ラジオパーソナリティーでコラムニスト、ジェーン・スーのエッセイを原作に据え、吉田羊×國村隼のW主演で家族の愛憎物語を描いた『生きるとか死ぬとか父親とか』(テレビ東京ほか)の第5回が、5月7日(金)に放送された。
今回は、トキコ(吉田)と父・哲也(國村)が二人で動物園に行く話。中年の娘と高齢の父二人で行く動物園はなかなかシュールで乙(おつ)な気もするが、事の発端は父について書いているエッセイがネタ切れしてしまったこと。そして自身のラジオ番組で紹介したお便りの流れで、東(田中みな実)に「子ども時代をやり直してみては」と提案されたためだ。
しかし、あの父と二人でほのぼの動物園見物になるとは思えない。予想通り、待ち合わせ場所にタクシーで現れ、高額な支払いをトキコに押し付ける気ままぶり。しかも、チケットを受け取ると一人でさっさと先に行き、しょっぱなからはぐれてしまう。
なんとか幼い頃の思い出を聞き出そうとするトキコだが、語られるのは「買ったばかりの新車で、トキコが酔って吐き、エアコンをつける度にしばらく臭かった」という古傷を抉るような思い出したくもない話ばかり。
仲の良し悪しにかかわらず、父と娘のお出かけって、どうしてこうも噛み合わない瞬間があるんだろう。その後、ペリカンを見つめる哲也の姿に、期待を抱きつつ「ペリカンに何か思い出でもあるの?」と尋ねるが、返ってきたのは「ペリカンって1羽いくらするか知ってる?」という意外な言葉だった。
そして、動物の値段が書かれた雑誌の切り抜きを広げ、次々に動物を見ては値段を言いまくる哲也。思わずトキコも値段が気になり始め、切り抜きを見て「オカピが3000万!」と声をあげるが、その声に反応した小学生らしき女の子とその父親が「オカピ、3000万だって」「そんなの知らなくてもいいでしょ」と話すのを聞き、冷静になる。
お目当ての感動エピソードが得られるわけもなく、疲れた哲也からは「もういいでしょ、出ようよ」「お腹がすきました」と文句が。園内の食事スペースを探していると、哲也は「沼田ンとこでとんかつを食べるってのはどう?」と言い出すのだった。
沼田は哲也の古くからの友人で、今はとんかつ屋を切り盛りしている。「あいつだったら昔のこと、よく覚えてるかもしれないよ」という説得により、しぶしぶ店を訪れるが・・・。
驚いたことに、沼田は哲也からトキコの仕事を聞き、ラジオもエッセイも熱心にチェックしてくれていた。話題はトキコの知らなかった父の仕事の話から、トキコのとあるクセの話に。実はこのクセは、幼い頃のトキコに対する父の愛情深くも神経質なお世話によるものだったことが判明。思いがけないかたちでトキコと父の間の「欠損」が少しだけ埋まる気がしたのだった。歳をとった親に何かしてあげたいという思いがうまくハマらず、空回りした経験がある人は多いだろう。まして中年娘と父とが出かけると、かなりの確率で珍道中になる気がする。
そんな中、チラリと語られた不穏な思い出も含めて、自分の知らなかった父の姿と、自分と父のつながりを確認した第5話。まだまだ埋まっていない欠損はたくさんありそうだが、歳を重ねた父娘ならではの噛み合わないやりとりは、可笑しくも愛おしい。
(文・田幸和歌子/イラスト・月野くみ)
【第6話(5月14日[金]放送)あらすじ】
トキコ(吉田羊)と父(國村隼)は親戚の結婚・出産祝いに出かけることになった。亡くなった母の姉である伯母(三林京子)とその娘(渡辺真起子)との食事会だが、持っていくご祝儀に新札を用意するのを忘れてしまったトキコは、銀行のATMでキレイなお札を手に入れるべく奮闘。なんとかご祝儀を用意し駆けつけたお祝いの席だが、そこでトキコは伯母たちから、母のつらい過去とそのときの父の振る舞いについて聞かされるのだった・・・。
◆放送情報
番組名:ドラマ24『生きるとか死ぬとか父親とか』
放送日時:毎週金曜深夜0:12~
放送局:テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:00から放送
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信
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