もはや八巻(溝端淳平)がいつ背後から鈍器で殴られやしないかとハラハラ見守るドラマになってきた・・・! それくらい何が起きるかわからないスリルに満ちた日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』(TBS系/毎週日曜21:00~)。第3話は、消えた革手袋をめぐって、彩子(綾瀬はるか)が、日高(高橋一生)が、そして河原(北村一輝)が息つまる攻防を繰り広げる回となった。

※以下、<>内は入れ替わった後の人物名

彩子<日高>の掌の上で、日高<彩子>も視聴者も踊らされる

それにしても回を増すごとに、彩子<日高>の恐ろしさと美しさが増している気がする。容疑を逃れるべく、証拠品となる手袋をこっそり別の手袋とすり替えようと画策する日高<彩子>。電車でスマホを凝視する日高<彩子>の背後に、そんな企みなどお見通しといった様子で彩子<日高>が立っている。マスクで顔半分が隠されているからこそ、余計に不気味だ。すっかり日常の風景となったマスクが、こんな意外な演出効果をもたらすとは、皮肉だけれど面白い。

彩子<日高>の目的は何なのか。その行動がまったく読めないから、つい引き込まれてしまう。自ら鑑識の手伝いを申し出る彩子<日高>。それは、一見すると証拠隠滅のための行動のようにも思えた。たとえ魂が入れ替わったといっても、元の自分が捕まる姿はやはり見たくはないのではないか。そう八巻は安堵するが、彩子<日高>が幅(谷恭輔)にインスタで片方の手袋だけを集めたハッシュタグがあると進言したことから状況は一変。日高の指紋がついた手袋が発見されてしまい、日高<彩子>は窮地に追い込まれる。

なんだかまるで彩子<日高>は日高<彩子>が混乱するのを楽しんでいるみたいだ。だが、発見された手袋からは被害者のDNAは検出されず、事実上、日高逮捕へ続く道は絶たれる。しかも、検出されなかった理由は、手袋から採取された試料がバクテリアに分解されていたからだという。MIT帰りの日高なら、そうした科学知識があってもおかしくない。

もしかしたら日高は味方なのか。そう心が傾きかけたのも束の間、日高<彩子>のもとに彩子<日高>から動画が届く。そこに、おさめられていたのは逆さ吊りにされた何者かをゴルフクラブで殴打する彩子<日高>の姿だったーー。

疑わしいのは陸か?河原か?

まさに、日高が猟奇的な殺人鬼である証拠というべき動画だが、これはフェイクと見ていいだろう。撮影されていたのは、あくまで彩子<日高>がゴルフクラブで殴る姿であって、殺人の決定的な瞬間ではない。おそらく逆さ吊りにされた時点で、すでに遺体であったというのが個人的な見解だ。

その推論の手がかりとなるのが、その直前に彩子<日高>が歩道橋で「4」という落書きを見つけたシーン。「終わりじゃなかったんですか」という彩子<日高>の台詞から考えて、あれは黒幕からのメッセージだと考えるのが自然だろう。

この「4」の意味を考えると、「死」ともとれるし、「4番目」とも考えられる。現在発覚している殺人事件は、3年前の官僚殺し、そして七番町デンデン社長宅殺人事件。そこに加えて、もう1つまだ明らかになっていない何者かの死があるとすれば、新たに発生した今回のゴルフ場経営者の殺害で「4番目」となる。

一連の殺人事件をつなぐ手がかりとされている掌の「φ」マークとこの「4」という数字は何かしら関連性があるのだろう。第3話にして、大きな謎と、それを解明するヒントが提示された。

周囲の人物もますます怪しくなってきた。まず視聴者目線で最も疑惑が向きやすいのは、陸(柄本佑)だろう。今回も便利屋のHP経由で依頼があり、「4」の落書きを除去していた。第2話でも便利屋のHPから落し物探しの依頼が届き、それが彩子<日高>がロケーション履歴に気づくきっかけとなっていた。偶然にしては出来過ぎだ。陸の便利屋に依頼をしているのは誰なのか。陸自身は関わりがあるのかないのか。最もその動きから目が離せない人物だ。

