おじさまと猫の心温まる日々を描いた桜井海による人気コミックを原作とした、草刈正雄主演のドラマ『おじさまと猫』(テレビ東京)が1月6日に放送開始された。

草刈正雄と小さな生き物という組み合わせから勝手にイメージされるのは、彼が伊万里焼や盆栽、座布団、額縁、鱧などなど、様々なアイテムを鑑賞する『美の壺』(NHK BSプレミアム)みたいな感じだった。

しかし、第1話冒頭で描かれたのは、そんな優雅さとは真逆の、世知辛い現実である。
ペットショップで「可愛い~」「欲しい~」と話すカップルが、値札を見て溜息をつく中、注目したのは、32万円から9万円という破格のディスカウントをされている猫だ。背中を向けたモコモコの「エキゾチックショートヘア」は、すでに大きい・・・。しかも、振り返った途端、「(鼻付近のブチ模様に)鼻くそついてるし!」「つーか、でかっ!」と笑われる始末。そこで据わった目の成猫は静かに語り始める。

「私は猫である。私はブサイクと呼ばれている。私はもうすぐ1歳ににゃるが、名前にゃんてにゃい」

妙にイイ声の猫は、もう一人(一匹)の主人公で、声(※今回、声優という表現はNGとのことだったので!)を務めているのは神木隆之介だ。
もうすぐ1歳になるということで、大きさ的にもいっぱいいっぱいだし、おなかも空かず、エサを食べなくなっている猫を心配し、店員・佐藤(武田玲奈)は自分が引き取ると言い出すが、マンションはペット不可、引っ越しのお金もない。それを同僚に指摘され、佐藤は言う。

「だってもうすぐ・・・」
「もうすぐ・・・にゃに!?」

唐突に耳に入ってきた不穏な言葉に反応する猫。すると、隣のケージの猫が「どこかに連れていかれる」「(その場所は)おそらく誰もいない、暗くて寒くてジメジメしたところだろうよ」と教えてくれた。絶体絶命のピンチから救ってくれるのは、アノ人(草刈)しかいない!

一方、肝心のおじさま・神田冬樹(草刈)は完全に黄昏た様子で、1年近く前に亡くなったらしい奥さんの写真に話しかけ続けている。
そこへ「イイ話を持ってきた」と親友の小林(升毅)が登場。「このままずっと一人でいる気か? 写真だけでも見てみろって~」と言うが、スマホで見せられたのは見合い相手候補の女性の写真じゃなく、「生後1カ月の柴犬の女の子」の写真だ。小林は大の愛犬家なのだ。

しかし、「動物は苦手」と断る冬樹に、「犬がダメなら猫でもいいよ」と。そこで思い出されるのが、妻が猫を欲しがっていたことである。しかし、この小林のナイスアシストをかわすべく、飼うとしたら「子どもの頃1度だけ触ったことがある」という理由から、「しいていえばイソギンチャク」と答える冬樹。猫と出会うまでの道のりは遠く見えたが、後で思えばこれがやっぱりナイスアシストだった。

ペットショップの近くを通り、ふと入ってみる気になった冬樹は「イソギンチャク置いてますか」と尋ねる(まさか本気だったとは・・・)。
当然置いておらず、店員・佐藤が例の猫を勧めようとすると、去ってしまう。
しかし、そんな冬樹を再び店に引き戻したのは、ポケットから落ちた結婚指輪付きのネックレスだった。

首にかけようとしたところ、指輪が外れて床を転がり、行き着いた先は、あの猫のケージの前。拾い上げようとする冬樹と、猫の目が合う。「にゃ?」

ここまで据わった目のブサイク猫に見えていたのに、おじさまを見上げる目はキラキラで可愛く、全く違う顔に見える上手い演出である。

そこで亡き妻が言っていた「あなたが選んだ猫ちゃんが見てみたいわ」の言葉がリフレインする。愛おしそうに猫を抱きしめる冬樹。

「可愛いねえ、うちの子になってくれるかい?」
「なるにゃぁ」

最高にロマンチックで最高に美しい出会いのシーンが描かれた第一話。親友と亡き妻が運んでくれた縁も愛おしいのだ。

(文・田幸和歌子/イラスト・月野くみ)

【第2話(1月13日[水]放送)あらすじ】

神田(草刈正雄)の家に初めてやってきた猫は、慣れない広い部屋への戸惑いと神田の家族に拒まれることを恐れ、キャリーケースから出られずにいた。そんな様子に、神田は自分一人しか住んでいないことを告げる。自分と同様、神田も孤独を感じていると知ったその猫は、寂しげな表情で話す神田にそっと擦り寄る・・・。
神田は、出会えたことが幸福だという理由から、その猫に"ふくまる"と名付けることにする。こうして、一人と一匹の温かな生活が始まる・・・!

◆番組情報
2020年1月6日(水)スタート
ドラマParavi『おじさまと猫』
毎週水曜深夜0:58からテレ東で放送。
動画配信サービス「Paravi」では毎週水曜21時から独占先行配信中。