――『安全なビーナス』の主演のお話を聞いた時は、どんなお気持ちでしたか?

『危険なビーナス』のスピンオフ的なオリジナルストーリーの主演ということで、お話を頂いた時は大変ありがたく思いました。でも、バーのマスターという役どころは、今までやったことのない役。そして自分自身、普段、声優、歌や舞台などをやらせていただいてますが、ドラマのようにこと細かに表情を伝えられるような撮り方での演技は、あまり学んでこなかったので、「僕でいいのかな」という不安はありました。いざ撮影に入ってみると、いろいろ勉強させていただきました。

――どんなところが勉強になったのですか?

収録の進め方もそうですが、現場の俳優さんたちの佇まいは、声優や舞台の現場とはまた違って。「こういうふうにしたら、スタッフの皆さんも楽しく撮影に臨めるんだな」ということを、特に自分よりも若いキャストの方々に勉強させてもらいました。(矢神家の執事でバー「Venus」でも勤務する)君津光役の結木(滉星)さんは、堂々とはしているんですが、スタッフやキャストの皆さんに、すごく気遣いをされていて。ちゃんと自分から皆さんに話しかけているのがフレッシュに見えましたし、「いろいろな現場を踏んできたからこそなんだろうな」と感じました。

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----バーテンダー役は初めてということで、役づくりでも勉強されたと思います。

撮影は実際のバーで行っているんですが、その店のバーテンダーの方にリキュールの分量や氷の入れ方とか、シェイカーの振り方も本物のバーテンダーの方が見ても恥ずかしくないように見えるやり方を教えていただきました。練習は仕事の合間にしていたので、時間はあまり多くは取れませんでしたが、本番の撮影を見守っていた指導の方からは、「もう、大丈夫ですね」と言われました(照)。僕はお酒をそんなに飲まないのですが、カクテル作りはやってみると楽しくて。組み合わせでいろいろなカクテルができることって、それも一種のエンターテインメントだと思うんですよね。「これは楽しい!」という気持ちが自分のなかに湧いてきたので、それが役づくりの助けになったのかなと思います。

----蒼井さん演じるシェリーがお客様にカクテルを作って出す時の華麗な所作も含め、『安全なビーナス』は、どこか"魔法をかける"ようなファンタジックな作品になっていますよね。

そうですね。シェリーがカクテルを作っているところはスピーディにカッコよく、登場人物たちの心を開いていくシーンはゆったりとしているんです。バーテンダーの動きの部分は完成を想像しながら細かく撮影しているのですが、仕上がった映像を見ると、スピード感が増していて、想像以上でした(笑)。シェリーが毎回お客様にかける言葉は、見ている方々の日常にも関わるような名言だなと思っていて。僕自身、役を通して、いろいろと感じるものがありました。

――シェリーはお客様の悩みを聞いたり、受け止めたりと、セラピストのような部分があるようにも思いました。ご自身と似ているところはありますか?

う~ん・・・「壁がない」ところですかね。「この人に相談したい」と思う時って、その人に壁がなくて、どんなことでも受け止めてくれそうな気がする・・・という心理もあるんじゃないかな。シェリーにはそういうところがあると思うし、だからこそ、厳しい言葉が出る時もあるんだろうけど。シェリー自身は、"歳を重ねてきた"という年齢ではないし、若過ぎもしない。でも、人と違ういろいろことを経験してきたんだろうなって、演じていて思ったんですよね。

シェリーの"心が開けている"感じは・・・僕のイメージなので断言はしたくないですけど・・・幼少期や思春期に、対人関係でとてもつらいことを経験しているような気がするんです。僕自身も、過去にいじめを経験して痛みやつらさを感じたからこそ、いろいろな人の心の距離とか、壁とかがより分かるようになったと思っていて。普段から僕も、誰かと話す時に自分の心に壁を作らないようにしているので、そこはすごくシェリーとシンクロしますね。だから、シェリーを演じる上で何も妨げになるものはなかったです。

――役にそうした部分を感じて、演じやすかったんですね。

はい。シェリーを演じるにあたっては、そこまで役を固めず、自分の中から出るくるものを半分注いでいた、という感じもしましたね。

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――シェリーの元にはさまざまな登場人物が訪れますが、撮影はいかがでしたか?

共演者の方々は普段テレビで見ていた有名な方ばかりだったので、失礼のないようにしなきゃと思っていたんです。でも、皆さん、本当にいい意味で壁がなくて、緊張を置いて撮影することができました。そうやって、両手を広げて待っていてくださったスタンスが、とてもありがたかったです。現場には、ネコちゃん(黒猫・ヒカル)もいて。ポスター撮影で抱っこもさせていただいたんですが、本当にいい子だったので心安らぎました。僕、よくネコに嫌われるんですよ(笑)。

――そうなんですか?(笑)

はい(笑)。だから、ネコちゃんが、僕にとっての"シェリー"みたいな感じ。いるだけで癒されて、現場ではみんなのアイドルでした。

----そんなステキな方々(+黒猫)が登場する作品ですが、改めて蒼井さんが感じる本編『危険なビーナス』の魅力は?

大先輩方ばかりなのでこう言うのもなんですが・・・出演者の皆さんどの方も、ひとクセもふたクセもある方がそろっているというか。だからこそ一人一人の役柄がたっていて、その人物たちが繰り広げる物語に引き込まれますし、見ていて「誰が犯人なのか」と毎回考えてしまいます。クライマックスにものすごい驚きが待っていると思わずにはいられない。そういう、物語のボルテージの上がり方が魅力です。

――『安全なビーナス』の魅力はどう感じていますか?

『危険なビーナス』の本編だけでも楽しめるんですが、登場人物たちが本編では漏らさないような本音をシェリーに明かして、その心の中をみられるのが魅力ですね。本編と一緒に見るとより楽しめる、不思議な力のある物語だなと思います。『危険なビーナス』の緊張感を和らげる立ち位置の作品なので、見てホッとしてほしいですね。

――今後の"シェリー"の見どころは?

お客様の心を開いて、意外な一面を見せていく・・・そんななかで、シェリー自身の物語は、なかなか明かされないですが、毎話出てくるシェリーの名言の中に、その人生が詰まっていると思うんです。最後まで見ていただいた時に、「シェリーって、本当はこういう人だったな」と思い出される物語になっていると思うので、そこも楽しみにしていただきたいです。

(取材・文:齊藤恵/撮影:高橋将志)


◆番組情報
日曜劇場『危険なビーナス』
毎週日曜21:00からTBSで放送中。
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも配信。
また、Paraviオリジナルストーリー『安全なビーナス』も独占配信中。