もう謎が多すぎて僕の脳みそではついていけなくなってきた! 回を重ねるごとに、謎が深まる日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』(TBS系/毎週日曜21:00~)。第5話でも気になるポイントが続出した。改めて今回見えてきた情報を整理し、今後の展開を考察したい。

【1】日高は、かつて女性だったのか?

彩子(綾瀬はるか)と入れ替わった直後から、妙に化粧に手慣れていたり、不自然なことの多かった日高(高橋一生)。闇カジノに潜入捜査するべく、車中で着替えを行う彩子<日高>に日高<彩子>も「前から思ってたんだけど、あんた、化粧とか好きよね」と疑問をぶつけていた。

彩子と入れ替わる以前から、日高は別の女性とすでに入れ替わっていたのか。あるいは過去に入れ替わりを経験し、その相手が女性だったのか。現時点ではどちらか分からないが、少なくとも女性として生活した経験があるという説はかなり有力になってきた。

【2】彩子<日高>は、陸に想いを寄せはじめているのか?

入れ替わりを知った陸は、日高<彩子>のアドバイスに従い、家から出た。しかし、早く彩子を元の体に戻したいという想いから、陸は危険を承知の上で再び彩子<日高>と暮らすマンションへと舞い戻る。そのときの彩子<日高>のリアクションは、まるで恋をする女性のようだった。部屋に明かりがついているのを見るや息急き駆け出し、陸を見つめる表情は、頬が真っ赤に染まり、目は少し潤んでさえいた。

そういえば、前回、ホテルのスパで日高<彩子>と落ち合ったときも、富樫(馬場徹)と一度来たことがあると明かしていた。それを聞いて日高<彩子>は同性に対して恋愛感情を持っているのかと疑っていたが、ずっと以前から日高の体には別の女性の魂が宿っていたなら、まったく別の意味になる。この発言の真意は何だろうか。

【3】彩子<日高>は、誰を監視しているのか?

彩子<日高>は公園で小型望遠鏡を使ってオレンジ色の屋根の邸宅を監視していた。あれは、誰の家なのだろうか。外観から考えても、それなりの資産家が住んでいるようだし、次のターゲットの家と見るのが妥当か。

では、そこで気になるのが、彩子<日高>の足元に落ちていた「TORHINORM」という薬だ。これは誰が捨てたものか。彩子<日高>がつぶやいた「時間がないですね」とはどういう意味か。

薬と「時間がない」という言葉を単純に結びつけると、この薬を服用している人物は何かしら重度の病を患っていて、余命いくばくもないと考えられる。そして、余命という言葉で思い出されるのが、陸のバイト仲間の湯浅和男(迫田孝也)だ。「実は俺、余命3ヶ月のハナモゲラでよ」という言葉。本人はすぐに冗談だと打ち消したが、これが事実とすれば、薬の持ち主が湯浅である可能性は高い。

これまでどのように物語に関わってくるのか謎だった湯浅だが、今回、2つの事実が判明した。1つは、「三枝」という名義でアパートを借りていること。そしてもう1つは面倒な父親に振り回され、人生を台無しにされたことだ。

すでに数字が本作の重要な手がかりであることは証明されている。この「三枝」にも3の数字が入っている。はたして名義を貸した「三枝」とは何者なのか。これまで金銭的に苦労した湯浅が、汚いやり口で私腹を肥やした人間に憎悪を抱いている可能性も十分ある。ならば、彩子<日高>より先にあの公園に下見に来ていたのは、湯浅なのではないだろうか。

【4】戸田一希の正体は?

