寺さんが、寺さんが帰ってきたー! おじさんたちの再会に胸熱くなったドラマ24『バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~』(テレビ東京系/毎週金曜深夜0:12~)。第11話は、シーズン1から応援してきたファンのみなさんにとっては特別な回になりました。

またみんなと一緒に戦いたい。脚本を超えた、寺島進の名台詞

これまで多彩なゲストを迎え、くだらなくもいとおしいドタバタ劇を演じてきた『バイプレイヤーズ』ですが、シーズン1から観続けてきた方の中にはこう思っていた方もいるのではないでしょうか。やっぱりあのおじさん6人のゆるゆるとしたやりとりが見たい、と。

シーズン1から一貫している黒いスーツのおじさんたちが悠然と歩くだけのタイトルバック。ただ、その人数に関してはシーズンごとに変化がありました。シーズン1では6人だったのが、シーズン2では5人になり、シーズン3では4人に。登場人物そのものは一気に増え賑やかになったものの、4人に減ってしまった元祖バイプレイヤーズのみなさんの姿がどこか寂しげに見えたものです。

それが、元祖バイプレイヤーズのひとり・寺島進さんが、このタイミングでついにカムバック。シーズン1以来、実に4年ぶりの復活です。う〜、いつか戻ってきてくれると信じていたよ〜! だって、最近、田口トモロヲさんと光石研さんと一緒にCMやってたもん〜! あんなの、ドラマの枠を超えた伏線としか思えない。

フィリピンでよくわからないことになっていた遠藤憲一さんも戻ってきて、元祖バイプレイヤーズの出演シーンも一気に増加。そうそう、これが『バイプレイヤーズ』なんですよ!と床をバンバン叩きたくなりました。

5人の再会シーンは、挨拶なしテストなしの一発撮りだったとか。台詞も、どこまでが台本でどこからがアドリブなのかよくわからないくらいナチュラルです。笑って崩れ落ちそうになりながら寺さんと握手をする光石さんには演技以上の何かが溢れ出ている気がするし、「こっちはスケジュールで断ったくせに」「俺もいろいろちょっとあってさ」「こっちもいろいろあるんだよ」というやりとりに、台詞だけでは言い表せない背景が垣間見えてグッと来ます。

「またみんなとね、一緒になんかこう戦いたいのよ、俺は本当は」

その一言で、寺さんも『アウトローの森』に参加することに。5人で歩く後ろ姿。そこで交わされた会話は、想像ですがほとんどアドリブだったのではないでしょうか。寺さんからは「松重さん、それ地毛ですか」というツッコミが。そうそう、よく考えたらシーズン1のときの松重豊さんはまだ黒髪でした。「地毛地毛。お互い様だよ〜」という松重さんの返しが流れた歳月の重みを感じさせます。

不自然なくらい敢えて長回しにしていたり、画面の色味、手持ちカメラの質感がドキュメンタリー性を強調していて、第2話以来の登板となるメイン監督・松居大悟が5人の再会をどれだけ大切に思っていたか、その愛情が浮き上がってくるような演出でした。あ〜、今思い返しても瞼が熱くなるわ・・・。

こんなおじさんになりたい。そう思わせる最高のおじさんたち

そこから『アウトローの森』ラストシーンの撮影へ。流れてくるのは、10-FEETの『ヒトリノセカイ』。この耳馴染みのあるメロディ。そう、シーズン1のオープニングテーマです。この演出はズルすぎる・・・!

グリーンバックで繰り広げられるおじさんたちの抗争劇。その様子が楽しそうで楽しそうで。松重さんは表情がキレッキレだし、エンケンさんはバナナ持ってるし、「マシンガンのトモロヲ」はファンキーだし、光石さんはなぜかボウガンだし、寺さんのグラサン姿はカッコよすぎるし。わちゃわちゃふざけ倒しているだけなのに、なんか涙が出てきそうになる。てか、銃弾を避けてる光石さんの顔、絶妙にイラっと来るわ〜。最高です。

間違いなくあのシーンには大杉漣さんもいましたよね。きっと漣さんなら最高にはっちゃけて暴れまわっていたはず。そんな光景が脳裏に浮かぶ、至高の名シーンでした。

五十肩にも負けず、なんとか撮影を終えたおじさんたちはビールで乾杯。その顔はみんな疲れているけど、とってもイキイキとしています。『バイプレイヤーズ』を観ていると、自分もこんなおじさんになりたいなと思うのです。シブくてカッコよくて、ユーモアと遊び心があって、ちょっとダメなところやエッチなところもあるけど、仕事に一生懸命で愛情深い。そんなおじさんたちの姿に笑いや元気をもらって、心がすっと伸びやかになるのです。

そして最後は、寺さんとお別れ。

「また今度暴れようね」「そうね、必ず」

あそこで交わした約束は、ドラマの中だけの台詞じゃないはず。エンケンさんの「声ちょっと震えてるけど何? ちょっと感動しちゃってるの?」というイジリも、台詞というより、その場で自然と出た言葉みたいで、それを照れ臭そうに誤魔化す寺さんにいとしさがこみ上げました。

「またやれるよ、いつかね」「そうそうそう」「やれるんじゃない?」「てか、まだ続くんだ」

そんなのらりくらりとした会話も、きっとみんなが『バイプレイヤーズ』という作品を愛している証拠。まだシーズン3も残っていますが、シーズン4の発表を今から心待ちにしています! もちろん5人揃ってね!

ということで、めちゃくちゃ最終回みたいなノリになりましたが、最終回は次回です。最後はおじさんたちと一緒にずっと『バイプレイヤーズ』を支えてきたジャスミン(北香那)にスポットが当たるよう。そして、ゲストは宮沢りえさん。超大物女優が『バイプレイヤーズ』の世界でどんな化学反応を起こすのか。楽しみでなりません!

(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)

【最終話(3月26日[金]放送)あらすじ】
テレビ東京57周年 新春ドラマスペシャル「冤罪」の撮影現場では、主演の宮沢りえをはじめ、志田未来、稲葉友が、一人の新人役者の到着を待っていた。その新人役者とはまさかのあの人だった。役者としてのデビュー戦を果たす背景には、田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一たちが大きく関わっていて・・・!?100名のバイプレイヤーが紡いだ100日間の結末とは?シリーズを締めくくる感動の最終回!

◆放送情報
ドラマ24『バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~』
最終話は深夜0:27からテレビ東京ほかで
※テレビ大阪のみ翌週月曜深夜0:12から放送
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」でも配信。
第1シリーズ、第2シリーズも全話配信中。