おじさまと猫の心温まる日々を描いた桜井海のコミックを原作とした、草刈正雄主演のドラマ『おじさまと猫』最終回の12話が3月24日に放送された。神田冬樹(草刈)が、たまたま鍵が開いていた窓から外に出て迷子になってしまったふくまる(声:神木隆之介)と、ようやく再会できた前回。

「帰って来たよー、って。ただいまー」。ふくまるを抱え、ちょっとテレ臭そうに玄関先で言う冬樹。思えばいつもふくまるは留守番で、外出した機会といえば、ふくまるの姉・マリンの住むピアニスト・日比野奏(平山浩行)の家に遊びに行ったときや、去勢手術に行ったときくらい。一緒に自宅に帰れるというのは冬樹にとっても、ふくまるにとっても、特別な感慨があるのだろう。

一緒にビラ配りをしてくれた親友・小林(升毅)や、ペットショップの店員・佐藤(武田玲奈)、音楽教室の同僚・森山(小関裕太)にも、ふくまるが見つかったことを報告。すると、森山からは「今日は俺のライブに来ちゃダメですよ」という優しいメッセージがくる。

ふくまるとずっと一緒にいたい、しかし、森山のライブにも行きたい。考えた末に冬樹はふくまるに言う。「ごめんね、お留守番できるかい?」。そしてふくまるも「パパさん必ず戻ってくるって、ふくまる知ってるにゃ」と安心して送り出すのだ。これは以前の1人と1匹の関係では、たぶんなかった展開である。すでに彼らは共依存ではなく、互いへの信頼感と、仲間とのつながりで結ばれているのだろう。

妻を失ってからステージに立てなくなり、「ピアニスト・神田冬樹」じゃなくなった冬樹は、人前に出るのが怖くなっていた。しかし、森山は「神田冬樹」を知らずに、ただの同僚として慕ってくれた。そこに冬樹は救われ、「私は私でいい」と思えた。だからこそ、冬樹は、義理や付き合いではなく、そんな素敵な森山の「ファン」としてライブに行きたかったのだ。

しかし、ライブ会場に到着すると、演奏は始まっておらず、ステージ上にいたのは森山だけ。森山は懸命にメンバーたちに連絡をとるが、「お前のそういう真面目なところが嫌いなんだよ」と言われる。「才能がないのに、プロになりたいと本気で思っている」森山がメンバーたちにとっては疎ましかったのだ。

なんとか一人で歌おうとする森山。しかし、声が出ない。客席からのブーイングはますます激しくなる。しかし、そこで突然ステージに上がったのが、冬樹だった。

自身はステージに立てなくなったばかりか、コンサート会場にすら行けなくなっていたのに・・・。森山も、客席の小林も、また冬樹が倒れるのではないかとハラハラするが、日比野も加わり、いよいよ演奏へ。

「大丈夫だよ、ふくまる、私は強い」

自分自身を奮い立たせるための冬樹の言葉は、迷子で何日も歩き続けたふくまるが倒れ、必死に立ち上がったときの言葉と重なる。自分自身のためにできなかったことでも、大事な人を守るためなら、できることがあるのだ。思えばこれは、妻がいた頃の気持ちとも同じである。

森山を救うつもりが、本当に救われたのは冬樹のほうだった。そしてラストには、冬樹のコンサートのポスターが。その膝には、ふくまるの姿があった。

守りたい大事な存在があることは、何より大きな力になる――そんな当たり前だが、忘れがちなことを、人と人がなかなか会えないコロナ禍に改めて思い出させてくれるドラマだった。

(文・田幸和歌子/イラスト・月野くみ)

◆番組情報
ドラマParavi『おじさまと猫』
動画配信サービス「Paravi」で全話配信中。