――原作が柴門ふみさん、脚本が大石静さんという数々の名作を生み出してきたお二人のタッグですが、出演のお話があった時の率直な感想をお聞かせください。

お二人が描く恋愛ドラマにはこれまでも数多く心を乱されてきましたので、これは間違いなくこの秋一番のざわつくドラマになるだろうという一視聴者としてのワクワクする気持ちと、どなたに聞いてもこのドラマを一番楽しみにしてるとおっしゃるんですよね。みんなが面白いと期待するからこそ演じ手として責任重大だなとおもっております。

――脚本を初めて読まれた時どう思いましたか?

大石さんがリリースのコメントで、原作の持ち味を精一杯生かすとおっしゃった通り、女の本能をテレビで表現できるギリギリのラインで攻めた台本だなと感じました。このドラマは決して不倫推奨のドラマではありませんし、純粋に"女"という生き物を描いたドラマだと思っております。

本作の女性たちは母という役割をまっとうするために、懸命にそういう気持ちを封じ込めているけども、実はいくつになっても恋がしたいし「今の君が好きだよ」っていつだって言ってほしい。母ではなくて女として必要とされた時にそんなものはいらないんだって本当に突っぱねることができるのか、という見る者の本能をゆさぶってくる本だなと思いました。そういう風に本能があふれだす数々の瞬間がありますので、それはきっと多くの女性の共感を呼ぶのではと思っております。

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――実際に演じられていかがですか。

まず3人の母親たちの友人関係はとても心地よいなと思いました。それぞれに気を使いあう感じが役にもリンクしてましたし。林家は3人とも初めましてでお会いした時、飄々とした雰囲気が父子ですでに似ていて。私は早くも役の通り疎外感を感じたりしています。男同士ってずるいですよね(笑)。中に入れない雰囲気があるというか。でもお二人とも本当に素敵な方なので、一緒にお芝居をしているだけで自然と感情がゆさぶられるところがありますね。

――3人の異なる女性が出てくるドラマですが、自分が一番共感できるキャラクターはどなたですか?

優子さんですね。家庭よりも仕事を優先してしまうところも共感できますし、自分は家庭に向かないなと思っているところもブンブンと首を縦にふる気持ちです。

――ご自身が演じる優子さんのキャラクターの魅力も教えていただけますか?

これまで多くのキャリアの女性の役をやらせていただきました。その多くが切れ者で芯が強くて周りをぐいぐいと引っ張っていくイメージなんですが、それに加えて今回の優子さんは懐の深さが垣間見えると思っています。チームワークを大切にして部下を常に気に掛けるリーダーシップというのは、自然発生的に周りの信頼を得る存在であると思いますし、仕事の成果だけではなくて人間的な成熟度が彼女の魅力だと感じます。

これはプロデューサーさんから言われてなるほどなと思ったんですが、優子さんは女性の理想が詰まったキャラクターであると。家庭も仕事もキャリアも手にしながら加えて恋まで成就させようとしているというところが、本来なら妬まれたりこんなキャラ現実味がないよ、と一蹴されそうなキャラなんですが、原作の彼女というのは一つとして嫌味がなくて、愛らしく感じられる。その要因は彼女の抜けにあるのではないかと思っています。表向きは平気な振りをしてるけどトイレに駆け込めば高まる動悸を必死で抑え込んでいたり、緊急時には動揺を見せたり、人間らしい抜け感が彼女の愛おしさ、魅力だと思います。

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――続いて、クランクインがお母さん3人初めてそろった場面だったと思いますが、木村さん、仲さんの印象を教えてください。

佳乃ちゃんはいつ会っても本当に明るくて元気。本当に太陽のような方なので、彼女が現場にいるとパッとあかるくなりますし、目が合うとにこっと笑いかけてくれて「羊ちゃん元気?」ってこちらの具合を伺ってくれて。本当に優しい心の持ち主で。彼女が笑いかけてくれるだけで世界は平和になるといつも思っております。あと里依紗ちゃんはギャップ萌えですね。現場ではおとなしくて自ら場を盛り上げるタイプではないんだけど、ご承知の通りプライベートのファッションが奇抜で。洋服がおしゃべりという感じ(笑)。しかもスタイル抜群なので、いつも彼女の私服を見るのが楽しみです。

――男性陣についてお伺いしたいんですが、阿部サダヲさん、小泉孝太郎さん、磯村勇斗さん、この女性たちを魅了する男性が登場しますが、それぞれキャラクターの魅力はどこにありますか?

