吉田羊×國村隼のW主演により、自由奔放な父と、それに振り回される中年の娘の家族の愛憎物語を描く『生きるとか死ぬとか父親とか』(テレビ東京ほか)の第2回が、4月16日(金)に放送された。
原作は、ラジオパーソナリティーでコラムニスト、作詞家と、多彩な顔を持つ「独身のカリスマ」ジェーン・スーのエッセイ。第二話でトッキーこと蒲原トキコ(吉田)のラジオ番組『トッキーとヒトトキ』に寄せられた一つ目のお便りは、これまたリアルな「あるある」のお悩みだ。
34歳独身、事務職、貯金が趣味の女性が仕事一筋でやってきて、3年ほど前に都内にマンションを買った。老後も独りで生きていくことを考えると、持ち家より賃貸の方が安心できると思ったからという理由だ。しかし最近、3歳下の彼氏ができて、彼は自力でマンションを買ったとは全く思っていない様子であることから、自分で購入したことを打ち明けるべきか悩んでいるという。
実際、彼のコンプレックスを刺激する可能性はあるが、それに対するトキコの答えは「しれっと言ってみたらどうですか? 真実を伝えてギクシャクするなら、それまでだし」。確かに、ウン千万円の買い物ができるような勇気ある女性にとって、大抵のことは些末なことにも思える。ちなみに、番組の男性スタッフたちが交わす本音が「ラッキーだと思う」「でも、男のメンツが」と二分しているのも面白い。
今回、トキコは父・哲也(國村)の提案により、叔母(松金よね子)の見舞いに行くことになった。父と叔母は自己主張が激しい者同士で折り合いが良くないらしく「ケンカしないでよ」と釘を刺すトキコ。華道の師範でバリバリ働き、遊び、自力でマンションを買い、自分が入居するケアハウスまで用意していた叔母。そんな叔母の「外の空気が吸いたい」という願いをかなえるため、スーパーでの買い物に付き合うことにするが「せっかくだからオシャレしちゃう?」とトキコは提案する。
大好きだったオレンジの口紅をつけ、綺麗にメイクし、オシャレをしてあげるのは、「自力で動けない叔母のために、外出をエンターテインメントにしたかったから」。 スーパーでマニュキュアを見ていた叔母のために足湯をし、ペディキュアも塗ってあげるトキコであった。
ここで気になるのは、叔母の部屋にいた女性の姿だ。第一話に続いて、若き頃のトキコ(松岡茉優)の記憶にある父と、母の好きな白いカラーの花を捨て、毒々しい真っ赤な花を飾る女性の姿とが蘇ってくる。いったいどんな出来事があったのか。
トキコはモヤモヤするが、それからほどなく叔母は亡くなった。故人が生前好きだったものを・・・と口紅とマニュキュアを棺に入れてほしいと懇願するトキコだが、葬儀屋は「全てお断り」の一点張。それを見ていたた父は感情的に言う。
「何でもかんでも杓子定規にやりゃあいいってもんじゃないでしょ」「人の気持ちなんてものはさ(中略)簡単に割り切れるもんじゃないんだよ。そんなこともわかんないで葬儀屋さんやってんの?」
叔母と折り合いが悪く、第一印象を「嫌な奴だと思った」と面と向かって言われるのに、見舞いを提案する父。自分がボケたのではないかと心配する叔母にすかさず「俺もねえ、最近物忘れが・・・」とフォローを入れる父。トキコの亡き叔母への思いを汲んで、葬儀屋に怒りを見せる父。随所に見える優しさが、女性とのトラブルにつながっていたのだろうかと、なんだか重い気持ちになる。
番組の最後に紹介された、19歳からのお悩み相談で「遺品=ゴミ」と表現していることに、感情的になり、言葉を詰まらせるトキコ。
「他人から見ればゴミに見えるものでも、遺族にとっては大切な記憶。使い道はないけど、ゴミじゃないってものが世の中にはあるんですよ。人間には捨てられない記憶があるんです」
母を亡くしてからずいぶん経つはずなのに、トキコはきっとまだ母の死を乗り越えられていない。でも、そもそも大事な人の「死」は、そういうものなのかもしれない。
(文・田幸和歌子/イラスト・月野くみ)
【第3話(4月23日[金]放送)あらすじ】
父(國村隼)から、食物アレルギーの疑いがあると一報を受けたトキコ(吉田羊)は、病院に連れていくことに。しかし、診断結果は何事もなく、せっかく来たからという理由で突然「顔のシミを取りたい」と言い出す父。呆れたトキコは学生時代からの女友達である北野(中村優子)とミナミ(石橋けい)に愚痴を言う。いまや「男性の美容」は普通のものだと頭ではわかっているはずのトキコだったが・・・。
◆放送情報
番組名:ドラマ24『生きるとか死ぬとか父親とか』
放送日時:毎週金曜深夜0:12~
放送局:テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:00から放送
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信
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