まずはずせないのは、『イ・サン』(2007年)、『馬医』(2012年)などのヒット作を生み出し、時代劇の巨匠と呼ばれるイ・ビョンフン監督の作品。なかでも日本で韓国時代劇ブームを巻き起こした『宮廷女官チャングムの誓い』(2003年)は、今でも色褪せない傑作だ。
16世紀の朝鮮王朝時代に陰謀によって両親を失ったチャングムが、宮廷内の権力争いに巻き込まれながらも宮廷最高の料理人を目指し、最終的には女性初の王の主治医にまで上り詰めるサクセスストーリー。聡明さゆえに悪の勢力に目をつけられ、陰謀によって何度も絶体絶命のピンチに陥るチャングムだが、亡き母の「簡単に諦めてはいけません」との遺言を守り抜き、努力と知力によって打開するシーンの数々が実に痛快。
その姿は最後の最後で逆転ホームラインを放つ『半沢直樹』(TBS系)や、とんちで悪代官をやり込める『一休さん』をほうふつとさせる。また前半は王の食膳を準備する台所・水剌間(スラッカン)を舞台に繰り広げられる料理対決、医女となった後半は両親の死をめぐるサスペンスも見どころになっており、全54話があっという間に感じられることうけあいだ。
チャングムにハマった人ならば、低い身分から21代王・英祖の生母となった淑嬪崔氏(スクビン チェシ)の波乱万丈な生涯を描いた『トンイ』(2010年)も要チェック。イ・ビョンフン監督の作品には常に勧善懲悪のメッセージが込められており、善良な心を持つことの大切さを教えてくれるため、お子さんと一緒に見るのもおススメ。
トキメキが欲しい人なら、架空の王と巫女の禁断の愛を描き、最高視聴率46.1%を記録した『太陽を抱く月』(2012年)を見るべし。王世子イ・フォンと恋に落ちた文館大堤学の娘・ヨヌは世子嬪に選ばれるが、陰謀によって黒魔術をかけられたヨヌは病死。8年後、王となったフォンはヨヌに似た巫女ウォルと出会う・・・という幻想的なストーリー。妃を迎えても心を(身体も!!)許さず、ヨヌだけを想い続ける一途な王フォンは、まさに人類のロマン。
フォンを演じるのは本作の大ヒットでトップ俳優に躍り出たキム・スヒョンで、巫女のウォルに亡き初恋の人の面影を重ねて苦悩する姿がとにかく麗しい。ベストセラー小説が原作ゆえに、少女漫画のような胸キュンシーンが満載で、何度でも見返したくなる。
「とにかくイケメンが見たい!! 」という人は『花郎<ファラン>』(2016年)が必見。"花郎"とは、新羅に存在した、王族や貴族の子息でイケメンばかりが集まったエリート青年組織のことで、当然のことながらキャストはイケメンが勢ぞろい。『梨泰院クラス』(2020年)のパク・ソジュンを筆頭に、ZE:A出身のパク・ヒョンシク、BTSのV(ブイ)、SHINeeのミンホら演技ドル(演技するアイドルの意味)が夢の競演を果たして話題となった。王の親衛隊として活躍した彼らの奮闘や成長を描いたみずみずしい青春ドラマであると同時に、パク・ソジュン扮する主人公が亡き親友の妹に寄せる切ない愛にも泣かされる。
他にもラブコメ好きならば、記憶をなくした王世子と婚期を逃したワケありヒロインが繰り広げる『100日の郎君様』(2018年)や、大ヒット映画「猟奇的な彼女」(2001年)い高麗の基礎を作った有能な王でありながら治世の後半は豪族や親族に対して処刑を行った残忍な王とされる光宗が主人公の『輝くか、狂うか』(2015年)がおススメ。豊富なジャンルの中から、お気に入りの時代劇を見つけてみて!!
【著者プロフィール】
All About「韓国ドラマ」ガイド 安部裕子(アベ ユウコ)
https://allabout.co.jp/gm/gp/1193/
韓国エンターテインメントライター。97年に韓国ドラマの面白さに目覚め、これまでに約1100作品もの韓国ドラマを視聴。執筆業を中心にコメンテーター、韓流ロケ地ツアーのアドバイザーなども行う。
『宮廷女官チャングムの誓い』(C) 2003-4 MBC
『トンイ』(C)MBC, iMBC All Rights Reserved.
『太陽を抱く月』(C)MBC, iMBC All Rights Reserved.
『花郎<ファラン>』Licensed by KBS Media Ltd.(C) 2016 HWARANG SPC. All rights reserved
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