どうだろうなあ。私阿部さんと小泉さんが演じる役とはほとんど絡まないんですけど、お3人のキャラクターに共通していると思うのが、自分を信じる力の強さと少年のようなまっすぐさでしょうか。特に私が恋をする磯村さん演じる赤坂という役は、年の離れた既婚の上司にアプローチをかけるなんて普通はしないですよね。でもそれを物おじせずやってのけるのは自信があるからこそでしょうし、その原動力となる好きという気持ちに嘘をつきたくないという、子供のようなまっすぐな気持ちがあるからだと思っています。ですから大人になっていろんなことに忖度をして、本能に理性で蓋をしてしまう日々の中で、優子さんの中で非常に彼の純粋さがたまらなくまぶしかったでしょうし、だからこそ抗えなかったのかなと想像しています。

――今、吉田さんが"恋"してるものはありますか?

今恋してるものは自宅のグリーンに恋してまして。最近まとめていくつか観葉植物を買ったんです。天井から吊るすものとか。つい最近地方ロケで4日間家を空けていたものですから、向こうでグリーンのことが心配で心配で。帰ったら干からびてるんじゃないかと。家に帰って荷ほどきより先に水をあげるくらい、今溺愛しております。無事でいてくれたのでせっせとポジティブなことばをかけています。

床置きの観葉植物とか、下に下に伸びていく植物とか。種類がいくつくらいかな、10種類くらいいるんですけど。花をつけようものなら褒めちぎって「よくやった!」って褒めて育てています。

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――撮影中の印象的エピソードはありますか?

矢作さんは健康オタクなので、体にいいこと教えてくださるんです。この間も無呼吸症候群の人は口にテープを貼ると改善するよ、とか教えてくださって。あと息子役の大兼君とはファッション好きで共通点がありまして、奇跡的に世代を超えて話が合いました(笑)。あと先日の撮影で矢作さんがセリフを忘れたんです。結構長い間があったんですけど、まったく動じないことに感動しました。やっぱりお笑いライブとかで生に鍛えられてる人は違うなって思って。感動しました。それが意図的な間かな?と思うくらいの動じなさでしたね。

――最後に視聴者の方へメッセージをお願いします。

3人の母たちは恋をしたが故に世間的な試練と葛藤を経験していくんですけど、その苦しみを天秤にかけてもなお恋というモンスターに抗えないという、人間的な本能に気づいた瞬間から、このドラマを何倍も楽しんでいただけるんじゃないかと思います。私はこのタイトルの"恋する"という部分には、純粋な精神性を感じていて、人生において恋というのは芸術とかエンターテインメントと同列に必要不可欠なエッセンスだと思っています。現実、人はいつだって何かに恋をしている、例えば人間に限らず景色や動物、映画や漫画のキャラクター、かわいい洋服、雑貨などにときめいて、それが生きる活力や喜びにつながっていると思うんですね。なのでこのドラマを見て普段は蓋をしてるけど、実は恋って人生を何倍も楽しくしてくれるんだって思ってくれたら本望かなと思います。

いけないいけないと思いながら恋に足を踏み入れていく母たちの姿を他人事のようにヒヤヒヤ、キュンキュンしながら見ていると、気が付けばがっつり巻き込まれているドラマになっています。どうぞ本能にまかせて素直な気持で楽しんでいただければと思いますし、そうでなくても非常に個性的で魅力的なキャラクターがたくさんいますので、その登場人物たちに恋をせずにはいられなくなるんじゃないかと期待しています。

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◆放送情報
金曜ドラマ『恋する母たち』
2020年10月23日(金)22:00よりTBS系で放送中。
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信中。
さらに、Paraviオリジナルストーリー「恋する男たち」も配信中。
(C)柴門ふみ/小学館 (C)TBS/TBS スパークル