佐藤二朗が主演する『浦安鉄筋家族』(テレビ東京)の最終回となる第12話が、9月25日に放送された。
前回、勘違いから期待が膨らんでしまったアメリカ・サンタモニカへの「家族旅行」を巡り、夫婦ゲンカとなった末、一人タクシーで去ってしまった大鉄(佐藤二朗)。道中で雷に打たれ、なんと5カ月前にタイムスリップしてしまうという仰天の展開になっていた。
そして今週、まだ帰ってこない父を不貞腐れたのではないか心配する大沢木家が、テレビのニュースで見たのは、「サンタモニカで名物タクシードライバーとして話題になっている大鉄」である。
先ほどまでケンカしていた大鉄がなぜ、サンタモニカに? 双子か、時差かと、混乱する中、「くそニート」の晴郎(本田力)のオタク的推理力が発揮される。
「時空のひずみに巻き込まれたかもしれないなり!」
一方、未来から過去へ行ってしまった大鉄はというと、5カ月経てば現在の大鉄がタイムスリップでいなくなるため、そこまでの期間、過去とできるだけかかわらないよう過ごそうとする。
しかし、そんなダラダラの自分が「何も変わっていない」と反省。このタイムスリップは生まれ変わるための試練と考え、過去に家族の周囲で起こった事件を見守りつつ、手助けに奔走するのだった。
まさか公園でのバトルの最中、突然現れて赤ん坊を抱いて去ろうとして順子ママ(水野美紀)に投げ飛ばされた覆面レスラー(第2話)も、桜(岸井ゆきの)と花丸木(染谷将太)がすれ違った覆面レスラー(第3話)も、未来から来た大鉄だったとは。
同時進行で、晴郎の「時空のひずみ」説から、大沢木家のみんなが胸にしまっていた様々な「違和感」が、「未来から来た父」と結びついていく。
そして、視聴者もずっと気になっていた、中華料理屋でのフードファイト(第6話)でなぜか大鉄が一瞬2人いたことも、ここにきて言及される。
「お父さん2人いた日、あったわよね?」「あれ、ヘンだったわよね?」(順子ママ)
そして、そこで大鉄が言った「必ず旅行に連れていってやる!」という言葉の意味も。
明らかになったのはそれだけではない。何度か大鉄の客として登場していた滝藤賢一が実は時空警察だったのだ。そして、"タイムパラドックス"が起きないようにと大鉄を葬ろうとしているところへ、宇宙に連れていかれたままだった春巻(大東駿介)が宇宙人から「返品」され、春巻が乗ったUFOの落下の衝撃で大鉄がサンタモニカに飛ばされる。ここで大鉄がサンタモニカにいる理由も分かった。
一方、大鉄に会いにサンタモニカへ向かおうとするも金欠で往生していた順子ママたちに、コロナ禍の中断以降、高齢のためか最終回まで完全別撮りとなったじいさん(坂田利夫)が、死んだばあさんのへそくりへと導いてくれた。それらすべてが奇跡的に重なり合い、念願のサンタモニカで大沢木家は再会を果たし、タクシーで浦安まで帰ってくるのであった。
『浦安鉄筋家族』ならではの何でもアリのドタバタに見えていた数々のシーンが、まさかどれもこれも伏線だったとは。そして、まさかこの『浦安』で感動させられる日が来るとは。さすがヨーロッパ企画だ。
見事なラストに着地した今、敬意を表してネタバレ覚悟でこのドラマを『浦安鉄筋タイムマシンブルース』と呼びたい。
(文・田幸和歌子/イラスト・まつもとりえこ)
◆番組情報
『浦安鉄筋家族』
動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で全話配信中。
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