山里亮太の短編小説を原作とし、主演・山里亮太役を仲野太賀が演じるテレビ東京の『あのコの夢を見たんです。』第4話が、10月23日に放送された。実在する女優やアイドルを題材に、山里が様々な妄想を繰り広げるオムニバスで、今回のヒロインは飯豊まりえである。

舞台は、大学のキャンパス。「階段教室+飯豊まりえ」は、なんて相性良く、絵になるんだろう。しかし、そこで飯豊が告白、失敗する相手は、山里(仲野太賀)ではなく、拓海(佐藤寛太)だ。

では、山里はどう関わっているのかというと、突然、飯豊の部屋に現れた黒いスーツ姿の謎の男だ。まるで不審者のようだが、そんな彼が怯える飯豊に渡したのは「わがままリセットボタン」である。

山里はインチキセールストークで、「あらゆる後悔を消すことができる」「使うか使わないかは、あなた次第」と説明する。

「いやいやいや、そんなことあり得ないでしょ」と言うものの、使ってみた飯豊。目覚めると、割れていたはずのスマホの液晶が戻っていた。そして、再び階段教室で拓海と二人。「失敗」を学んだ飯豊は、前回と同じく「で、話って何?」と聞かれ、今度は告白ではなく「夏休み、みんなで遊園地行かない?」と言う。とりあえず告白失敗は回避し、「これで良かった」とつぶやいたところで、再び山里が妙にシブく良い声で登場。

「良かったんですね?」

気づくのがだいぶ遅いが、これは藤子不二雄Aの『笑ゥせぇるすまん』で、山里は「ファウスト」の悪魔・メフィストフェレスをイメージしたと言われる喪黒福造なのだろう。

喪黒は客の束の間の夢や願望をかなえるかわりに、守るべき条件や約束事を提示、それを破った客は容赦なくどん底に突き落とす。と思ったら、本作における"喪黒"(山里)は、死んだ目であっさりとんでもないことを告げる。

「では、早速死んでいただきますか」

実はボタンを使用し、納得したら命をいただくという条件があったのだが、山里はあろうことか、それを説明し忘れていた。
「リスクはつきもの」と言っても、あまりに大きすぎるリスクに、「もし納得できてなかったらどうするんですか? まだ全然納得できてないです!」と飯豊は食い下がる。

すると「納得したらまた、命をいただきにまいります」という驚きのアバウト判定が。そこから「使いたい放題」状態で、単位を落としそうになったとき、お昼の楽しみを奪われそうになったとき、旅行の時間に遅刻したときなど、何度もやり直しを続けることに。

しかも、「やり直しできる」安心感は、これまでチャレンジできなかったことへの気持ちのハードルも大幅に下げ、モデルに挑戦し、順調に仕事をこなし、さらに意中の人・拓海とも恋人に。

・・・ところが、すべてがうまくいってしまうと、どうにもつまらない。納得いかないこと、うまくいかないことが、どれだけ大事だったかを痛感する飯豊の姿を前に、どこかに電話する山里は、こう報告する。

「失敗でした。ダメ人間化計画」

かなりベタなストーリー展開の第4話を、魅力的に見せていたのは、「キラキラ女子」にも「闇」にも見える飯豊まりえの存在感だ。なんて巧いキャスティングなんだろう。

(文・田幸和歌子/イラスト・まつもとりえこ)

【第5話(10月30日[金]放送)あらすじ】
仕事で感じるストレスと上司に怒られる日々。会社員の山里(仲野太賀)は、感情を押し殺しながら過ごす毎日に疲れていた。そんなある日、「パチン!」と風船ガムを割る不思議な女性・櫻子(大原櫻子)と出逢う。山里に嫌なことがある度に櫻子がそっと現れ、風船ガムを割る...。すると不思議と山里の中の黒い感情がフワッと消える。そんな日々が少しずつ山里を変えていった。櫻子が山里に伝えたかったメッセージとは?

◆番組情報
ドラマ24 第60弾特別企画『あのコの夢を見たんです。』
毎週金曜深夜0:12よりテレビ東京系にて放送中。
(※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0時12分から放送)
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」でも配信中。