おじさまと猫の心温まる日々を描いた桜井海による人気コミックを原作とした、草刈正雄主演のドラマ『おじさまと猫』第5話が2月3日に放送された。今回は、おじさま・神田冬樹(草刈)がふくまる(声・神木隆之介)と出会う10カ月前から物語が始まる。そう、妻を亡くして2カ月後くらいの時期だ。
親友・小林(升毅)が「少しは落ち着いたか」と尋ねると、冬樹は「むしろ今の方が大変だ」「一人で過ごす時間がこんなに長いとは・・・」と沈痛な面持ちである。いたたまれず、「お前も飼ってみたら? な? 触ってみ? あったかくてフサフサしててな」と愛犬・茶子ちゃんとの交流を勧めるが、恐る恐る手を出した手を、冬樹はやはり引っ込めてしまう。どうしても動物に触ることができなかったのだ。
そして場面は変わって現在。冬樹の顔の上でふくまるが覆いかぶさって寝ている。「可愛すぎて起きられない・・・」と冬樹は心の中で呟きつつ、しみじみ今の幸せをかみしめる。
「ふくまる、人って変われるんだね」
そんな気持ちは、音楽教室で教えている子どもたちにすら伝わってしまう。
「いいことあったでしょ?」「何かあったの? 教えてー」と言われ、ふくまるがまるで鍵盤をたたいているみたいな動きをしたことを語り、「可愛いのよ」と写真を見せる。
「うわー可愛いー!」と同時に「鼻くそついてるー」「顔潰れてるー」という忖度のない子どもたち。しかし、ふくまるの存在を通して子どもたちとも打ち解け、職場の同僚たちにも「子どもたちに大人気ですね」と言われるくらいだ。
そこで、冬樹がかつては動物を触れなかったこと、その理由は母親が大の動物嫌いで、触ろうとすると止められたことなどが語られる。
冬樹は母に「あなたは特別な子なのよ」「お友達は選ばないといけないのよ」と言われ、公園で野球をやっている子たちと遊ぶこともできず、一人ぼっちだった。そんなとき、木の下にいた猫に「おいで」と声をかけると、逃げられてしまう。
「僕は特別なんかじゃない。僕もまた選ばれる側なんだよ」と母に言いたかったことを思い出すのだった。
しかし、ペットショップで暗い目をして俯くふくまるを見たとき、自分の少年時代の姿が重なる。「今すぐ抱きしめたい、そう思った」、それがふくまるを飼うことにした理由だったのだ。
さらに今回は、「好きなもの」(ふくまる)ができたことで、小林とショッピングに行き、とてつもなくダサい猫柄Tシャツを冬樹がご機嫌で着るシーン、妻が「大好きなもの(冬樹が弾くピアノが大好きだから)」としてピアノ柄のマグカップを買っていた事実などが描かれた。
そして、いつでも冬樹が困っていると助けてくれる小林が、少年時代、公園で一人ぼっちでうずくまっていた冬樹に「何、どっか痛いのか?」「じゃ、一緒に遊ぼうぜ」と声をかけてくれたときからの親友だということも。
そうした二人の「大事な存在」同士が、ラストにつながる。ふくまるは、小林に対して「パパさんを笑顔にしてくれるヤツは、嫌いでも大好きにゃあ」ととうとう腹を見せて撫でさせ、冬樹は小林の愛犬・茶子ちゃんを触ってみて「可愛いなあ」とつぶやくのだ。
自分が大好きなもの・大事にしているものを、自分の大事な人に認められ、肯定されることは、何より嬉しいものだ。それを改めて感じさせてくれた心温まる回だった。
(文・田幸和歌子/イラスト・月野くみ)
【第6話(2月10日[水]放送)あらすじ】
ふくまる(声:神木隆之介)と暮らすようになってから、妻が生きていた頃のように、少しずつピアノが楽しめるようになっていた神田(草刈正雄)。そんなある日、音楽教室で神田の演奏のすばらしさに興奮した森山(小関裕太)は、神田をピアノのコンサートに一緒に行こうと誘う。神田は心の中では戸惑いを感じながらも、誘いに快諾する。今話題のピアニスト日比野奏(平山浩行)のコンサートだが、会場に行った神田は・・・。
◆番組情報
ドラマParavi『おじさまと猫』
毎週水曜深夜0:58からテレ東で放送中。
動画配信サービス「Paravi」では毎週水曜21時から独占先行配信中。
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