――岡江さんと23年間にわたり岡江久美子さんと夫婦役をされてきましたが、23年を振り返ってみていかがでしょうか?
牛尾刑事を長くご覧頂いている方々の中で、岡江さんとの夫婦のシーンがとっても好きだというお声をたくさん頂いて、僕自身が絵の展覧会やサイン会など開催した際には中高年の奥様方などから直接「牛尾刑事を観てます。岡江久美子さんとの夫婦のシーンが大好きです」と仰っていただけるんですよね。
岡江さんとの夫婦のシーンというのは、さりげない日常なんですが、その日常がいかに尊いかというのを大事にして描いているんです。牛尾刑事は基本的にシリアスで、笑った顔を見せていないんですが、ただ、岡江さん演じる澄江さんとのやりとりは牛尾刑事が唯一、素を見せられてリラックスができて、ホッとして、そして気持ちをゆだねている姿を見せています。
岡江さんってサバサバした明るい方じゃないですか。ああいう、明るい方にあの役をやって頂けたことで全体的にシリアスな中でも救われているところがあったと思うんです。
だから、岡江さんとの牛尾家でのシーンは、とても楽しみでした。
――撮影現場ではどのように交流されていたのでしょうか?
演技論を語る・・・というのは僕も岡江さんも苦手だったのでそういう話はしませんでしたが、岡江さんは映画や芝居がすきなもので、よく「最近はこのドラマにはまって見ているとか」「この舞台を見に行った」という話しをしてました。僕はその情報を聞いて、「じゃ、今度行ってみようかな」とか「見てみようかな」となっていました。岡江さんは本当にドラマが好きでよく見てらっしゃっていて、その感想をお伺いするのが好きでしたね。
実は僕の舞台などにも来て頂いたりしていたんです。今年の1月に舞台があったので、そちらも来て頂いて・・・その時に2ショットで撮った写真が最後になっちゃったんです。5月にも新しい舞台があったので、その際にもお会いできる予定だったのですが・・・コロナの影響で、お会いできずで・・・。
あと他にもお料理やウォーキング、旅行のお話をよくしていました。岡江さんっておひとりでも旅行に行かれるんですよね。自分で全部手続きしてね。僕には、そんな事できないですよ。アクティブでとにかく、時間をものすごく有効的に合理的に使って、そして、エンジョイしながら人生を生きていらっしゃる方だなぁという印象でした。ボーっとしている時間はほとんどなく、ずーっと動き回っているんです。すごいなぁと思ってました。
男の僕には知りえなかった情報でしたけれども・・・乳がんの手術をされていたというのも知らなかったんです。そういうネガティブな事を一切仰らない方でした。楽しい話しか僕も伺ったことしかないし。岡江さんは元気で人生の時間を有効に謳歌している方という印象でした。
――鶴太郎さんにとって、"女優・岡江久美子さん"はどのような存在でしょうか?
岡江さんとは若い頃からお仕事でご一緒してたんです。僕はずっとバラエティだったので、バラエティ番組でよくコントのようなことをしていました。女優さんなのにバラエティのコントやクイズ番組、旅番組などそういうのにも出られて、女優としてもシリアスものもコミカルなこともお出来になってて、いろんな意味でボーダレスですごいなと思っていました。枠組みみたいなものはとっぱらって、自分が興味あることを積極的にやっていくという方でしたよね。
――2人でないとできない"夫婦像"というようなものはありましたか?
そうですね。やっぱり岡江さんはコントもできる方だから、その辺の「間」みたいなものが、お上手だったんです。どんなにシリアスな役をやっていても、その「間」みたいなもので、夫婦の機微みたいなものが表現されていて。牛尾刑事と澄江さんの夫婦の"あうんの間"みたいなものは、岡江さんとじゃないと出来ない部分だったと思います。だから僕は安心してゆだねていたし、監督もそうだったのではないかと思います。
――終着駅シリーズを通して、注目して観ていただきたいポイントはどこでしょうか?
牛尾刑事のドラマは森村誠一さん独特の、いろんな事柄がぽつぽつ出てきて、それが徐々に解決していくところが見どころなんです。そういう事件を追う中で牛尾家の夫婦が"人間の機微"みたいなものを話していて、どこの夫婦にもある日常の埋もれてしまうような時間が実は尊くて、夫婦での何気ない会話がものすごく大事なんだということをさりげなく唱っているような気がするんです。本編の中で、2シーンぐらいですが、なくてはならない2シーンだと思います。なので、改めて岡江さん演じる澄江さんとの何気ない会話の中に潜んでいる日常の大切さを、感じていただければうれしいです。
◆配信情報
森村誠一ミステリースペシャル 終着駅シリーズ
動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信中。
(C)テレビ朝日・東映
岡江久美子さん写真/ 写真提供FLASH 撮影・野澤亘伸/(C)スタッフアップ
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