山里亮太の短編小説を原作とし、主演・山里亮太役を仲野太賀が演じるテレビ東京の『あのコの夢を見たんです。』第8話が、11月20日に放送された。
今回はドラマオリジナルの書き下ろしで、ヒロインは白石聖。そして、(恐らく)裏テーマはなぜか10月10日まで他局・東海テレビ制作フジテレビで放送されていた『恐怖新聞』だった。
冒頭で、いつものように喫茶店にいる山里(仲野)が、調子がよくふてぶてしいヒョロリとした男に「師匠!」と言われ、気をよくして「好きなモノを頼みな」と言う。すると、男が頼んだのはまさかの「サーロインステーキ」しかも「A5ランク、焼き方はミディアム」などという注文をつける。山里にとってまるで悪魔のような男は坂口涼太郎。そう、白石聖に毎週「恐怖新聞」を送り続けていた彼だったのだ。
そんな悪夢のような現実から目を反らし、山里が妄想するヒロインは、「才色兼備で部下からの信頼も厚く、仕事のデキる白石聖」である。
そして山里はといえば、花形部署の蛍光灯を替えに来る「庶務八課」の男。相変わらず自己評価が極めて低く歪んでいる設定が、清々しい。
面白いのは、そんな非の打ちどころがない白石と、嫉妬の鬼・山里の心の声が、奇妙にリンクすること。
「つまらない・・・全てが簡単すぎる」
「くだらない・・・全てがくだらなすぎる」
CM部に対し、最終的には才色兼備の白石に対して、暗闇の中で嫉妬に狂う気持ちをただ一人呟きながらノートにぶつけまくる姿を見てしまったのが、よりによって白石だったことから物語は急展開する。
卑屈な笑顔で慌てて「白石ってのは大学時代の友人でして」とごまかす山里に、白石は真っすぐな瞳で言う。
「弟子入りさせてください!」「私、あなたみたいな生き方に憧れているんです!」
誰にでも絶対に勝ててしまうために、嫉妬したことがなく、生きている実感が持てないと言う白石は、「マッサージチェアを導入させる」というエサによって山里を釣り、無事弟子入りを果たす。
「いいか! 嫉妬は生きるためには欠かせない重要な熱だ!」という師匠の教えのもと、トレーニングを重ねる白石。このドラマでは、どういうわけか2~3本に1本、腹筋やらスパーリングやらトレーニングシーンが出てくるが、今回鍛えるのは「嫉妬心」であるだけに、その効果はちょっと不明だ。
しかし、何でもできてしまう白石は、ずぶの素人からスタートした「嫉妬」道においても、めきめき腕を上げていく。しかも、これまで見せたことのないイキイキした表情も。そして、「嫉妬の向こう側へ行け」の教えを胸に、ついには最年少の取締役になるのだった。
その一方、そんな白石に「師匠」と呼ばれ、感謝されていくうちに満たされてしまったことで、嫉妬の燃料がゼロになってしまった山里。そんな山里に白石は言う。
「つまんない男・・・」
実は山里は白石にとって、単に「凡人の生体を観測するためのモルモット」だったのだ。そんな白石に見捨てられた山里は庶務八課を去り、会社を設立、見事成功し、やがて・・・。ラストの駆け足ぶりと、唐突に出てくる『半沢直樹』パロディなどは正直、ちょっと蛇足の気もしないではないが、何より素晴らしかったのは、仲野太賀×白石聖の「ガチ演技対決」である。
「嫉妬」のエネルギーでどんどんイキイキとエネルギッシュになっていく白石と、満たされて腑抜けになっていく山里。その寓話的なコントラストを二人の演技が見事に見せてくれる回だった。
(文・田幸和歌子/イラスト・まつもとりえこ)
【第9話(11月27日[金]放送)緊急特別編「夢のその先」滝沢カレン回 あらすじ】
大好評ドラマ「あのコの夢を見たんです。」緊急特別企画を放送!今回は天心爛漫で自由なトークが魅力の滝沢カレンが、原作者・山里亮太(南海キャンディーズ)に迫ります!既に放送した8話分について、ここでしか聞けない撮影秘話たっぷりでお届けします。さらに、これから放送する物語については、あの女優の物語創作秘話を語ってもらいました!そして、最も旬なあの主演女優をモチーフに、新作物語を山里亮太が書き下ろす!?
◆番組情報
ドラマ24 第60弾特別企画『あのコの夢を見たんです。』
毎週金曜深夜0:12よりテレビ東京系にて放送中。
(※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0時12分から放送)
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも配信中。
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