2021年になってからというもの、『俺の家の話』、『リコカツ』と連続して、これまでにないホームドラマ/ラブコメディを通して「新時代の家族の形」を問い続けてきたTBS金曜ドラマが新たに打ち出したのは、SNSで「家族を募集」することで、ひとつ屋根の下に集った人々の物語だった。重岡大毅(ジャニーズWEST)主演、『山田太郎ものがたり』(TBS)のマギーが脚本を手掛ける『#家族募集します』(TBS)である。

まだ観ていない、これから観るという人には、ぜひ、傍らに涙を拭く用のタオルを置いて観ることをお勧めする。1話終盤の、重岡大毅、仲野太賀、木村文乃という演技巧者たちによる「奇跡」としか言いようがないアンサンブルに、筆者は2度観て2度とも鼻を詰まらせて呼吸困難気味になるほど泣いている。

特に素晴らしいのは主人公・赤城俊平役の重岡である。映画『溺れるナイフ』、『知らなくていいコト』(日本テレビ)、『悲熊』(NHK)等、彼が演じてきた役はいつも、観客/視聴者に、簡単には忘れることができないような強烈な印象を与える。それは、彼のどんな役柄にもリアリティを持たせることができる手腕と、びっくりするほど明るい笑顔の中に内包された様々な葛藤や悲哀を表現することができる能力ゆえだろう。

俊平は、3カ月前、妻・みどり(山本美月)に先立たれ、シングルファーザーになった。小さな絵本出版社に勤務しながら、5歳の息子・陽(佐藤遙灯)の子育てに奮闘する毎日だ。そんな俊平は、自身が働くお好み焼き屋「にじや」の2階を使ってシェアハウスをしようと試みるかつての学童保育仲間・小山内蒼介(仲野太賀)と偶然再会する。さらに俊平の事情を知った蒼介は、「にじや」を、学童保育とシェアハウスを掛け合わせた、困った時の「みんなのとなりの家」、喜びも大変さも皆でシェアする「みんなんち」にしようと、SNSに「#家族募集します」と投稿。それを見て、切羽詰まった小学校教師のシングルマザー、桃田礼(木村文乃)が娘・雫(宮崎莉里沙)を連れて「にじや」にやってくる。第1話は、そんな彼らの、戸惑いながらも始まる交流を描いていた。

とにかく素晴らしかったのは、「にじや」の屋上で交わされる、前述した3人の場面である。それまでの彼らの会話に立ち込めるのはある種の「頑なさ」だ。皆、「こうしなければ/ああしなければ/こうしたい」と、それぞれの理想を掲げ、そこに固執しすぎている。笑顔を絶やさず、「明るく楽しく」を信条に、周りから「妻に先立たれた気の毒なシングルファーザー」と過度に同情の目で見つめられることにうんざりしながら、幾分か頑張り過ぎているように見える俊平。「シングルだから/女一人だから」と思われるのが嫌で、極力人に頼ることなく子育てをしなければならないと心に誓い、「うちの子より自分の子を優先したと保護者に思われたくない」と教員の仕事も一切の妥協を許さない礼。そんな2人を太陽のように包み込む明るさと、眩しすぎるぐらいの理想を語る過度なお節介さの一方で、「俺はあの家で家族をやり直す」という台詞から、何らかの過去を抱えていそうな蒼介。

頑なに一人で頑張ろうとしていた俊平と礼に向けた、蒼介の暑苦しいけど真摯な言葉自体が2人を動かすのではなく、その言葉を「相談に乗ってあげたいっていう自己満足」とバッサリ言い切る礼の、その後の言葉の奥に隠された少しの本音に、俊平の心が動かされるのがとてもよかった。その瞬間、俊平の肩の力がスッと抜けて、口元にはそれまでとは少し違う微笑みが浮かんでいる。

それから俊平が蒼介とキャッチボールをしながら始めた「笑ってほしい話」には、全てが詰まっていた。シングルファーザーの大変さも、妻を亡くした悲しみも、この先への不安も。俊平がかつて言ったように、彼らが「楽しくやっている」のは確かなのだ。決して彼らの日常は辛くて大変なことばかりで、それを「楽しい」で押し隠しているわけではない。それでもその「笑ってほしい話」の中にはたくさんの、それまで言葉にすることさえできなかった感情が渦巻いていた。

「一緒に泣いて、一緒に笑って、一人の気持ちを皆で一緒にシェアするのが家族」という、ともすれば嘘っぽくも感じさせるほどの理想の形に、「ありのままの日常を語る」というとてもシンプルで現実的な方法で、いとも簡単に辿りついた3人。礼がもたらしたちょっとの共感と、蒼介提案のベタなキャッチボール。笑おうとして話を聞いていたのに気づいたら皆で泣いている、一切の力みも誇張も存在しないかのように力の抜けた3人の最後の表情。初回にして完璧なシークェンスを目の当たりにしてしまった。

そんな彼らを優しく見守る月は、まるで山本美月演じる俊平の妻・みどりのようで。石橋蓮司演じる「にじや」の店主・銀治が作る、皆で囲むまん丸なお好み焼きの味は「幸せの味」で。俊平が全力疾走する自転車「スーパーエキゾチック号」の車輪がくるくると弧を描く。「円」尽くしの世界で繰り広げられる、心温まる絶品ホームドラマが、金曜日の夜の私たちの心を温かくしてくれそうだ。

(文・藤原奈緒/イラスト・まつもとりえこ)

【第2話(7月16日[金]放送)あらすじ】

蒼介(仲野太賀)がSNSに投稿した「#家族募集」を見てにじやにシングルマザーの横瀬めいく(岸井ゆきの)とその息子の大地(三浦綺羅)が転がり込んできた。早速の同居者登場に慌てた蒼介は、俊平(重岡大毅)と礼(木村文乃)をにじやに緊急招集!みんなで一緒に夕食を食べることに。

しかし、シンガーソングライターを目指しているというめいくは、超自由奔放!あまりにマイペースな態度に蒼介はイライラが止まらない。俊平は、「ここに来たのには何か事情があるのでは」と蒼介をなだめるが、蒼介のめいくに対する不信感は募るばかり・・・

そんな中、めいくが大地をにじやに残し、突然の失踪!?銀治(石橋蓮司)によると、ギターケースを担いでひとり出かけて行ったという・・・しばらくしても戻らないめいくに対し、蒼介は「子どもを捨てた!」と怒りを露わにする。俊平は、いつになく苛立っている蒼介と、何か訳ありな様子のめいくが気になって・・・

◆番組情報
『#家族募集します』
毎週金曜22:00からTBS系で放送中。
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」でも配信。