もう全然わからないので、森下先生、早く答えを教えてください〜! と、完全にお手上げ状態の日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』(TBS系/毎週日曜21:00~)。脚本家・森下佳子の巧みな作劇術に視聴者が翻弄されっぱなしの第6話。今回浮上した謎をもとに、今後の展開を考察する。

※以下、<>内は入れ替わった後の人物名

【1】東朔也とは何者か

今回最大の謎は、最後に彩子<日高>(綾瀬はるか)が警察のデータベースから検索した「東朔也」という名前。まるで祈るように「死亡届検索」にその名を打ち込んだ彩子<日高>。その表情から察するに、このとき初めて彩子<日高>は東朔也の生死を確認したように見える。はたして日高(高橋一生)と東朔也はどういう関係なのだろうか。

ひとまず今回東朔也に関して明らかになったのは、自殺した十和田元(田口浩正)のアパートから『暗闇の清掃人 φ』を持ち出したのが「東」という人間であること。この「東」は東朔也と見ていいだろう。そしておそらく奄美大島の民宿で日高とおぼしき男性が名乗っていた名前も東朔也と思われる。「明日3時。学校のそばの歩道橋で待ってます。」という手紙を日高に出したのも東朔也なのだろう。つまり、すべての元凶は、東朔也か。

朔也の「朔」は「新月」を意味する。一方、望月彩子の「望月」とは「満月」のことだ。日高にとって正反対の意味の名を持つ東朔也と望月彩子。この対称性はどんな意味を持つのだろうか。

【2】十和田元はなぜ自殺したのか

戸田一希(橋本真実)からジムの顧客情報を買い取ったのは「クウシュウゴウ」と名乗る者だった。河原(北村一輝)の捜査により「クウシュウゴウ」と登録された口座の持ち主は、十和田元であることが判明した。しかし、免許証の住所に張り込んだところ、現在居住しているのはまったくの別人。十和田元は、推定ではあるが2018年の11月下旬頃に死亡していたという。

時系列を整理しよう。通帳の記録によると、十和田元が戸田一希に報酬を振り込んだのは平成30年10月22日。西暦に変換すると2018年。十和田元が自殺をする直前だ。ちなみに最初の被害者である一ノ瀬(小山かつひろ)が殺害されたのは、河原の資料を見たところ2018年12月16日。つまり、十和田が自殺した直後となる。

これらのヒントをもとに推理すると、戸田から顧客情報を仕入れた十和田が、その直後自殺。あるいは何者かによって殺害された。そして、そこから『暗闇の清掃人 φ』と顧客情報が持ち出され、第一の殺人が実行された。すべての発端は2018年からということになる。ちなみに日高がボストンから帰国したのは2017年。その1年後に、次々と布石が打たれはじめている恰好だ。

ちょっと引っかかるのが、なぜ第一の殺人である一ノ瀬と、第二の殺人である田所(井上肇)でこんなにブランクがあるのかだ。その後の、第三の殺人、第四の殺人が立て続けに起きているのに対し、黒幕が2年強、潜伏していたことがどうにも腑に落ちない。手口が同じだけであって、実は一ノ瀬と田所以降の殺人は実行犯が別という説も十分考えられる。

【3】彩子<日高>は何の目的で久米家に忍び込んだのか

今回最大のミスリードとなったのが、彩子<日高>の久米家での振る舞いだ。あらかじめ久米家の夫人・朝子(梅沢昌代)と接触し、久米家に潜入するきっかけを手にし、清掃業者と身分を偽り、侵入経路を確保した。その上で、当主の久米正彦(菅田俊)を殺害したように見えたが、実は意識を失わせただけで、正彦も朝子も無事だった。

これ自体は、犯行に及んでいないことは早い段階から推測できた。久米の「久」を「九」に当てるのは無理があるし、これまでの被害者はいずれも1人暮らし。また、朝子夫人とのやりとりを見ても、正彦が悪人のようには見えなかった。一連の殺人事件のターゲットには当てはまらない。

