画面に映るまでに、想像もできないほどの道のりがある。人知れず泣いて、悔しい思いをして、何度も逃げ出したくなって。だけど、それでも歯を食いしばって、踏ん張って、前だけを見て歩いてきたから、この人たちの芝居には滋味がある。

これまでたくさん笑わせてくれたドラマ24『バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~』(テレビ東京系)。最終回で感じたことは、人生とはしわくちゃの台本だということでした。

何者でもない日々を経て、きっといつか何者にも代えがたい存在になる

シリーズ第1作から、元祖バイプレイヤーズと共に『バイプレイヤーズ』に出演してきたジャスミン(北香那)。だけど、こんなにもジャスミンにスポットが当たったことはなかったかもしれません。そういう意味では、この『バイプレイヤーズ』の名脇役はジャスミン。黒いスーツを身にまとった可愛いおじさんの横には、いつもジャスミンの姿がありました。

バイプレウッドの100日間を、常にそばで見守り続けてきたジャスミン。いい作品をつくろうと奮闘する役者たちの一生懸命さに感化され、いつしか自分もその場に立ちたいと思うように。だけど、憧れだけでは務まらないのが役者の世界。与えられる役は、名もない生徒Aや生徒Bのような「バイプレイヤー」とも呼べない役ばかり。一生懸命演技をしたつもりでも、モニターをチェックしたら映っているのは自分の左腕だけ。

先日、今や売れっ子となったある名バイレブレイヤーにインタビューをしましたが、その人も昔は名もないエキストラ同然の役をひたすらやり続ける時期があったと語っていました。誰にも見つけてもらえない。誰にも認めてもらえない。撮影の終わりは、いつも悔しい想いをこらえて電車に揺られる。そんな何者でもない日々を経て、他の何者にも代えがたい存在になる。それが、役者という仕事。

そう考えると、私たちが普段テレビでケタケタと笑わせてもらっているあの人やあの人にも、どれだけの苦労があったのでしょうか。夢に負けそうなジャスミンに、画面には映らない何千何万もの役者たちの光と影が浮かんでくるようでした。

そして、そんなジャスミンに朗らかに笑いかける田口トモロヲさん、松重豊さん、光石研さん、遠藤憲一さん。彼らが優しいのは、ジャスミンの苦労がわかるから。最初から華々しい主役の道ばかりを歩んできたわけではない。アップを抜かれるまでに、何年もの時間がかかった人もいるでしょう。だから、悔しい想いをしている人の気持ちがわかる。思い通りにいかない人生の歯がゆさを知っている。

私たち視聴者の多くもまた名もなき脇役たちです。もちろん、自分の人生の主役は自分。それは、揺るぎありません。けれど、それはとは別の意味で、すべての人に輝かしい主役の座が用意されているわけではないもまた事実。誰かがスポットを当ててくれるわけではない。常にカメラがアップを抜いてくれるわけでもない。それでも、私たちは頑張って生きている。そんな人生と、バイプレイヤーのみなさんがリンクするから、この100日間、彼ら彼女らの奮闘に泣いたり笑ったりしてきたのだと気づきました。

『バイプレイヤーズ』は、永遠です!

開局記念番組で、台詞のある役を任されたジャスミン。けれど、緊張とプレッシャーでうまくはいきませんでした。きっと、ジャスミンの台本にはびっしりと書き込みがあったはず。役のバックボーンに想像力を膨らませ、緻密に演技プランを立て、何度も何度も練習をした。台詞はほんの数行かもしれない。だけど、きっとジャスミンの台本は練習のしすぎでしわくちゃになっていた気がします。

それでも、うまくいかないのが人生。そして、それでもあきらめるわけにはいかないのが人生です。しわくちゃの台本を抱え、新しいページに自分だけの台詞を書き加えて生きていく。まだジャスミンは、役者の卵。だけど、あきらめずにもがき続ければ、いつかバイプレイヤーという称号がふさわしい日が来るかもしれません。それまでやり続ける。やりたいのなら。

こんな撮影が困難なご時世で、それでもドラマが今日もつくり続けられるのだって、突きつめれば、やりたいからなんでしょう。キャストも、スタッフも、やりたいから、やる。そして、視聴者も観たいから、観る。今日も、明日も。

これからも関わるすべての人の健康と安全を守りながら、楽しいドラマがつくられ続けることを、いち視聴者として願っています。そして、あのシャトルバスの中でちょっと嫌な役を演じてくれた尾上寛之さんと玉置玲央さん。こういう嫌われ役がいるからドラマも盛り上がる。ふたりもまた大切な名脇役です。その好演に、リスペクトを。

そして、まるで映写機にフィルムをかけたように甦った第1作からの名場面を見て、またシーズン1から見たくなりました。ありがとう。遠藤憲一さん、大杉漣さん、田口トモロヲさん、寺島進さん、松重豊さん、光石研さん。『バイプレイヤーズ』は、永遠です!

(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)

◆配信情報
ドラマ24『バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~』
動画配信サービス「Paravi」で第1シリーズ、第2シリーズと共に全話配信中。