――出演のお話を頂いた時のお気持ちは?
え~と・・・正直に言っていいですか? 「年下とラブラブするんだ」と思いました(笑)。私はこれまでトーン低めの作品が多くて、今作のような"ザッツ・恋愛します!"という作品はあまりなかったので(笑)。
――台本を読んだ時の感想は?
テンポの良さが第一印象としてありました。主に4人のキャラクターが登場するんですが、みんなそれぞれどういう生活を送っているのかがイメージできるキャラクターの描き方がすごく魅力的だなと思って。なので、希恵をどう演じるかあまく深く考えたり、自分で構築することをせずに、現場に行ったらどうにかなるかなっていうか。自分的にはポジティブな意味で、現場では黒羽さん演じる健太とのシーンが多かったので、そこにゆだねようという風に思えた部分がありました。
希恵に関しては、すごく不器用ですが、私的には愛すべきキャラクター。気が強い部分もあるんですけど、誰よりも繊細。そこが、年下の健太と一緒にいることで感化されて、ナチュラルな自分に還る行程も、すごく可愛らしいなと思いました。台本を読んで、まず希恵が好きになりました。
――ご自身が、演じられる希恵と似ている部分、違うなと思う部分は?
人と接する時の入口として自分を張ってしまう、自分を強く見せようとしてしまうところは共通点としてあるかもしれません。でも、希恵は旦那さんに対して恋心なく結婚してはいるものの、抜かりなく家事をして旦那さんに対して尽くせてしまう。周りから「こういう夫婦に見られたい」という世間体を気にする部分は、意外に感じましたね。私は傍から見てどうこうというのはあまり気にならないので、そこに関しては、希恵はもっと違うベクトルを持っているんだなと思いました。
――演じる際に意識されたことは?
タイトル通り、希恵は離婚を機にハイになる。とにかくテンションが普段の1つ上にあるんだということを意識していました。「日常だったらそのテンションで言わないよな」というセリフを序盤で言っていたんですが、テンションを維持しながら、しかも健太との会話は会話として成立さなければいけないという絶妙なバランスを取るのが大変でした。でも、黒羽さんもその感覚を受け取って返してくれる方だったので、現場に入ってみて、初日に希恵の雰囲気はつかめた感じはありました。
初日から夫の不倫相手の家に怒鳴りこんでいくシーンだったんですけど、そこで喉がガサガサになるぐらい大きな声を出したんですが、そうやって一回全部出し切って撮影に入れたのは、地味なポイントなんですけど、自分の中で大きかったです。これまでは喜怒哀楽をおさえた役が多かったので、すごく心地が良かったんですよね。喜怒哀楽をはっきり出して、相手の目を見てすべての意思を伝えるということがあまりなかったので。毎日が新鮮で楽しかったですし、新境地だなという感覚がありました。撮影中に、監督がパソコンを持ってきて「ここのセリフ、こんなふうにやってほしい」と言われたので、「はい、わかりました」とモノマネもやったことも。思いのほか、現場も盛り上がってました(笑)。
――希恵のハイテンションな行動は、ご自身から見てどう映りましたか?
人様の家に乗り込んでしかも同居してしまうこと自体がパラレルワールドみたいな感じ(笑)。でも、ちょっと流されてみることの魅力は感じました。私は結構、こうなったらこうなるから、これはしないほうがいいでしょ、と先読みをし過ぎてしまうところがあるんです。希恵も乗り込んだらどうなるかは考えていなかったと思うんですけど、その結果、新しい自分に出会って身軽になるという経験ができた。そう考えると、頭で理論的に考えすぎずに本能に身を任せてなるがままに委ねることもいいのかもしれないなと、本当に思いました。
――共演の黒羽さんの印象はいかがでしたか?
黒羽さんは・・・最初、全然目を見て話してくれなくて、子犬のような人だなと思っていました(苦笑)。後々、黒羽さんに聞いたら、「怖かったんです、桜井さんが」って言われて。黒羽さんは「セリフを噛んだら怒られるんじゃないか」「僕が何かやらかしたら機嫌が悪くなるんじゃないか」とビクビクしていたみたい。でも、監督が健太に演出をした時も一生懸命求められている事に向き合おうとする姿勢が本当にステキで。真っ直ぐで素直な方で。すごくしっかりされている部分もあり、奥行きのある方だなと思いましたね。
――そんなお二人の緊張感が、ほぐれたきっかけはあったんですか?
ありました。セットに観葉植物がたくさんあったので、それを見て色々お話している時に、私も観葉植物が好きで家にあるということをポロッといったら、「どこかいい店知りませんか?」と黒羽さんに聞かれて。それでお店を2~3店紹介したら、撮影期間中に黒羽さんもネットで買っていましたね。「僕、これ買ったんです!」と言って、写真を見せていただいたんです。そのことがきっかけで、いろいろと話すようになりましたね。
――撮影で印象に残っていることは?
う~ん、難しいなぁ。あ! ・・・でもこれ黒羽さんに怒られるかな(苦笑)。黒羽さんと手をつないだり、触れ合ったりするシーンが多かったんですけど、ビックリするぐらい手足が冷たかったんです。「大丈夫?」って聞いた時もあったぐらい。そういう一つ一つのシーンをあたり前に慣れてしまわない黒羽さんの居方がすごく印象的でした。だから、私もそこはグッと気持ちも入りましたし、純度が高かったし、大事なシーンでもあったので、そこは印象に残っていますね。
――そんな"年下とのラブラブ"、演じてみていかがでしたか?
実際、黒羽さんと一緒にお芝居をしていると、ご自身の空気なのか、健太として出された空気なのか・・・妙に落ち着いていて、どっしりされているところもあって。だからこそ、健太の希恵に対しての優しいセリフだったりに対して、『甘える』ような仕草も自然にできました。ステキな時間でしたね(笑)。あの年ならではのまっすぐさが本当に魅力的。こういう恋愛もありなのかなと思いました。人を好きになるのに年齢は関係ないんだなと改めて思うことができました。
――希恵と健太は正反対のタイプに見えますが、そんな2人が惹かれ合っていく様子も気になります。桜井さんが思う2人の関係の見どころは?
希恵と健太って会話が噛み合っていないんです、わりと(苦笑)。でも、健太と生活をしていくなかで、希恵の心の固まってしまっていた部分がどんどん柔らかくなって。それは、健太がすごく温かく、こちらに意識をさせないぐらいの受身の態勢を取ってくれているからなんです。希恵も健太も、お互いと一緒に過ごす時間の中で面白いぐらいに何かが溶けていくんです。人間って想像し得ない人と出会うと、こういう化学変化が起こるんだというところは、是非見てほしいですね。
(取材・文/齊藤恵)
◆放送情報
Paraviオリジナルストーリー「リコハイ!!」
毎週金曜夜22:00からTBS系で放送中のドラマ『リコカツ』地上波放送後に独占配信中。
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