清野とおるの体験談を描いた同名漫画を原作とし、杉野遥亮が本人役で主演を務めるドラマ『東京怪奇酒』(テレビ東京)の最終回である第6話が3月26日に放送された。杉野が毎回さまざまなゲストから心霊話を聞き、心霊スポットに行って酒を飲むという「怪奇酒」。

前回、杉野に半ば強引についていくかたちで、初怪奇酒を体験した『直ちゃんは小学三年生』の共演者・岡山天音。しかし、怖いだけで、肝心の「混ざる」感覚は全くわからなかったうえ、霊と楽しく会話している杉野の危険な様子を見て、すっかり引いてしまっていた。

目もあまり合わせず、話をそらそうとする岡山だが、見ると、杉野の顔が青ざめている。岡山が「顔色悪いよ」と言うと、杉野が「なんで? 怪奇酒始めてからメチャクチャ調子良いけど?」と言うその顔は、眉がつりあがり、眼はらんらんと輝いていた。『牡丹灯籠』に出てくる人みたいな、悪霊に憑りつかれている顔だ。

実際、杉野は「怪奇酒」の刺激に慣れてしまっていた。海外ホラー映画主演オファーがきて、怖がりを克服するために始めた「怪奇酒」だったのに、今はホラー映画の台本を読んでも「ヌルイな。こんなんで怖がる人、いるんすかね?」。

もはや相当の刺激でなければ「混ざる」感覚が味わえなくなっている杉野が、次に訪ねたのは、事故物件サイト「大島てる」の管理人でおなじみの大島てるの事務所だった。

そこで「心霊スポット」と「事故物件」の違いなどを説明されたが、あまり興味を示さない。杉野が教えてほしいのは、「全フロアいわくつきの事故物件の聖地」の情報だ。

「あそこは危険ですよ。生きて帰れる保証はできません」と言われても、聞く耳持たずに去った杉野の様子に「彼、まだまだ伸びますよ」と隣に座っていたサングラスの男性が呟く。胡散臭いと思ったら、『月刊ムー』の三上丈晴編集長だ。最後までゲストの人選が素敵だ。

さて、鉢巻を巻いて出陣しようとする杉野は物件を目の前に「モノが違う」と、"違いがわかる男"感を出してくる。

1階は家賃のことで揉めて殺された大家さん、2階はその大家さんを殺して山奥で自殺した犯人の部屋があり、成仏できずにさまよっているかもしれないという。

杉野は、1階ではビールと「いなりずし」(揚げは金運の袋、お米は豊かさの象徴から)を、2階では日本酒と「鮭は生まれた川に必ず戻ってくる=犯人さんもここに戻ってこられますように」という意味で「鮭の南蛮漬け」を楽しむ。

酒に合わせてつまみを変えるだけでなく、霊のことを考えたセレクト。しかも、怪奇酒を楽しむうちに料理の腕すら上がっていそうなところがなかなか心憎い。

そして3階には、酔った勢いで喧嘩をし、バットで殴り殺した犯人と被害者という「仲良しだった中年男性」の霊がいたが、杉野は「男の友情」という日本酒を用意していた。

さらに、危険なハシゴ酒はここで終わらない。最後は屋上で、住人が自ら命を絶った「事故物件の聖地のはじまりの場所」である。

「ここはケタが違う。地獄の、規格外の・・・」。屋上に広がるのは、狭い場所にひしめきあって酒を呑む人、人、人じゃない、霊、霊、霊・・・の光景だ。

しかし、"地獄"のはずなのに、どこか桃源郷のようで、ちょっぴり懐かしい。これはコロナ禍で失われた「花見の風景」そのものじゃないか。「怖くて怖くてまるで生きた心地がしない、けれど生きた心地がしなさすぎて逆に生きてると思える」と言う杉野は、思う存分「混ざる~!」感覚を味わったまま屋上で倒れる。

そして、事務所から当分の間、怪奇酒は禁止されることになったが、ニヤリを笑って空を見上げて言うのだ。「でも、またいつか・・・」

私たちが日常で再び酒を飲んでバカ騒ぎする「地獄のよう花見の狂騒」も、当分お預けだが、またいつの日か会えるのだろうか・・・。

(文・田幸和歌子/イラスト・たけだあや)

◆配信情報
『東京怪奇酒』
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