「この前言ってたじゃない、1回ぐらいしたって引き返せるから大丈夫よって!」

そう言ったまり(仲里依紗)は、落語家・今昔亭丸太郎(阿部サダヲ)との不倫の恋に燃え上がり、もはや引き返せそうにない。エレベーターの中に閉じ込められるという思わぬアクシデントをきっかけに、部下・赤坂(磯村勇斗)に猛アプローチを掛けられ、思わず翻弄される優子(吉田羊)。献身する斉木(小泉孝太郎)の気持ちをとことんスルーし、記憶喪失になって与論島にいるという、かつての最愛の夫・慎吾(渋川清彦)を想わずにはいられない杏(木村佳乃)という、三者三様の恋模様が描かれた『恋する母たち』第2話だった。

第2話の見どころは、まず、ギャップ萌えの吉田羊である。とにかく可愛い。
夫・シゲオ(矢作兼)と息子・大介(奥平大兼)を養う一家の大黒柱であり、「何をやってもかっこいい」と部下たちからの信頼も厚い優子。でも、忙しさにかまけて育児を夫に任せっきりだったという負い目から、幸せな家庭の中に居場所のなさを感じている。

エレベーターの中に閉じ込められ酸欠に怯え、隙間から入ってくる涼しい風を身体に当てて「気持ちいい~」と思わず声を上げる。非日常な空間において赤坂が目撃したのは、完璧上司・優子の意外すぎる無邪気な姿だった。それをきっかけに始まる年下男子の恋の猛攻。動じないフリをしながらも見えないところで熱くなった頬を両手で覆い、翻弄されていることを自覚する姿もまた可愛い。

次に、小泉孝太郎演じる斉木はちょっと不憫すぎやしないか。
唐突に夫の裏切りを知らされてから11年、シングルマザーとして必死に生きてきた杏は、それでも夫・慎吾に愛されていた記憶を捨て去ることはできていない。パートナーに裏切られた悲劇と一夜の過ちを共有する斉木と杏だが、8年前妻と正式に離婚した斉木と、杏には大きな違いがある。

斉木は「全てはなりゆき」と言いながら、慎吾の行方を丁寧に調べ、週刊誌記者にとって格好のネタだろう落語家と人妻の不倫の証拠写真を、杏の友人だからと注意喚起するだけで削除する。

一方の杏は、そんな斉木の好意による献身を自覚しているのかいないのか、まりとの恋か性欲かの議論の中で、かつての斉木との関係は、「恋ではなく性欲によるものだった」と暗に告げる。危険な旅の話を聞き「生きて帰ってきてくださってよかった」と労いつつ、「そうでなかったらあの人の居場所は永遠にわからなかったかもしれない」とさらっと落としてしまうのは、彼女の天然さゆえか。杏に離婚が成立していない以上、斉木の想いは許されないことではあるのだが、さすがに可哀想な気がしてくる回であった。

まりの恋はますます歯止めが効かなくなっていく。颯爽と現れた丸太郎と手に手を取って走り、路地の片隅で熱いキスをする。君の全てが好きだ、可愛いと甘やかされ、さらには著名人であることを主張するかのような自身の落語DVDのプレゼント。全くもって「セクシーでチャーミング」(『恋する母たち2』,柴門ふみ,小学館より引用)なバツ3男、手練手管に長けている。斉木と杏の忠告に怯え、一度は別れを切り出すも、サングラスに白いワンピースという全く隠しきれていない格好で丸太郎との逢瀬を重ねる。全てを失いかねないスリルもまた、恋愛映画のヒロインと化した彼女にとっては、危険なロマンスを盛り上げてくれるちょっとしたスパイスに過ぎないのである。

海辺の渋川清彦のキュートな笑顔に全てを許しそうになる2話ラスト、与論島の杏は全てを忘れ去った彼とどう向き合うのか。そして、2人きりの京都出張というまたも凄いシチュエーションに見舞われた優子と赤坂はどうなってしまうのか。3話が楽しみである。

(文・藤原奈緒/イラスト・月野くみ)

【第3話(11月6日[金]放送)あらすじ】
与論島で11年ぶりに夫・慎吾(渋川清彦)と再会した杏(木村佳乃)。雰囲気は変わっているが懐かしい夫の声に、杏は幸せだった頃を思い出し思わず涙があふれる。杏を東京からの観光客と思い込んでいる慎吾は、名所の百合ヶ浜などを案内した後、「断崖から夕陽を見たい」という杏のリクエストで、自分が転落して記憶を失くした場所へと連れていく。
その頃、優子(吉田羊)は新商品の販売イベントで、赤坂(磯村勇斗)と京都の会場にいた。招待客も集まりイベントを開始しようとした矢先、停電のアクシデント。電機系統のトラブルらしいが、修理を待っている時間はない。常務の柳(小松和重)に嫌みを言われながら、イベントの中止を決断する優子に赤坂は・・・。さらにその夜、想定外の出来事が優子と赤坂を待っていた。
一方、まり(仲里依紗)のスマホに音声ファイルが添付されたメールが届く。開くと、夫・繁樹(玉置玲央)と不倫相手・のり子(森田望智)の衝撃的な会話だった。相変わらずチラつくのり子の存在に、まりは丸太郎(阿部サダヲ)へ相談を持ちかける。そして、不倫相手と直接会うことを決意。
観光を終えホテルに戻った杏は、与論島の実家にいる優子の夫・シゲオ(矢作兼)から夕飯に誘われるが、「今夜は一人で考えたい」と断る。11年前、自分と息子を捨てて女と駆け落ちした慎吾は、どんな思いでこの島で暮らしていたのか・・・。やるせない思いの中、杏は迷いながらも斉木巧(小泉孝太郎)に電話をかける。

◆放送情報
金曜ドラマ『恋する母たち』
毎週金曜22:00よりTBS系で放送中。
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信。
さらに、Paraviオリジナルストーリー「恋する男たち」も配信中。