ただ、彩子<日高>がなぜそんなことをしたのか、目的に関してはまるで読めない。最初は黒幕に目が向かないようにするための囮行為かと思ったが、その後、歩道橋の「9」の字を見て「来なかった。何かあった」と驚いているのを見て、別の考えが浮かんだ。彩子<日高>もまた黒幕の尻尾を掴むために、現場に潜んでいたのではないかという説だ。

そもそも計画前夜、細い月を見上げて「会えますかね、明日こそ」と彩子<日高>はつぶやいた。「明日こそ」と言う以上、何度も彩子<日高>は黒幕と接触する機会を逃していたと推測できる。それはつまり、前回の四方(小笠原治夫)であり、そのさらに前の田所の犯行現場のことを指している。日高が深夜に田所の自宅を訪ねたのは、犯行に及ぶためではなく、黒幕に会うためだったのだ。

その理由が犯行をサポートするためなのか、阻止するためなのかはまだわからない。けれど、希望的観測だけで言えば、日高は真犯人を止めたいのだ。そのために、危険な橋を渡ってでも、毎回黒幕に接触を試みようとしている。それほど日高にとって黒幕は大切な存在なのかもしれない。

【4】ミスターXは「エックス」と読むのか、それとも・・・?

陸(柄本佑)の活躍により、日高がマンションで隠し持っていた漫画『暗闇の清掃人 φ』が日高<彩子>のもとへ来た。内容を確認すると、清掃会社に勤める青年φがミスターXの指令に従い、法では裁けない悪人たちを殺害していくストーリーらしい。しかも、その指令は紙に書かれた数字で来るという。まさに、今の彩子<日高>と同じ状況だ。

ではここで気になるのが、当然、ミスターXは何者かということ。数学におけるXは未知数。黒幕らしいネーミングだ。しかし、同時に「X(エックス)」ではなく「Ⅹ(テン)」と読むのではという穿った見方もできる。ちなみにそうなると、主要人物で「10」を名前に冠するのは、十和田の他に、五十嵐公平(野間口徹)、十久河広明(吉見一豊)の2人。考えにくいが、この2人が何かしら関わっている可能性もゼロではないのだ。

現状としては、ミスターX=東朔也という説が最有力だが、東朔也の正体は完全に霧の中。推理をする材料さえ見つからない。ただ、このドラマ、もしかしたら犯人を当てるミステリーではないのかもしれないという気もする。すでに出ている登場人物の中から黒幕を当てるのではなく、日高を取り巻く謎を一緒に解明していくタイプのお話なら、まだ東朔也が登場していないこともあり得る。

ただ、それだと視聴者もガックリ来るだろうから、今すでに登場しているキャラクターの中から怪しい人を挙げると、前回のコラム同様、湯浅和男(迫田孝也)が本命だ。第1話で、湯浅は特殊清掃のバイトをしていた。つまり、自殺した十和田のアパートから漫画を持ち出せるチャンスがあったのは、湯浅だ。そこから何かが動きはじめたとしたら・・・? 年齢的にも、落書きを依頼した40代の男という情報とマッチする。

いずれにせよ十和田が自殺した前後に何かが起きたと思われる。謎が謎呼ぶこのミステリーははたしてどんな真実に辿り着くのだろうか。

(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)

【第6話(2月28日[日]放送)あらすじ】
※<>内は入れ替わった後の人物名

彩子<日高>(綾瀬はるか)は身元不明の遺体の中から「東朔也」という人物を探していた。日高<彩子>(高橋一生)と河原(北村一輝)もその名前にたどり着くが、事件とのつながりは見えてこない。一体何者なのか――。

陸(柄本佑)からの情報を手掛かりに、殺人の共犯かもしれない「クウシュウゴウ」が現れるのを待って、歩道橋で張り込む日高<彩子>。しかし、やって来たのは彩子<日高>で・・・。

ある日、日高<彩子>のもとに、息子が記憶喪失になったと聞いて心配した父・満(木場勝己)から連絡が入る。妹の優菜(岸井ゆきの)と実家へ行った日高<彩子>は、満から日高に関する意外な過去を聞かされるのだった。

そしてその頃、誰にも発見されていない新たな犠牲者が――。

◆放送情報
日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』
毎週日曜21:00よりTBS系で放送
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」でも配信。