ラジオパーソナリティーでコラムニスト、ジェーン・スーのエッセイを原作に据え、吉田羊×國村隼のW主演により家族の愛憎物語を描いた『生きるとか死ぬとか父親とか』(テレビ東京ほか)の第6回が、5月14日(金)に放送された。

父・哲也(國村)からの電話で、いとこに孫が生まれたため、お祝いにレストランに招待するのはどうかと相談されるトキコ(吉田)。伯母(三林京子)とその娘でいとこのエミコ(渡辺真起子)と食事会をすることになり、その食事代を持つというトキコだが、それに対し哲也は、では自分はご祝儀"袋"を二人分用意する、といつも通りのちゃっかりした提案をする。

思わず「袋だけ?中身は?」「家賃払わないよ」と怒ってしまうトキコだが、結局、1万円ずつ哲也が用意し、差額はトキコが補填するオチに。さらに、父子ともに新札を準備するのを忘れ、ATMで何度も出し入れする裏技でなんとか新札を揃えるというドタバタぶりが描かれた。
ここまでは相変わらずの父子の微笑ましいやりとりだった。

しかし、伯母とエミコに、両親の新婚時代の話を聞かせてくれと頼んだところから、トキコは自分が知らなかった母親の話を耳にする。それはエミコが泊まりに来た際に、トキコの家で夜中に見た光景。トキコの母が泣きながら伯母と話してた、というものだ。

実はトキコが生まれる前、母は何度も流産していた。しかし、子どもが欲しい気持ちを哲也は理解してくれなかったことなどを聞くうち、トキコは自分がまだ幼くて、なにもわからなかった頃に、母が流産について語っていた記憶を思い出す。

そして、今ならわかる母の辛さに思いを馳せ、「自分が生まれる前の母を癒せないことが、私には猛烈にもどかしい」と嘆くのだった。こうして、親戚により知らなかった母の過去の話を聞くことで、トキコの中にまた別の感情が生まれる。

それは、父について綴ってきたエッセイについて、「ありのままを書くつもりでいたのに(中略)自らエディットした物語に酔っていた」「それは、父を美化したかったからではなく、私自身が自分の人生を肯定したかったからかもしれない」という思いだ。「美談とは、成り上がるものではない。安く成り下がったものが美談なのだ」というフレーズに、思わずドキリとする。

妻を泣かせてきた哲也だが、その言動を見るうち、なんだかんだ魅力的な人なのだろうと解釈していた。また、その調子の良さを結局許しているトキコの姿や、二人の「現在」を微笑ましく見ていた。いつの間にかこのドラマを観ている自分自身も、家族のあり方を、わかりやすい「美談」に落とし込もうとしていたのだろう。

そして、合間に挟み込まれる、若き日のトキコ(松岡茉優)の不穏な表情が引っかかりつつも、「なんとなく良い関係になっている現在の父子」フィルターで無意識に覆っていたことにも、改めて気づかされる。

こうした家族の「美談」は、たぶんどこの家にもある。些細な複雑な感情から目を反らしたり、フタをしてきた家族ならではの愛憎が生々しく浮かび上がる回だった。

(文・田幸和歌子/イラスト・月野くみ)

【第7話(5月21日[金]放送)あらすじ】
トキコ(吉田羊)は友人の北野(中村優子)とミナミ(石橋けい)の3人で、いつものように楽しくお酒を飲んでいた。しかし突然、ミナミが泣きながらトイレに駆け込んでしまった。なんとミナミの夫が不倫をしているというのだ。落ち込むミナミを前にラジオの人生相談のようにアドバイスをするトキコだったが、それを拒絶されてしまう。そしてその様子をどこか冷めた目で見る北野。仲の良い女友達のそれぞれの人生観がぶつかり合うことに・・・。

◆放送情報
番組名:ドラマ24『生きるとか死ぬとか父親とか』
放送日時:毎週金曜深夜0:12~
放送局:テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:00から放送
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信