さらにちょっと怪しいのが、河原だ。手袋発見に執念を燃やす河原は、彩子<日高>に対して「まあ、すり替えたとしても、手袋は2つあるからな。まだこの世のどこかにもう1つあるはずだ」と言った。しかし、この台詞はよく考えるとおかしい。なぜ河原は"見つかった日高の手袋が片方だけ"だと知っているのだろうか。この時点で、手袋が両方揃った状態ですり替えられたか、片方だけすり替えられたかを特定できる材料は、河原にはないはず。にもかかわらず、なぜ河原はまだ片方は見つかっていないという前提で話しているのか。刑事の勘や執念で片づけるには都合が良すぎる。黒幕しか知り得ない情報を、河原が握っている可能性は十分にある。

夏の夜にだけ咲く花と、太陽になれなかった月

全体を通して感じられる「清掃する」というイメージも気になる。この「清掃」も今のところ2つの解釈が考えられる。1つは、これまで殺された者がみな金の亡者であるという共通点から見て、黒幕は不正を働き私腹を肥やす悪人たちを粛清したいという報復や制裁に駆られた人物であること。『暗闇の清掃人』という漫画のタイトルもそのイメージに一致する。

そしてもう1つは、黒幕自身が何かしらの罪を抱え、それを洗い流したいと願っていること。この一連の事件そのものが、黒幕にとって過去の浄化なのかもしれない。

これらを解き明かすヒントはやはり奄美大島に眠っているのだろう。気になったのは、日高<彩子>が民宿の主人(酒井敏也)から聞いた、シヤカナローの花はサガリバナのことではないかという説。サガリバナは一夜だけ咲いて朝には散ってしまう幻の花として知られている。つまり、太陽を浴びることのない花だ。夏の夜にだけ咲く花。そして、太陽になれなかった月。この幻想的なモチーフが、日高の抱える秘密を開く鍵となるのだろうか。

それにしても、八巻は刑事にしては不用意すぎて本当に心臓に悪い。日高<彩子>に電話している姿を見るたびに、後ろから彩子<日高>が来ないかヒヤヒヤしてしまう。いいやつであることだけは十分に伝わってくるので、どうか無事に生き延びてほしい。もし八巻が途中で死んじゃったら、ドラマ史に残る鬱展開だぞ!

(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)

【第4話(2月7日[日]放送)あらすじ】
※<>内は入れ替わった後の人物名

日高(高橋一生)がまた猟奇殺人を犯した。人の命が無残に奪われ、その行為に自分の体を使われたことに彩子(綾瀬はるか)は言葉を失う。

翌朝、日高<彩子>は河原(北村一輝)の事情聴取を受けるが、その様子を冷静に見つめる彩子<日高>。聴取後、彩子<日高>と日高<彩子>がやり取りする様子を目撃した河原は、その光景に違和感を覚え、疑惑の目を向ける。後日、彩子<日高>が捜査本部専用の情報のデータベース化を買って出てきた。一体その目的は?

一方、陸(柄本佑)もまた、彩子の家で発見した"血の付いた防護服"のことで頭を悩ませていた。証拠不十分で解放された日高<彩子>だったが、コ・アース社では、会社の信頼が失墜しかかっていることを案じた秘書の樹里(中村ゆり)に詰め寄られ、おまけに、頼みの綱だった八巻(溝端淳平)は殺人鬼の彩子<日高>を恐れ、これ以上協力できないと言い出す。

今のままでは自分が殺人犯になってしまうことに絶望的な気分になる彩子。 そんな中、2人に疑いを向けた河原が、事件の目撃者情報をつかんだ様子で・・・。

◆放送情報
日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』
毎週日曜21:00よりTBS系で放送
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」でも配信。