杉野遥亮が本人役で主演を務めるドラマ『東京怪奇酒』(テレビ東京)の第2話が2月26日に放送された。原作は、清野とおるの体験談を描いた漫画『東京怪奇酒』(KADOKAWA)で、監督・プロデュースは、『山田孝之の東京都北区赤羽』をプロデュースした太田勇。ホラーが苦手な杉野が原作と同様に毎回さまざまなゲストから心霊話を聞き、心霊スポットに行って酒を飲む「怪奇酒」を体験するという内容である。

今回のゲストは、作家で怪談・オカルト研究家の吉田悠軌氏(良い人選!)。ラジオ収録後、「怖すぎでしょ」「俺、もうしないですよ、怪奇酒」とマネージャーに話していると、物陰から不意に吉田氏が「怪奇酒のお話ですか。もし近場がよろしいんでしたら~」などと語り始める。さすがオカルト研究家。血の気が全く感じられない冷気を帯びた佇まいながら、不意打ちで現れるところも、グイグイくるノリノリ感も完璧だ。

吉田氏が紹介してくれたのは、S区の"猫塚"。「この世のものとは思えないほどかわい~い猫のような鳴き声が聞こえるそうなんです」という。ちょっとした抵抗を見せるも「わかりました、行きます」・・・数分前に「もうしない」と宣言したばかりなのに、圧にすぐ負ける杉野は、やっぱり「怪奇酒の素質がある」(第1話清野発言)。

吉田氏のアドバイスに従い、お供え物として猫が喜びそうな食べ物やオモチャを購入し、いざ猫塚へ。

周辺には「猫を探してます」という平成3年に失踪した猫探しの張り紙が、電柱や壁など、そこここにある。つい最近貼ったと思しきものもあり「30年前に失踪した猫、まだこの熱量で探してるってことですか・・・」と怯える杉野。確かに凄まじい執念だ。

とはいえ、ビニール袋に入れたオモチャなどをジャラジャラ鳴らしながら軽く入っていく杉野。いきなり怨念のこもった立ち札にビビり、蹴ってしまい、「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」。大胆さと超怖がりとが同居しているところも、「怪奇酒の素質」がありすぎることは、素人目にもよくわかる。

お供え物を捧げ猫塚に手を合わせ、「あの、今日はよろしくお願いします」と言う杉野。一見正座しているようだが、つま先を立てて足の甲は地面についていないところに、いつでも逃げ出せるようにという警戒心が見て取れる。芸が細かいなあ。

しかし、そんな警戒心も酒を一口飲んでしまうと、簡単に瓦解する。饒舌に、見事な食レポならぬ"酒レポ"を脳内で行い、「猫ちゃんだけなら可愛いか?」「ここらへんにもいたりして」――杉野は急に気が大きくなって、指をクネクネ動かしながらエア猫を探る余裕を見せる。すぐ調子にのる杉野の姿が、同枠の前作『直ちゃんは小学三年生』の直ちゃんと重なってくる。直ちゃんが成人したら、間違いなくこういう大人になるだろう。

そこへ、ペットボトルがひとりでに草むらに転がってきて、「どういうこと?」と怯える杉野。しかし、すぐさま「どうせならお会いしたいです、猫ちゃん様! そのために杉野持ってまいりました!」とオモチャを取り出し、「にゃ~お」と呼ぶと、可愛い猫の声が。ますます調子にのり、目隠しをして、声のする方を追いまわす。もちろん片手の缶は離さず、チビチビ飲みながらである。ああ、酒呑みってこうだよなぁ・・・いつからか自分とも重なって見えてくる。

そして最終的にはキラキラの目で「生きてる~~! 俺、まだ生きてる~~!」と叫びながら走り出すのだ。

超怖がりと相反する大胆さという「素質」が、心霊スポットと酒との出会うことで、 "覚醒"することが繰り返された第二話。もはや戦隊モノの変身を観るように鮮やかだった。

(文・田幸和歌子/イラスト・たけだあや)

【第3話(3月5日[金]放送)あらすじ】

「事故物件住みます芸人」の松原タニシに勧められて杉野が向かったのは、孤独死した男性の住むアパート。マジメな人だったが、遺品整理にきた娘にHな本のコレクションが見られてしまったという。そのためか成仏できず、未だにその場所にいるという。杉野が怪奇酒をはじめても、お父さんの霊は出てこない。しかし杉野がHな本を見せると、「カーン」という金属音が・・・。Hな本をめくるとさらに激しい金属音が!お父さんの霊が現れたのだった。

◆放送情報
『東京怪奇酒』
毎週金曜深夜0:52からテレビ東京で放送開始
動画配信サービス「Paravi」では1週間前に先行配信。