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――役作りについて、どのような点に工夫されましたか?

最初は、スーさんのビジュアルや喋り方を完全に真似しようとしていたのですが、あまりにもスーさんのスペックが高すぎて挫折したんです(笑)。でも、ただ真似するだけだったら、本物のラジオを聞いたり、本を読めばいいってことに気付いて、考えを改めました。

スーさんは理知的で利発な方ですけれども、私は感情的で愚鈍な人間・・・。対極な位置にいる私だからこそやる意味のようなものがある気がして、それを元に役作りを進めていきました。

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――役作りで苦労した点

スーさんは呼吸をするようにお喋りをする方ですので それに倣って淀みなく喋ることを意識しました。スーさんは潤沢な語彙量の中から、優しく、厳しく、的確な言葉を選ばれる印象だったので、ラジオシーンのアドリブで繋ぐ部分も、適当なことは言えないな、という緊張感はありました。

ラジオシーンは、膨大なセリフ量で、一発でうまくいった時は現場で声が上がることも。大変な思いをした場面は、その分思い入れもひとしおです。ラジオのリアルな雰囲気を出すために、田中みな実ちゃんとカメラが回っていない間もアドリブでずっと喋っていたので、そういった空気感も楽しんでいただけるのではないでしょうか?

――本作の魅力

憎しみは、いつだって愛情と背中合わせです。家族ならなおさら。原作において、父親らしく振る舞って欲しかった、という娘から父への切実な心の叫びは、スーさんらしいユーモラスさでつい面白く読んでしまうけれど、生身で演じるドラマでは、それを真正面から、子供心を失わず表現したいと思いました。親子として、当然寄せられるはずの「甘え」の不在・・・本当は大好きなお父さまに甘え切れない日々を送ってきたスーさんの思いを、トキコという別人格に重ねて,思いきり曝け出しています。家族の正解なんてないし、普通もないけど願いはある。視聴者の皆様には,家族だからこその愛しくて憎らしい瞬間を、「あるある!」と笑ったり頷いたりしながら楽しんでいただけたらと。

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――トキコを演じていて感じることなど

私自身も4年前に母を亡くしており、生前してあげられなかったことの後悔や、 現在の父に対する思いなど、もちろんドラマとは異なる部分がありつつも、トキコを演じながら自分の人生を生きているような感覚になります。自分の気持ちを整理していくような感じですね。リアルな自分の感情を重ねることで、作品のテーマが噓なく伝わって、ご覧になる方それぞれの家族との向き合いの手助けになればと思います。

――『トッキーとヒトトキ』を進行するアナウンサー役の田中さんについて

かわいくて美人で、可憐でスタイルも良くて、聡明で優しくて・・・非の打ち所がない人でした。元アナウンサーとしてラジオの現場は誰よりも分かっているので、細かい小道具の使い方や、ラジオ内の言い回しについてもアドバイスをいただきましたね。集中力と演技力で、素敵な表情を毎回見せてくださいました。とても心強いパートナーです。

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――ラジオについての思い出

中学生の頃なのですが、聞いていたラジオのロケが家の近くで行われていることに気づいて、急いで駆けつけ、インタビューしてもらいました。その時のテーマが「最近あった嬉しかったこと」で、当時の私は、好きな人に告白してOKの返事をもらいました!と報告しました。懐かしいですね。

――岩崎う大さん(かもめんたる)、岩井勇気さん(ハライチ)平子祐希さん(アルコ&ピース)も出演しますが、お笑い芸人が役者を務めることについて思うことなど

お笑い芸人さんということで、呼吸や間の使い方がとても上手でいらっしゃいました。特別打ち合わせすることもなく、こちらの呼吸を読んでくださったのが印象的です。シーン自体はそんなに長くはないのですが、アドリブに強い芸人さんならではの強みが存分に生かされたものになっていると思います。

――父親・蒲原哲也について

「これはモテるわ」と思いましたね(笑)。品があって優雅で優しく、ユーモアもある。國村さんが元来お持ちの「人たらし」な部分も極上に共鳴しています。いくつになっても自由で邪気の無い男性は、面倒だけれど魅力的ですよね。

――國村隼さんについて

柳のように掴みどころのない部分は、スーさんのお父様ととてもよく似ているなと思います。國村さんご自身は関西ご出身ということで、お話には必ずオチがあるし、いつも明るくお喋りをしてくださって、本当に楽しい方でした。

現場ではいつも口笛を吹いて登場されるのですが、これがかなりの腕前で。春の撮影だったからなのか、童謡の「春よ来い」を吹かれていたこともありました(笑)

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――國村さんと親子を演じて

撮影を経て、自然と親子のようになっていきました。1話のファミリーレストランのシーンでは、打ち合わせもしていないのに同じタイミングでため息をついたり、窓の外を見たり。シンクロする瞬間がいくつもあって、こうやって家族になっていくのかなと感じました。

――吉田さんにとっての家族とは?

一番大切で、一番怖い人たちです。私を決して見捨てない存在だからこそ、この人たちを悲しませるようなことはできない。胸を張れるような生き方をしたい、と思わせてくれる存在です。

◆放送情報
番組名:ドラマ24『生きるとか死ぬとか父親とか』
放送日時:毎週金曜深夜0:12~
放送局:テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:00から放送
(テレビ大阪は1話・2話が深夜0:05からの放送)
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信