3年前の横浜法務省官僚殺人事件であがった容疑者の目撃証言が、捜査を撹乱させるための虚偽である可能性が浮上した。目撃者の名前は、戸田一希。しかも調べると、かつての勤務先で顧客の個人情報を売買していたという。

一見すると男名のようだが、第5話のラストで河原(北村一輝)が声をかけたのは、女性だった。なぜ戸田一希は顧客情報の売買に手を染めたのか。それが、横浜法務省官僚殺人事件と何の関連があるのか。これはおそらく次回には明かされることだろう。

ちなみにこれまでの被害者である田所仁志(井上肇)も一ノ瀬正造(小山かつひろ)も独身で1人暮らしだった。四方忠良(小笠原治夫)も妻子はいるが、妻は入院中で、息子はすでに独立している。黒幕は1人暮らしの資産家だけを計画的に狙っているようだが、これは単純に犯行を目撃されにくいという理由だけでいいのだろうか。

【5】日高に手紙を出したのは誰か?

そして今回、最も大きくクローズアップされたのが、彩子<日高>がコインロッカーに隠し持っていた手紙だ。

「明日3時。学校のそばの歩道橋で待ってます。」

筆跡から考えて、日高が小学生時代にもらったものと見ていいだろう。歩道橋は、彩子と日高が入れ替わった運命の場所。ここで考えられるのが、この手紙を受け取った少年時代の日高が、約束の歩道橋で何らかのアクシデントにより一度入れ替わりを経験したという説だ。そこで、日高は入れ替わりの原理を知った。

じゃあ、この手紙を出したのは誰なのか。卒業アルバムがちらりと写されたが、目視しうる限り、その中に今まで出てきた登場人物の名前はない。

ちなみに文集に書かれた日高の夢は「世界の人たちにお父さんが作るラーメンをお腹いっぱい食べてもらうこと」だった。日高の父親はサンライズフーズの創業社長なので、この夢自体は特に違和感がないのだけど、なんとなく現時点での日高のキャラクターとはかなり乖離があるように思える。父の作るラーメンを「魔法のラーメン」だと憧れていたはずなのに、なぜ日高は父の会社を継ぐことなく、MITで分子生物学を学び、創薬ベンチャーのファウンダーという道を選んだのか。

でも、もし文集の作文を書いているときの日高と、コ・アース社を起業した日高が別人だとしたら説明はつく。やっぱり日高はどこかで人格が入れ替わったのか・・・?

考えれば考えるほど頭がショートしそうになるが、こうした考察の楽しみだけでなく、回を重ねるごとにどんどんバディものとしての面白さも増してきている。

今回も、日高を陥れるようとする九十九(中尾明慶)を日高<彩子>と彩子<日高>の連携プレイで返り討ちにするというストーリーに大きなカタルシスが感じられた。また、彩子は日高に、日高も彩子に関心を寄せつつあり、今後、2人の間に恋愛感情に近いものが芽生える展開も期待できる。そうなると、今までにない枷を背負ったラブストーリーとして、2人の結末を追うこともできそうだ。

2人を待ち受ける結末は、天国か地獄か。後半戦もこの調子で視聴者を思う存分翻弄してほしい。

(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)

【第6話(2月21日[日]放送)あらすじ】
※<>内は入れ替わった後の人物名

彩子<日高>(綾瀬はるか)が持ち続けているラブレターのような手紙。
その手紙の差出人が今回の事件の手がかりになると読んだ日高<彩子>(高橋一生)は、秘書の樹里(中村ゆり)や妹の優菜(岸井ゆきの)に日高の過去に何か心当たりがないか探りを入れる。

その頃河原(北村一輝)は、連続殺人事件の発端となった3年前の事件で証言をした目撃者を問い詰めた結果、一人の怪しい人物に行きつく。一方、八巻(溝端淳平)は賭博罪で逮捕した九十九(中尾明慶)から司法取引を持ち掛けられていた。九十九によると、日高が人を殺す日には共通点があるという。

次のターゲットは誰なのか?手掛かりになりそうなことを思いついた日高<彩子>は、陸(柄本佑)に協力を依頼するが・・・。

◆放送情報
日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』
毎週日曜21:00よりTBS系で放送
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」でも配信。