良い映画の定義ってなんだろう。その答えは人それぞれ。
大画面でみたくなる。一時停止したくなる。繰り返しみたくなる。非日常を体感させてくれる。知らない世界の扉を開けてくれる。自分の弱さに共感してくれて、最終的には、明日もわたし頑張ろう!とエンドロールでは心がすこし軽くなっている。
私の考える"素敵な映画の定義"とは、そういうところかもしれない。
そして、時々そんな夢のような条件をすべて満たしてしまう魔法のような映画に出会える時があるんです。
今回はそんな素敵な出会いのきっかけになればと、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信中の映画の中から、人気漫画原作の新感覚青春映画作品をご紹介します。
◆『バクマン。』(2015年)
佐藤健×神木隆之介、漫画で頂点を目指すイケメンコンビがアツイ
原作・大場つぐみ、漫画・小畑健、「DEATH NOTE」のコンビが送り出した「バクマン。」は、2008年より週刊少年ジャンプにて連載が始まり、全20巻で累計1500万部超えの大ヒットを記録した大人気漫画が原作。
そんな「バクマン。」の映画化に挑んだのは映画『モテキ』の大根仁監督。
斬新な映像技術を駆使し、全く新しい映画体験を届けてくれる。
ストーリーは週刊少年ジャンプの連載を目指す高校生マンガ家コンビが主人公。作画担当の真城最高(佐藤健)と、ストーリー担当の高木秋人(神木隆之介)の最高&秋人のコンビは「ジャンプ」連載をめぐり、同世代の最強ライバルであり天才マンガ家の新妻エイジ(染谷将太)と白熱の戦いを繰り広げることになります。
男たちの熱きバトル
この映画、主人公たちだけじゃなく出てくる男性陣みんなアツイんです!
これぞ文科系男子の男祭りと言っても過言ではありません。ジャンプ編集部編集長を演じるリリー・フランキー、コンビの2人を親身に支える編集者に山田孝之、最高の叔父の漫画家に宮藤官九郎、連載を狙う漫画家仲間に桐谷健太など。
脇を固める男性たち、タイプは違えど、全員が情熱家。自分の愛する漫画に取り組んでいるそれぞれの姿勢やポリシー、そのどれもが泥臭くも眩しくて、まさしく"観る栄養ドリンク"みたいに活力をくれるんです。
イケメン主人公2人の葛藤する表情も、いうまでもなくとても素敵!
カルチャーが生まれる舞台の裏側、見学感!
そして、日本で販売されている出版物全体の35%以上を占めているのが漫画雑誌であり漫画単行本という事実がありますが、その中でも常に王者として君臨している雑誌が週刊少年ジャンプです。
日本人であれば「ジャンプ」を知らないという人はまずいないでしょう。
1968年創刊して以来、発行部数を伸ばし、国民の20人に1人、小中学生の2人に1人は週刊少年ジャンプを買っていた計算になるほどの売り上げを記録し、もはや少年たちにとってのイニシエーションの1つのような雑誌の編集部の舞台裏を徹底的に覗くことができることも見どころ。
これまで「ドラゴンボール」「ONE PIECE」「ジョジョの奇妙な冒険」や今年話題をさらった「鬼滅の刃」といった国民的な作品の誕生地であるジャンプ編集部。
そういった日本のカルチャーを代表していく作品が生まれる編集部では、どんな会話がなされているのかというリアルな会話満載の編集会議の様子や、読者からのアンケート主義がどれほど雑誌に影響を与えているのかといった様子が伝わってきて、そんな"未知の世界見学感"も貴重で面白い。
連載を目指す漫画家たちのバトル。少年ジャンプに連載を持つことの過酷さとやりがいを目の当たりにすることでこれまで愛していた漫画がもっともっと相乗効果的に好きになるし、ネーム→下書き→ペン入れといった漫画が生まれる単純なようでとても難しい漫画の工程を勉強できて、自分までレベルアップした感覚になれるのが楽しみだけじゃなく学びがあるのが嬉しいです。
話題の"ASMR"を贅沢に投入!
さらに、昨年からSNSやYouTubeで流行りだし音声動画の1ジャンルを築きあげたと言っても過言ではない"ASMR映画"としての側面があって五感的にも嬉しい映像体験ができるんです。
ASMRとは主に咀嚼音、耳かき音、タイピング音、炭酸水の弾ける音などの何気なく聞こえる日常の音だけど、聞いているとゾクゾクした気持ちよさのある音全般を意味します。
そして実はこの映画は改めて見返してみると驚くほど、ASMRの宝庫なんです。
漫画を描く際にたっぷり聞こえる紙の上を滑るペンの音、インクの弾く音、鉛筆のシャカシャカした音、かつかつと机とペン先がぶつかるスクラッチ音・・・。
聞いているだけで気分が和らいでくるのがライティング系のASMRと一般的に言われていますが「サラサラ」「スーッ」「カツカツ」「シャカシャカ」といった音が溢れていて心地良い刺激に身を委ねることができます。
20巻もある原作漫画を約2時間にぎゅっと濃縮し、ジャンプのテーマである「努力・友情・勝利」に沿った展開をしていくストーリーテリングは、やはりお見事!
さらにはエンドロールまでも隅々までしっかりと作り込まれていて作り手の真摯さを受け取ることができます。
クールジャパンという言葉が世界に広まり、日本のコンテンツが評価されている現状がありますが、世界でも優れた日本の漫画やアニメーションは激しい競争の中、制作者たちの努力によって生まれてきていることも身に沁みて伝わってくるのです。
シンプルに自分も自分にできることを一生懸命頑張りたくなります。
映画と漫画が融合した新感覚爽快感たっぷりの青春映画でポジティブオーラ全開で夏を楽しみましょう。
エンターテイメントを愛する人間だったら見ておいて間違いないはずです!
【その他のおすすめ作品!】
◆『溺れるナイフ』
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◆『狐狼の血』
桃李&広司の焦げ付くような男臭さと切れ味に痺れろ!
◆『犯人に告ぐ』
敏腕だけどダメ人間!刑事トヨエツのアンビバレンスな魅力
◆『新宿スワンII』
弱肉強食の世界で七変化!野心まみれの綾野剛を堪能
【Paravi映画祭り 特集ページ】https://www.paravi.jp/static/cp/eiga/
(C)2015 映画「バクマン。」製作委員会 (C)大場つぐみ・小畑健/集英社
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原作:和久井健『新宿スワン』(講談社『ヤングマガジン』刊) (C)2017「新宿スワンⅡ」製作委員会
(文・映画ソムリエ 東紗友美)
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