作、『アイアムアヒーロー』、『キングダム』などの大ヒットで今やアクション映画界において日本を代表する存在となった佐藤信介。佐藤氏の出世作となったともいえる本作。

それに加え、脚本は『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』などドラマなどを中心にヒット作を連発してきた野木亜紀子。アクション×ムネキュンの化学反応が、絶妙バランスで成立するわけなんです。

それにしても今思い起こすとヒット間違いなしの最強コンビで製作されていたんですよね・・・!

いかがでしたでしょうか?
「本を守るために戦う」という特殊な世界観。図書隊の雄姿。
でも、そんなアクション要素だけでなくそこに描かれている不器用な恋愛模様は、初恋を思い出すように甘酢っぱくて切なくて、夏にぴったりな良質なエンタメです。
私のようにこの独特な世界観にハマってしまう方もきっとたくさんいるはず︎!

2021080808_tosyokan_02.jpg

Paraviでは現在、映画『図書館戦争』(2013年)、ドラマ『図書館戦争 ブック・オブ・メモリーズ(ドラマ特別企画)』(2015年)、そして映画『図書館戦争 THE LAST MISSION』(2015年)の全シリーズが配信中。

溶けるような夏こそ、涼しげで聡明な空気に包まれた"図書館の風"を感じてほしい。
そして、そんな図書館の平和を守るために夏と同じくらいに比例するほどアツい登場人物たち。

「図書館戦争」シリーズ実写版の3タイトルをぜひこの機会に、イッキ見して楽しんでいただければと思います。

(文=映画ソムリエ・東紗友美)

2021080808_tosyokan_04.jpeg

(C)"Library Wars"Movie Project
(C)TBS
(C)"Library Wars-LM-"Movie Project