日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)第4話では、誰一人欠けても助けられなかった総力戦の"命のリレー"が描かれた。
救命医療のプロフェッショナル集団MER(Mobile Emergency Room)が向かったのは、移植用の心臓の搬送車両が遭遇したトンネル崩落事故現場。瓦礫の下に埋れてしまった小山医師(高橋ユウ)が、チーフドクターの喜多見幸太(鈴木亮平)とレスキュー隊の千住(要潤)に運送中の心臓を差し出しながら言うのだ。
「これも命です。私が預かっている大切な命なんです」
「ドナーの方やご遺族からお預かりしたんです。患者さんが、汐里ちゃんが待ってるんです」
ようやく臓器提供のドナーが見つかったその奇跡的な確率と、トンネル崩落事故という"あってはならない"事故の発生が重なる悲劇。"待つ側"にも"待たせる側"にも、命がけの仕事を"命じる側"にも"命じられる側"にも、とにかくそれぞれの持ち場で役目を全うし、命を絶やさぬように必死にバトンを繋ごうとする連帯感、その決意と覚悟、そして何より互いの"信頼"が問われる極限状態だ。
本作が痛快なのは、使命感や情熱だけでなく、それぞれの配置で各々が自身の持ち得る力を発揮し、先回りをして事前に予期できるリスクや可能性を全て潰していくところにもあるだろう。
今回も、搬送患者の中に白衣の男性がいることに気づき、臓器移植ネットワークの関係者だと気づく喜多見の察知力、洞察力。そして、すぐさま臓器移植手術に立ち合っている比奈(中条あやみ)に状況共有し、小山医師の情報収集を命じる予見力。移植手術の執刀医である千晶(仲里依紗)が比奈を事故現場に向かわせ、さらに小山医師と同じ血液型の輸血用の血液を用意する冷静な判断も流石だ。ここでファインプレーだったのは比奈がMER用のインカムを千晶に託したことだ。これによって、心臓を待つ側の臓器移植の手術室と、心臓を送り出す事故現場が繋がれたのだ。
臓器移植手術を受けた側も、また心臓を託した側の小山医師も心肺停止に陥るが、その際に喜多見と千晶それぞれが掛ける"頑張れ、頑張れ"と言う心からの応援、命へのエールに心打たれた。最善を尽くした後、最後の最後はやはり本人の、人間の"生きようとする力"への全幅の信頼と尊重しか頼れるものはないのかもしれないと思わされた。
いくらでも諦められる、今引き返しても誰にも咎められることなどない、そんな材料が揃っている中で打ち勝つべきは自分自身や自分の中の常識、限界であり、最後の砦だからこその"諦めの悪さ"がそのまま生き死にに直結するのだと思い知らされる。
第4話は仲里依紗演じる千晶のプロフェッショナリズムが光る回でもあった。ここのところ『恋する母たち』(TBS系)でのエリート弁護士の妻で専業主婦役や、『桜の塔』(テレビ朝日系)でのお嬢様役など自由奔放で天真爛漫な役どころや悪女的な一面もあるキャラクターが続いていた仲にとって、ここまで"デキる女"役、スペシャリスト役を演じたのは初めてではないだろうか。研修医との接し方や、患者家族との距離感を決して間違えない責任感の強さが滲む誠実な職業人、医師像が浮かび上がる。それでいてもちろん冷酷ではなく、命に対してどこまでも必死で温かい。
時折覗かせる喜多見とのナイスコンビネーションや"きっと素敵な夫婦だったんだろうな"と思わせるような絶妙な距離感を見せてくれている。彼らが惹かれ合った理由も暗に描かれた今話だった。
こんなに息ピッタリの2人の間に何があったのだろうか。また次週は、医系技官の音羽尚(賀来賢人)の今のスタンスを問われる回となりそうだ。
放送終了後に映し出されるテロップにもある通り「すべての医療従事者の皆さんへ 最大の敬意とエールをこめて」という気持ちを胸に、彼らの奮闘をこの目に焼き付けたい。
(文:佳香(かこ)/イラスト:たけだあや)
【第5話(8月1日[日]放送)あらすじ】
喜多見幸太(鈴木亮平)の妹・喜多見涼香(佐藤栞里)と妊婦を乗せたエレベーターが火災により急停止!乗り合わせた音羽尚(賀来賢人)と大物政治家・天沼夕源(桂文珍)と共に閉じ込められてしまう。煙が充満し酸欠状態のエレベーターで妊婦の容態が急変!
出動したTOKYO MERには、政治家・天沼の救出を優先するよう命令が下る。炎上間近のエレベーターで音羽に迫られる究極の選択・・・。母子の命を救うため、喜多見が下した決断とは!?
TOKYO MERのメンバーたちが決死の救出劇に挑む!
◆放送情報
日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』
毎週日曜21:00からTBS系で放送。
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」で配信。
また、Paraviオリジナルストーリー「TOKYO MER~走らない緊急救命室~」が独占配信中!
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