南海キャンディーズ・山里亮太初の短編小説を原作とし、山里亮太役として仲野太賀が主演を務めるテレビ東京の『あのコの夢を見たんです。』第2話が、10月9日に放送された。毎回、実在する女優やアイドルを題材にして、山里が「現実逃避」で様々な妄想を繰り広げるオムニバスで、今回のゲストは芳根京子である。
テレ東×芳根京子というと、野木亜紀子脚本の『コタキ兄弟と四苦八苦』(2020年)の好相性だし、仲野太賀×芳根京子という演技巧者同士の組み合わせにも、期待が高まる。
今回の設定はRPG。山里(仲野)は小さな診療所の医師で、芳根京子はそこの医療事務だった。
愛想がなく、作り笑いが引きつる芳根。初主演連ドラ『表参道高校合唱部!』(2015年、TBS)では、明るく元気で天然風味で嫌味のない愛されキャラがナチュラルすぎて、演技なのか素なのかわからないくらいだったのに、今作での無理矢理な「引きつり笑い」は絶品。見事にネクラに見える。
そんな中、山里のもとに、30年前に魔王を倒したパーティとして、濱田マリ、宇野祥平が集結。復活した魔王討伐に行こうとするが、肝心の勇者がいない。
そこで「第2の勇者オーディション」を行うのだが、岩に突き刺さった剣を抜くというオーソドックスな方法で、さくっと抜いてしまったのが、芳根だった。これは『勇者ヨシヒコ』シリーズと同じだと思ったら、勇者の知識がない芳根へ山里が「参考までに」と、ヨシヒコのDVDを渡す。テレ東同士だけに、やりたい放題である。
さて、いざ魔王討伐に出たは良いが、すでにロートルの3名と違い、「新勇者」は「来ないでー!」の一撃でモンスターを倒してしまう能力の持ち主だった。その様がメディアに取り上げられると、たちまち「可愛すぎる勇者」として話題に。そこから、『プロフェッショナル』など、さまざまな取材を受けることになる。
どんどん人気者になっていく一方で、勇者・芳根の表情は沈んでいき、「こういう取材って受ける必要ありますか?」「見た目の事とかって勇者に関係なくないですか」と聞くが、もはやお金の亡者となった3人は「京子ちゃんのおかげで平和が保たれているんだよ」などとごまかすばかり。
金儲けの道具として若き勇者を使い倒す3人の外道ぶりは、RPGというより、「こぶとりじいさん」とか「花さかじいさん」とか、昔話によく出てくる強欲じじいのようだ。
そんな中、芳根は魔王に苦しめられる人々を知り心を痛める。そこで魔王に勝つためかつての勇者・ロト(濱津隆之)のアドバイスを得て、たった1人で魔王討伐に向かい、さっくり討伐してしまう天才勇者。
「もっと愛想良く」と言われて引きつり笑いをしていた芳根京子が、「みんなの笑顔が消えていく」世界を変えるために魔王討伐するというのは、なかなか泣かせる展開である。
それにしても、せっかく実在する女優を使って好き勝手妄想する内容が、恋愛でなく、「RPG」で、しかも「勇者と、金儲けを企む下衆」という関係とは・・・山里亮太の業の深さ、変態性を改めて感じる回だった。
(文・田幸和歌子/イラスト・まつもとりえこ)
【第3話(10月16日[金]放送)あらすじ】
天真爛漫でいつも明るい人気者・七菜(森七菜)は、男友達は多いものの恋人ができず悩んでいた。幼馴染で内気なヤマ(仲野太賀)と話していると、七菜は、モテる女性は、少しか弱い悲劇のヒロインタイプであることに気づく。七菜は悲劇のヒロインになるべく、一大プロジェクトを立ち上げる。それから放課後、2人は自由にアイデアを出し合い、悲劇のヒロインに近付くために試行錯誤をするが、ヤマには秘めたる想いがあり・・・。
◆番組情報
ドラマ24 第60弾特別企画『あのコの夢を見たんです。』
毎週金曜深夜0:12よりテレビ東京系にて放送中。
(※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0時12分から放送)
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも配信中。
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